間違いやすいビジネス敬語、こう言い換えよう
説明してくれた上司に対して……
×「部長のお話は、大変参考になりました」
○「ありがとうございました。大変勉強になりました」
「参考」とは、自分の考えを決める際の足しにするという意味で、目上の人に使うのは失礼。同様に「役に立ちました」も、部下が上司の話を「役に立つ」と評価することになるためNGである。「参考」や「役に立つ」は、目下の人が「自分の意見など何の足しにもならないかもしれませんが……」という意味で使う。「ご参考までにお送りします」はOK。
自ら訪問してきた相手に対し……
×「お越しいただき、ありがとうございました」
○「お越しくださり、ありがとうございました」
「いただく」は相手の依頼があってした行為に使う表現。こちらの依頼で来てもらったのであれば「お越しいただき」でいいが、思いがけず相手が来たのであれば、「いただく」を使ってしまうと、相手に失礼。ここは「くださる」を使ったほうが相手の行為を尊重したことになる。
訪問先で手みやげを渡して……
×「つまらないものですが」
○「お口に合いますかどうかわかりませんが」
「つまらないものですが」は、自分の手みやげ品を謙遜した言い方である。ほかに「粗品ですが」「粗茶ですが」なども一般的に使われてきた。ただ、最近では考え方が合理的になり、「大切な人に、つまらないものをあげてよいのか」と考える人も増えている。より好印象を与える言い方として、「お口に合いますかどうか」「心ばかりのものですが」などと言い換えることができる。
社外の人へ確認するとき…
×「メールでお送りして大丈夫でしょうか」
○「メールでお送りしてもよろしいでしょうか」
「大丈夫」とはもともと「間違いない」「危なげない」という様子を意味する言葉。相手を安心させるために「はい、大丈夫です」と言うことはある。ただし、この例や、「明日の予定は大丈夫でしょうか」といった使われ方は、本来の意味から外れており、間違いである。これらは「よろしいですか」などに言い換えるのがよい。
電話の相手に対し……
×「折り返し、お電話いただけませんか」
○「お戻りになりましたら、お電話いただけませんか」
「折り返し」という言葉には、「折り返す」という意味のほかに「間をおかずに返事・返答する」という意味もある。つまり、相手からすれば「すぐに電話してください!」と言われているようなもので、嫌な気持ちになるだろう。かかってきた電話に対して「折り返しご連絡いたします」と、自分について使うのが正しい使い方である。
村上英記(むらかみ・ひでき)敬語アドバイザー
1969年、東京都生まれ。東京大学大学院教育学研究科修了(専門は日本語教育)。外国人への日本語教育に長く携わる。2004年に開始したまぐまぐ!メールマガジン「ビジネスマンのわかりやすい!基礎敬語講座」は、まぐまぐ!殿堂入り。著書に、『ビジネスメール言い換え辞典』(日本実業出版社)、『ひと目でわかる敬語かんたんルール』(池田書店)など。(取材・構成:前田はるみ)(『
The 21 online
』2016年5月号より)
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