7月1日に辞令がでる会社も多いのではないだろうか。海外転勤を命じられたら期待と同時に不安も覚えるかもしれない。そこで、海外転勤を命じられたときの税金のあれこれ調べている暇はない。転勤になる前にとりあえず簡単に知っておこう。
日本で税金をおさめるの? 所得税・住民税
海外転勤者は、滞在期間があらかじめ1年未満であることが明らかな場合を除いて、「国内に住所を有しない=日本の非居住者とされる。居住者ではなくなるため、給与明細から現在差引かれている源泉所得税の納付義務はなくなる。この給与が日本の法人から支払われるか、海外の法人から支払われるか、ということは一切関係ない。
給与が国外勤務に基因するものかどうかで所得税が課税されるかどうかが判断される。
まずすべきことは、出国前に年末でなくとも、年末調整を会社でやってもらうことだ。ここでの年末調整は、社会保険料控除や生命保険料控除、医療費控除などの控除は、年末までの分ではなく、出国する日までに支払われたものだけに限られる。また、扶養控除や配偶者控除がある場合、出国の時に控除の対象となる者の控除額を控除できる。
住民税はどうだろうか。海外に赴任するため12月31日までに出国し、非居住者になった場合は、翌年1月1日に住所がないため、その年の6月からの住民税は払わなくてよい。
不動産所得がある場合、日本でも税金をおさめなくてはならない
国内にある貸家の賃貸料などの不動産所得が一定額以上あれば、今までどおり毎年確定申告書を提出しなければならない。
このような場合には、非居住者の確定申告書の提出や税金の納付等、納税義務を果たすために納税管理人を定める必要がある。
この納税管理人は法人でも個人でも構わない。親でも信頼できる友達でも、税理士に依頼してもいい。
納税管理人を定めたときには、その非居住者の納税地を所轄する税務署長に「所得税の納税管理人の届出書」を提出する必要がある。この届出書を提出した以後、税務署が発送する書類は、納税管理人あてに送付されるが、確定申告書は非居住者の納税地を所轄する税務署長に対して提出する。
家族全員で海外転勤に行く場合、非居住者の納税地はどこになるのだろうか。国税庁のWebサイトをみると、不動産所得は貸家の所在地で納税することとなる。
賃貸収入の申告のみならず、日本国内にある不動産を売却したときの所得に対しては、同様に日本で所得税が課税される。
住宅ローン控除がある場合は?
住宅ローン控除の適用を受けるには、居住者が取得したマイホームに住んでいることが必須要件となる。
国内での転勤の場合は、「転勤等のやむを得ない理由」がある場合、国内への単身赴任で家族が引き続き住み続けていれば、住宅ローン控除を継続して受けることができると決められている。
一方、海外への転勤の場合は、住居取得者が国内に住んでいない「非居住者」とみなされるため、家族が引続き住み続けていても、住宅ローン控除を継続して受けることができないのだ。
ただし、帰国後にマイホームへ再入居する場合、所定の要件を満たし、必要な手続きを行えば10年間の控除期間のうち、残存期間に限って控除の再適用を受けることができる。
海外から日本に戻ってきたときは?
帰国後は居住者となり、国内源泉所得に限らずすべての所得が課税の対象となる。なお、帰国後の勤務に対する給与については年末調整の対象になる。
したがって、確定申告は帰国前の国内源泉所得と帰国後のすべての所得を合計して計算することになるので、1カ所から給与の支払を受けている人で、給与所得及び退職所得以外の所得金額が20万円を超える場合は、確定申告をする必要がある。
海外転勤に伴い、様々な手続きが必要となる。お仕事に集中して成果をあげるためにも、税金の簡単な知識は今のうちから身につけておこう。
眞喜屋朱里(税理士、眞喜屋朱里税理士事務所代表)