資金循環統計,個人金融資産,企業資金
(写真=PIXTA)

個人金融資産(16年6月末): 16年3月末比では6兆円減

2016年6月末の個人金融資産残高は、前年比31兆円減(1.7%減)の1746兆円となった(*1)。前年比でのマイナス幅は3月末の8兆円減(0.4%減)から大きく拡大した。年間で資金の流入超過が15兆円あったものの、株価の下落と円高の進行を受けて、時価変動(*2)の影響がマイナス46兆円(うち株式等がマイナス28兆円、投資信託がマイナス15兆円)に達したためだ。

四半期ベースで見ると、個人金融資産は前期末(3月末)比で6兆円の減少となった。例年4-6月期は一般的な賞与支給月を含むことからフローで流入超過となる傾向があり、今回も11兆円の流入超過となった。しかし、4-6月期は英国のEU離脱決定の影響などから大幅な株安・円高となったため、時価変動の影響がマイナス17兆円(うち株式等がマイナス10兆円、投資信託がマイナス5兆円)発生し、資産残高が目減りした(図表1~4)。

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ちなみに、家計の金融資産が、既述のとおり4-6月期に6兆円減少する一方で、金融負債は9兆円減少したため、金融資産から負債を控除した純資産は、1363兆円と、3月末の1360兆円から3兆円増加している(図表5)。

なお、その後の7-9月期については、一般的な賞与支給月を含まないことから、例年フローで小幅な流出超となる傾向が強い。また、6月末以降も円高がやや進んでいることも資産の目減りに繋がっているが、日銀のETF買入れ増額決定(7月)などによって株価は持ち直していることから、足下の個人金融資産残高は6月末から若干増加していると推測される。

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(*1)今回、2005 年1~3 月期以降の計数について遡及改定が実施されている。
(*2)統計上の表現は「調整額」(フローとストックの差額)だが、本稿ではわかりやすさを重視し、「時価(変動)」と表記。
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内訳の詳細: 普通預金への資金流入増加、投資信託からの流出続く

4-6月期の個人金融資産への資金流出入について詳細を見ると、季節要因(賞与等)によって例年同様、現預金への資金流入(積み増し)が際立っている。

ただし、例年はこの時期に定期性預金への流入が起きるものの、今回は資金流出となっており、それに見合う額の大半が流動性預金(普通預金など)の積み増しに回っている状況がうかがわれる。マイナス金利政策導入以降、定期預金金利がほぼゼロにまで引き下げられた影響が続いていると考えられる。

リスク性資産に関しては、株式からの資金流出額が近年の同時期よりも小幅(0.7兆円減)になった。株価下落局面での押し目買いもあったとみられる。一方で、投資信託は例年この時期には資金流入が進むが、今回は小幅ながら流出(0.1兆円減)に転じている。

この時期の流出は、リーマンショックが尾を引いていた2009年4-6月期以来となる。MMF・MRFからの資金流出は一旦止まったようだが(MMFはマイナス金利導入に伴う運用難によって販売停止・一部で払い戻しに)、投信全体として持ち直しは見られない。

なお、株と投資信託に外貨預金や対外証券投資などを加えたリスク性資産の残高は260兆円、その個人金融資産に占める割合は14.9%と、3月末の278兆円、15.8%からそれぞれ低下している。株価下落等によって時価が減少した影響が大きい。

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その他証券では、国債からの資金流出が縮小する一方、信託受益権(貸付信託等)から資金が流入した(図表6~9)。

今回は引き続き、マイナス金利政策導入の影響という観点から個人金融資産の動きに注目していた。既述のとおり、株式等からの資金流出が縮小したものの、投資信託からの資金流出が進んだほか、対外証券投資、外貨預金も資金流出となった。

マイナス金利政策導入によって国内金利はほぼゼロと化したが、かといって家計のリスク性資産への投資が活発化した様子は確認できない。年初から金融市場の不安定な動きが続いており、リスク性資産への投資を躊躇しているようだ。