韓国景気が低迷して早1年以上になるが、いまだにその出口は見えないまま、長期化が懸念されている。中国をはじめとする新興国の景気減速が世界経済の先行きの不透明感を強める中、輸出鈍化の直撃を受けているのだ。
景気低迷の暗闇の中で一筋の光ともいえるのが、韓国化粧品メーカーだ。世界の大口投資家の視線も集めており、韓国経済を化けさせる起爆剤となるか期待がかかる。
相次ぐ大口投資 狙うはコリアン・ビューティ
世界的なブランド会社も韓国化粧品に注目しており、その取り組みも本格的。ルイ・ヴィトンもその1社だ。ほかにも多くの有名高級ブランドを展開しているLVMHの子会社で、投資会社として知られるLキャピタルアジアは、韓国の化粧品メーカーであるクリオ・コスメティクス社に約52億5000万円の大口投資を決めたという。
また、米金融大手のゴールドマン・サックスは投資会社のベイン・キャピタルとともに、カーヴァー・コリア社の株式の過半数以上を取得し、経営権を握ると発表した。同社は、韓国や中国、米国などで1000種類以上の化粧品を販売している化粧品メーカーだ。日本のエステ店も同社の「A.H.C.シリーズ」をよく使用しているという。
輸出鈍化と財閥の弊害 韓国経済は袋小路?
そもそも韓国経済が長期低迷からなかなか抜け出せないのには、大きく2つの理由がある。
1つ目は、輸出が低迷を続けていることだ。韓国にとって、輸出は、同国内の資源が乏しく内需も小さいため生命線である。2000年代以降、成長を支えてきたものの、昨年はわずか0.2%の増加にとどまり、牽引力にも陰りが見えている様子だ。韓国経済全体でみても、2015年の実質GDP成長率は前年比2.6%%増と、2014年の3.3%増を下回った。
輸出の牽引力低下は、企業の収益悪化を招いたのである。2015年半ば以降、電気機器や自動車などの主要産業が、軒並み収益を減少させつつあった中、とりわけ深刻だったのが海運・造船業だ。一部企業では、利払いさえが困難な状況にまで収益が悪化し、支援してきた政府系金融機関の経営にも、影響を与えかねない状況だ。
2つ目が、財閥の存在だ。韓国経済はそのほとんどがサムスンやLG、SKなどのグループに代表される、財閥によって占められている。「セウォル号」沈没や大韓航空ナッツ・リターンなどの事件で、図らずも財閥の影の部分を露わにする結果になったが、その存在自体が悪というわけではない。それどころか、韓国経済が世界に通用する規模にまで、発展してこれたのは、一族経営の迅速な意思決定のおかげであることも事実だ。
ただ財閥が幅を利かせるからこその弱点もある。日本経済では下請けの中小企業が果たしている、クッションの役割がないため、韓国の財閥は世界経済の変動を直に受けてしまう。経済全体の低迷は財閥の経営を直撃し、その弱みを目の当たりにした大衆が、「格差」ないしは「富の集中」に対する、積もりに積もった不満を爆発させた。