第一生命保険が米国の中堅生保であるプロテクティブ生命を5822億円で買収すると発表しました。国内市場の成熟化や人口減少により国内での保険販売が難しくなる中、2007年のベトナムでの生保買収を機に、第一生命保険はアジア太平洋地域で買収を通して生保事業の拡大を行なってきました。そして、今回先進国米国のプロテクティブ生命の買収により海外戦略をさらに進展させ、収益源の多様化を図り安定収益の確保を目指すようです。
今回の第一生命保険による米プロテクティブの買収は、他の多くの日本の生命保険会社が真似出来ないことでもあったと思います。その理由は、株式会社か相互会社かの会社形態の違いにあります。株式会社ですと、今回のような海外買収に伴う企業再編も容易行なえ、企業戦略も柔軟に迅速に行なっていけます。そしてなりより、株式を使うことによって資金調達を容易に行うことができます。しかし、これが保険契約者で構成させる相互会社ですと内部留保を使うしかなく、それは基本的に保険契約者にとっては好ましいものではないため資金調達を容易に行うことができません。こうしたデメリットを相互会社が持つため、以前から生保業界では株式会社化が議論されてきました。その時はまだ国内市場からだけでもそれなりの収益が出せていたので、実際に株式会社化した生命保険会社はそれほど多くはありませんでした。しかし、国内市場はすでに成熟化し、この先も人口減少傾向にあることを考慮に入れますと国内市場だけ収益を出していくことは今後さらに難しいものとなります。そう考えますと、今後さらに海外展開を考える生命保険会社が増えてくることが予想されます。
そしてまた、今回のプロテクティブ生命の買収によって、第一生命保険が海外展開で他の生命保険会社よりも数歩もリードしたことにより、今後他の生命保険相互会社では再び株式会社化の議論が活発化されるものと思われます。特に7月には相互会社の株主総会ともいえる総代会がありますので、こうした場で議論がどこまで行なわれるかが注目となります。
photo credit:
第一生命
via
Wikipedia
cc