韓国の大手通信社、聯合(れんごう)ニュースによると、朴槿恵(パク・クネ)大統領の親友である崔順実(チェ・スンシル)容疑者の国政介入疑惑を捜査している韓国検察の特別捜査本部は、2016年11月8日、ソウル市瑞草洞にあるサムスン電子の社屋やサムスンの朴商鎮(パク・サンジン)対外担当社長が会長を務める大韓乗馬協会などの家宅捜索を行った。

サムスンは崔容疑者が主導して設立したKスポーツ財団とミル財団に出資した53社のなかで、最多の204億ウォン(約18億6000万円)を拠出しており、崔容疑者と娘の鄭維羅(チョン・ユラ)氏がドイツに設立したスポーツコンサルティング会社にも280万ユーロ(約3200万円)を提供した疑いが持たれている。この資金は乗馬選手である鄭氏の馬の購入や海外でのトレーニング代に用いられたとされている。

検察はサムスンが朴大統領と密接な関係の崔容疑者に見返りを期待して資金を提供したかどうかや、ほかに便宜供与がなかったかなどを調べているという。大韓乗馬協会が策定したロードマップには、2020年の東京オリンピックの有望選手を選抜し、ドイツでのトレーニングを支援するという実質的に鄭維羅氏を優遇する内容が含まれている。現地の韓国メディアは、どのように報道しているのだろうか。

サムスンに遠慮?控えめに報道する韓国大手メディア

韓国最大の朝鮮日報は、聯合ニュースが提供する記事をほぼそのまま伝えている。3位の東亜日報も聯合ニュースの記事をそのまま伝え、捜査に積極的に協力するというサムスンの原則的な立場や検察が朴商鎮対外担当社長とファン・ソンス専務に出国禁止命令を出したなど、公式発表を報道しているにすぎない。

2番手の中央日報は、検察がサムスンを家宅捜査したことで、捜査が本格化したと評価する一方、「ギャラクシーノート7」の発火に続く今回の家宅捜索で、サムスンの世界的なイメージダウンは避けられないとみている。今回の朴槿恵大統領を取り巻く不正事件を告発したJTBC系列でもある中央日報は、検察の捜査状況をこと細かに報道している。

JTBCが崔容疑者のパソコンに保存されたファイル約200件を入手して分析したところ、大統領が発言する前に開かれたファイルや崔容疑者が開いたあとで内容が変わった演説文が多く、崔氏が各種内部文書の報告を事前に受けていたことが確認されたと報道し、事件が明るみにでた。中央日報は、サムスンの家宅捜査が行われる前の2016年11月3日、検察がサムスンの捜査に入るだろうと報道している。

同日付けの報道によると、サムスン電子は崔順実容疑者・鄭維羅親子が所有するドイツの現地法人コアスポーツ(現WIDECスポーツ)と乗馬練習支援契約を結び、2015年9月から最近まで280万ユーロ(約35億ウォン、約3億1600万円)を渡した。このうち10億ウォン余りは、国際乗馬連盟に鄭氏の所有として登録されているグランプリ優勝馬の購入に使われ、残りの20億ウォン余は確認されていないが、崔容疑者側がに購入したWIDECタウヌスホテルの購入費用や崔氏親子の居住・生活費、随行者の人件費などに転用された可能性を指摘している。

崔容疑者が設立したKスポーツ財団とミル財団に資金を供与した会社は、多くが朴大統領と親しい崔容疑者等の圧力とみられているが、中央日報によると、財団を通さず、直接、崔容疑者に資金を渡した疑惑がある企業はサムスンのみという。