シャープは鴻海を「徳川家」にできるか?

真田家のように比較的弱い組織の場合、「強者の力をうまく活用する力」は、その組織が生き残れるかどうかを左右する重要な要素になります。

これは、現代の企業でも同じことです。

単独でやっていく力が十分にない企業の場合、生き残るためには、強い他力を借りることが必要になります。

最近、多くの企業が共同開発を行なったり、M&Aにより大手企業グループの傘下に入ったりしているのは、そのためです。あえて大きな企業の傘下に入ることで、自社の力をさらに高めるチャンスが得られるからです。

さらに最近ではこの動きが、世界レベルにまで達しています。

たとえば、液晶事業の失敗により、現在、経営再建中のシャープ。今まさに強者である台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の資金力と力を頼り、立ち直ろうとしています。

昌幸がいろいろな強者の力を借りて生き残りを図ってきたのと同じことが、現代の企業の世界でも行なわれているのです。

結局、会社が生き残るかどうかは人

もちろん、鴻海もまたシャープの力を利用しようとしているわけですから、シャープが鴻海の力で立ち直ることができるか、利用されるだけで終わってしまうかは、結局は「人」の問題に帰結するわけです。

鴻海のトップである郭台銘氏は剛腕で知られていますが、彼を相手にシャープの経営陣がいかに駆け引きをすることができるか。それがシャープの命運を決めることになるのです。

で、話は最初の若手経営学者達の会話に戻りまして、「それを言っちゃ~おしめ~よ~」という声が聞こえてきそうですが、どんな話をしていても、結局は「企業は人で決まる!」という結論になってしまうのです。

僕が好きな言葉に「鉄血宰相」と呼ばれたドイツ帝国宰相 オットー・フォン・ビスマルクの言葉があります。

「賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ」

我々も歴史から多くのことを学びたいですよね。

陰山孔貴(かげやま・よしき)経営学者(経営学博士・MBA・工学修士)
1977年、大阪府豊中市生まれ。製造業を経営する祖父、父を見て育つ。早稲田大学大学院修了後、大手電機メーカーに入社。ヒット商品の企画等を行い、3度の社内表彰を受ける。その後、順調に出世コースを歩むも「モノ」より「ヒト」をつくる仕事がしたくなり大学教員へ転身。「一度しかない人生、他人の人生ではなく、自分の人生を生きる!」が信条。専門は技術経営。獨協大学 経営学科 専任講師。(『 The 21 online 』2016年05月15日公開)

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