トップを外国人にしても、幹部が「昭和」のままでは変われない

記憶に新しいところでは、武田薬品工業の事例がそうです。

海外企業からヘッドハントしたフランス人を最高財務責任者(CFO)として迎えたものの、2年も経たないうちにスイスの大手企業に引き抜かれてしまいました。1年目の役員報酬として何億円も支払ったにもかかわらず、2年目の再任を発表する予定だった株主総会の直前に辞任してしまったのです。

彼が退任を決意するに至った本当の事情はわかりません。

しかし、これだけ多額な報酬をもらってもなお、日本企業より海外企業を選択する何らかの理由があったということです。

どんなに優秀なトップを海外から招いても、周りの経営陣や社員たちと本気で変革を成し遂げようという姿勢を共有できないと判断すれば、優秀なトップもここは自分が働く場ではない、と思うでしょう。

表向きは指示に従う、としながら、実際には動いたふりをするだけの社員であったり、中身のない精神論を声高に言うばかりでイノベーティブな変化対応力を持たない幹部が目立つならどうでしょう。本当に何かをやり遂げたいと思っている人ほど、時間ばかりが無為に過ぎ去ってしまうと感じるのは当然だと思います。

そんな昭和的な幹部ばかりに囲まれた組織が「考える力」を取り戻さないままなら、日本企業のガラパゴス化はますます進むでしょう。

今のままでは世界の潮流から取り残され、やがて消え行く運命が待ち構えている。日本人はその事実から目を背けてはいけないのです。

柴田昌治(しばた・まさはる)スコラ・コンサルト プロセスデザイナー代表
1979年、東京大学大学院教育学研究科博士課程修了。1986年に、日本企業の風土・体質改革を支援するためスコラ・コンサルトを設立。これまでに延べ800社以上を支援し、文化や風土といった人のありようの面から企業変革に取り組む「プロセスデザイン」という手法を結実させた。社員が主体的に人と協力し合っていきいきと働ける会社をめざし、社員を主役にする「スポンサーシップ経営」を提唱、支援している。2009年にはシンガポールに会社を設立。著書に、『なぜ会社は変われないのか』『なぜ社員はやる気をなくしているのか』『考え抜く社員を増やせ!』『どうやって社員が会社を変えたのか(共著)』(以上、日本経済新聞出版社)、『成果を出す会社はどう考えどう動くのか』(日経BP社)などがある。(『 The 21 online 』2016年10月05日公開)

【関連記事】
「優等生社員のワナ」第1回 なぜ「できる人」が会社を滅ぼすのか
これから10年、伸びる業界・沈む業界
マイルドヤンキーが上昇志向を持つ職場とは?
ダメ上司を演じてでも「仕事を任せよう」
できる人が「方眼ノート」を使う理由