長く投資をしていると、ときどき、これから不動産投資を始めたいという方の相談に乗ることがあります。そのなかで、まず言えるのは、実際に不動産投資家としてデビューできる方とそうでない方がいるということです。特に、投資家デビューが遠そうだと感じるのは、なかなかスタートが切れない方。不動産投資に目を付けたからには、同じような思考の持ち主であるはずですが、一方はスタートを切ることができないのです。その理由とは、一体どこにあるのでしょうか。

理想が高い、覚悟がない、決断力が弱い――最初の一歩が踏み出せないのはこのような方々です。実際に、筆者の周りにいる投資家予備軍の方々をタイプ別に分けて、エピソードをご紹介します。

理想の高さがネック

まずは、投資する際の希望条件を非常に高く設定している方々。数年前の本や教材に書かれている内容をそのまま受けて条件を決めている方というのは、実のところ非常に多いのです。

昨今、投資用不動産の収益率は以前に比べると低くなっています。2011年の東日本大震災復興に伴う建築単価の高騰、2015年のアベノミクスの経済効果がもたらした物件価格の高騰など、不動産投資を取り巻く環境は常に変化しています。

確かに、数年前であれば利回り15%~20%の物件も多く見られました。しかし、2016年の今、同じ利回りを求めてもほとんど出てこないのが現状です。もしあったとしても、既に業者とパイプのある不動産投資家に買われていて、初心者に回ってくることはまずありません。

高利回り物件のほうが投資効率がいいのは当然です。けれども、見つかる可能性の低い物件を追い求めることで時間を無駄にしていては、それこそ本末転倒。不動産投資は長期的な投資です。理想を追い求めるだけで、数カ月、数年を費やしているとしたら、その機会損失は計りしれません。まずは理想にとらわれず、最初の一歩を踏み出すことが肝心です。

目的意識のあいまいさがネック

次のタイプは、不動産投資の目的がはっきりしていない方々です。例えば、「いつかは不動産投資だけで生活できるようになって、会社を辞められたらいいな」といった漠然とした考えでいる人と、「夫が突然のリストラ! 生活費を確保しないと立ち行かない」と立ち上がった人がいたとします。この2人を比べたとき、不動産投資に対する取り組み方が違ってくるのは当然でしょう。

明確な目標がなく期限も決まっていない人の多くは、「いい物件があれば始めたい」と考えているのではないでしょうか。しかし、そのようなマインドでいる限り、「いい物件」はいつまでたっても出てきません。逆に、目的が明確であれば、「多少のマイナス要因がある物件」だったとしても、まずは行動することでしょう。不動産投資をスタートさせることを最優先させるはずです。

「いい物件さえあれば……」と言っている人は、現状の生活に満足しているのでしょう。今は不動産投資を始める時期ではないのかもしれません。ただし、金融機関からの融資を利用するという観点では、働き盛りの年代で始めることをおすすめします。

リスク許容度の低さがネック

最後に挙げるのが、リスクにとらわれて一歩を踏み出せない方々です。例えば、「借金は悪だ」と思い込んでいる人。また、「〇〇が起きたらどうしよう」などと、起こってもいないことや小さなことを心配し過ぎる人もその一人です。

もちろん、借金をせずに不動産投資をする手法もありますが、投資効率を考えるとレバレッジをかけるほうが、規模の拡大スピードがはるかに速くなります。

そもそも「投資」にリスクはつきものです。筆者が考えるに、「リスクをどこまで許容できるか」で投資家としての器は決まります。リスクを恐れて動けないのであれば、それは「投資脳」を持ち合わせていないことの証明にほかなりません。そのような方々には、不動産投資どころか投資全般を強くはオススメしません。

投資への不安感は知識不足から

投資脳を持ち合わせているか否かは、もともとその人に備わっている 「資質」、そして資質や環境に基づき築き上げられた「価値観」によります。!

資質と価値観を変えるには大変なエネルギーが必要で、変えるべきとも思えないのですが、あえてアドバイスさせていただくと、不動産投資ほど歴史の長い投資方法はありません。それこそリスクは出尽くしています。今はそのリスクをカバーする保険もありますし、先達 の経験を参考にすることもできるのです。

言い換えれば、不動産投資への及び腰は「知らないことへの恐怖」からくるものです。リスクを恐れている方は、まずは知識武装してみてはいかがでしょうか。知らないことが減っていけば、恐怖心もおのずと抑えられるようになるでしょう。

投資を踏みとどまる理由を見つめる

さて、ここまでタイプ別にご紹介してきましたが、一つだけ共通していることがあります。それは「やらない理由を探している」ということです。利回りの高い理想の物件を追い求める人、物件を紹介されても何かと理由を付けて前に進まない人、リスクにばかり目がいく人――このような方々は、不動産投資を始めたいとは言っているものの、潜在意識では望んでいないのかもしれません。

アクセルとブレーキを同時に踏むと車は壊れます。それはまた人も然り。もし、あなたが不動産投資に踏み出せないでいるのなら、本当に不動産投資がしたいのか、不動産投資で最終的に何を得たいのかを、自分自身にもう一度問い掛けてみてください。

Swimmy
30代女性不動産投資家。投資歴10年。株式、投資信託、FX等さまざまな手法で資産運用を行い、国内外に物件を所有。上場企業の不動産業務、有名投資家のアシスタントを経て、現在は湘南でスローライフを満喫中。 不動産投資がもたらしてくれた豊かで上質な暮らし

(提供: DAILY ANDS

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