ドル円予想レンジ 103.90 - 110.80
「US Election Trump seals Republican nomination(米選挙・共和党はトランプ氏を候補に指名)」-。これは7/19の欧米報道機関の見出しである。
米共和党はドナルド・トランプ氏を大統領候補に正式指名した。これを以て、11月の大統領選挙では、7/25-28の民主党大会で候補指名される見込みのヒラリー・クリントン前国務長官と争うことになる。
米大統領候補がドル円に及ぼす影響
筆者は大統領選挙戦が中期観点で、円安浮揚力を低下させると読んでいる。理由は1点。両候補とも保護主義的傾向だからである。
トランプ氏は「アメリカ・ファースト(米国第一主義)」を掲げ、TPP離脱を7/21に再表明した。有権者の歓心を念頭に、貿易相手国への強硬姿勢を強調するなら、経常収支の黒字拡大が顕著な日本は格好の攻撃対象となる。金融政策に対しては、2018年2月に任期満了のイエレンFRB議長再任を否定し、低金利(ドル安)を志向している。
では、クリントン氏はどうか。2/24の米地方紙に「To Fight against Currency Manipulation by China, Japan(中国、日本の通貨操作と戦う)」との見出しが躍った。内容は、"日本は輸出を有利にするために為替を操作している。大統領に就任すれば「断固たる措置をとる」"というもの。その寄稿主はヒラリー氏、その人だった。
同氏の夫、ビル・クリントン元大統領が「ジャパン・バッシング」の政策をとった1995年を髣髴させる姿勢だ。要は、両候補とも円安牽制者なのである。
政府・日銀の決断待ち
政府・日銀は座して円高圧力を甘受するのか。円安が強まると両候補が扇動に利用するため、当面は動かない、とした見解もあるが、円高デフレ脱却はアベノミクスの骨子である。となれば、7/29の日銀金融政策決定会合で百家争鳴の"ヘリコプターマネー策"と併せ技で、月内に大型経済対策が示されるか否かがポイントとなる。
安倍首相の過去の政治決断場面を振り返ると、経済ブレーンの見解後に示していた経緯がある。今般も前FRB議長バーナンキ氏の登場で、筆者は妄想を膨らませざるを得ない。本格化する米大統領選を控え政治的な決断の場面となろうか。
ドル円焦点は日足一目均衡表雲の帯(103.63-107.72)注視で上値焦点は6/3高値109.15、6/2高値109.60、そして安倍首相が消費増税再延期を表明した6/1高値110.85を期待。下値焦点としては7/13-14安値103.90-96。最大リスクはバーナンキ氏訪日の7/11安値100.55。
武部力也
岡三オンライン証券
投資情報部長兼シニアストラテジスト