年末は株高になるアノマリー
早いもので2016年も残り1ヶ月強となった。年初から株価は大幅安となり、Brexitによる混乱などから日経平均は一時1万5000円を割り込むなど波乱の多い1年となったが、トランプ氏が大統領選に勝利して以降減税や財政支出の拡大、インフラ投資といった経済政策への期待から世界的に株高が進み、日経平均は21日に終値で1万8000円の節目を回復した。
このトランプ・ラリーが今後も続くかどうかは不透明だが、まもなく訪れる年末に向け日本株には心強い材料がある。それが"掉尾の一振""年末ラリー"などとして知られる年末は株高になるという「アノマリー」である。
アノマリーとは、「明確な根拠がなく理論的に説明はできないものの、マーケットで頻繁に起きるとされている事象」を指す。例えば、5月以降は株価が下落しやすいと言われる「Sell in May(5月に株を売れ)」や、10月末に株を買えばその後のパフォーマンスが好調とされる「ハロウィン効果」、などが知られている。
今回改めて過去10年間の日経平均、TOPIX、東証マザーズ指数の3つの株価指数の年末の動向(11月末と12月末の株価を比較)を確認したところ、3指数とも10年間で7勝3敗(上昇が7回、下落が3回)となった(表参照)。
理屈で説明できないのがアノマリーであり、年末株高の理由を論理的に説明するのは難しいが、新年相場への期待感や機関投資家のドレッシング買いなどが要因の1つとしてよく説明されるようだ。
年末に上昇しやすい業種は?
年末の株価動向について、過去10年間の業種別の動向も調査した。全33業種のうち平均リターンがマイナスだったのは空運業のみで残る32業種は平均リターンがプラスだった。
過去10年間の平均リターンが最も良かったのは「鉄鋼」で、平均6.6%だった。また、過去10年間の勝敗が9勝1敗、つまり年末に下落したのが10年間で1度しかなかった業種が4つあった。それは、「水産・農林業」「建設」「小売業」「情報・通信業」の4業種であった(表参照)。
今回はこの4業種のなかで、トランプ氏の大統領選勝利以降の上昇率がTOPIXを下回っている銘柄を「年末上昇期待の出遅れ銘柄」として取り上げてみたい。
年末に上昇しやすい業種の好業績・出遅れ銘柄は?
以下の条件で銘柄のスクリーニングを行った。
・業種が「水産・農林業」「建設業」「小売業」「情報・通信業」のいずれか
・過去8四半期の売上高および営業利益がいずれも前年同期比で増収・増益
・11月9日と11月21日の株価を比較し、上昇率がTOPIXの上昇率を下回っている
結果的に「水産・農林業」「建設業」は該当する銘柄がなく、「小売業」および「情報・通信業」の8銘柄が抽出された。
いずれも好業績とあって予想PERやPBRなどのバリュエーションはやや高めだが、今後出遅れ銘柄として改めて物色が向かう可能性がある。参考にしていただきたい。
益嶋 裕
マネックス証券
フィナンシャル・インテリジェンス部マネージャー
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