未婚化,晩婚化,国勢調査,地域格差
(写真=PIXTA)

少子化の要因の一つとして、未婚化・晩婚化の進展が叫ばれるようになって久しい。

国立社会保障・人口問題研究所の「第14回出生動向基本調査」によれば、将来的には結婚を希望しつつも結婚していない理由としては、25~34歳では男女とも「適当な相手にめぐりあわない」が最上位に挙げられているものの、「自由さ・気楽さを失いたくない」、「必要性を感じない」といった結婚に対して後ろ向きの理由を挙げる割合も高くなっている(*1)。

昨今では、自治体主催の婚活パーティなど、出会いの場を提供するイベントの開催も珍しくなくなっているものの、こうした結果を見る限り、未婚化・晩婚化の更なる進展は避けられないようにも思われる。実際のところ、未婚化・晩婚化はどこまで進んでいくのだろうか。

2010年までの国勢調査の結果および本年6月末に公表された2015年国勢調査の抽出速報集計より、性別・年齢階層別の未婚率の推移をみると、男女とも25~29歳では未婚率の上昇が続いており、2015年時点では男性の72.5%、女性61.0%が未婚となっている(図表1)。

また、男性の40~44歳、女性の35~44歳では未婚率は微増しており、50歳時の未婚率を表す生涯未婚率では男性で22.8%、女性で13.3%と、2010年調査に比べ男女ともさらに上昇する結果となっている。一方、男女とも30~34歳および男性の35~39歳では2010年から2015年にかけて僅かながら未婚率が低下しており、この5年の間に結婚に踏み切る者が増加した様が窺える。

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こうした傾向をより詳細に確認するため、出生コーホート(生年)別の結果としてみると、いずれのコーホートにおいても、年齢階級の上昇に伴って未婚率が低下(既婚率が上昇)する傾向にある様がみてとれる。これを出生コーホート間の比較でみると、67~71年生のコーホートでは35~39歳から40~44歳において男性では6.3ポイント、女性では4.0ポイントの低下と、62~66年生コーホートの2.5ポイント、1.3ポイントに比べ顕著に未婚率が低下していることがわかる(図表2)。

一方、出生年が72年以降のコーホートにおいても、男女とも前のコーホートよりも未婚率が低下する傾向にはあるものの、その変化幅はごく僅かに留まっている。このことは、67~71年生コーホート特有の行動として40代を目前に駆け込みで結婚に進んだことを示しているものと考えられる。

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では、このように駆けこみで結婚に向かう行動は、地域による偏りはみられるのだろうか。

67~71年生コーホートにおける35~39歳時(2010年調査)および40~44歳時(2015年調査)における都道府県別の未婚率の低下幅をみると、男性では東京都で10%pt以上と最も大きく、北海道、福井県、滋賀県、愛媛県、佐賀県が7~10%ptで続いている(図表3)。一方、女性では鳥取県および宮崎県で7~10%ptで低下と低下幅が大きくなっている。

このうち東京都および佐賀県を除く6道県では、2010年と2015年の2時点間における既婚者(有配偶者)の増加以上に未婚者が減少し、総数としても減少していることから、未婚率低下の主要因は未婚者の道県以外への転出(社会移動)によるものと考えられる。

一方で東京都および佐賀県の男性では、6道県と同様、未婚者は大きく減少しているものの、既婚者(有配偶者)の増加も十分に大きく、総数としても増加している。これらのことから、67~71年生コーホートにおける40代を目前にした駆け込み婚は、東京都を中心として生じたものと考えられよう。

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このように、未婚化・晩婚化は20代後半では依然、進行しており、生涯未婚率も上昇する結果となっているものの、30代では男女とも未婚率の上昇には歯止めの兆しが窺えた。

こうした変化について詳細を確認したところ、2015年時点で30代以上のコーホートでは前のコーホートに比べ僅かながら未婚率が低下する傾向にある中で、2015年時点で40~44歳となる67~71年生コーホートにおいては、男女とも未婚率が大きく低下しており、40代に突入するこの5年間に、駆け込みで結婚に踏み切ったことが確認された。

このように40代に差し掛かるタイミングで結婚に踏み切る行動が、この世代特有のものかどうかは今後の動向を注視するなかで見極めていく必要はあるものの、今後一般化していくようであれば、晩婚化の進展は当面続くと思われるものの、未婚化についてはまもなく頭打ちとなることが期待できるのではないだろうか。

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(*1)男性ではこのほか「結婚資金が足りない」といった経済的な要因も高くなっている。
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井上智紀(いのうえともき)
ニッセイ基礎研究所 生活研究部 シニアマーケティングリサーチャー

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