個人事業主や、あるいは給与所得者であっても年末調整の適用外である所得控除(医療費控除や雑損控除等)を利用する者にとって、確定申告は非常に重要な手続きだ。しかし重要だということは理解していても、いざ期限に間に合わなかった場合に実際どうなるのか、正しく把握している方は少ないのではないだろうか。
今回は、「申告を忘れた場合」と「意図的に申告をしなかった場合」という2つのケースに分けてこれを解説する。
確定申告には申告期間がある
確定申告の申告期間は、原則として2月16日から3月15日までである。期間の開始は休日等に関わらず2月16日固定であるのに対し、期間の終了は3月15日が休日であった場合は16日、17日とずれることもある。
期間中は一部税務署において休日開庁(主に2月後半の日曜)が実施され、また電子申告(e-Tax)や郵送、時間外収受箱等を利用すれば閉庁中でも提出自体は可能であるため、期間内になかなか出すタイミングがないという方は検討してみると良いだろう。
なお、郵送によって提出する場合は通信日付印により表示された日を提出日とみなすこととされているため、期限ぎりぎりだからといってそう慌てる必要はない。ただし確定申告書は信書に当たるため、郵便物や信書便物として発送しなければいけないということに注意しよう。
確定申告を忘れていたことに気づいた場合
確定申告の期限に間に合わなかった場合や、そもそもこれを忘れていた場合、その後行われる申告は期限後申告として扱われる。期限後申告を行った場合、あるいは申告を忘れていたことが税務署の調査によって発覚した場合には、納付すべき税金のほかに無申告加算税が課されることとなる。
無申告加算税は、原則として納付すべき税額に対して、50万円までは15%、これを超える部分には20%の割合で加算がなされる。税務署の調査前に自主的に期限後申告した場合はやや軽減され、50万円までは10%、これを超える部分には15%の加算となる。平成27年分までは自主的な期限後申告については一律で5%の加算とされていたのだが、平成28年分(平成29年1月1日以後が期限である申告)より増税されることとなった。
なお、次の要件を全て満たす場合には期限後申告であっても無申告加算税が課されることはない。
・その期限後申告が、申告期限から1か月以内に自主的に行われたこと
・期限内申告をする意志があったと認められる一定の場合に該当すること
一定の場合とは、次のいずれにも該当する場合である。
(1)その申告において納付すべき税額を納期限までに納めていること
(2)その期限後申告書を提出した日の前日から起算して5年前までの間に、無申告加算税又は重加算税を課されたことがなく、かつ、期限内申告をする意思があったと認められる場合の無申告加算税の不適用を受けていないこと
端的に、忘れていたとしても出来る限り早く期限後申告を行えば罰則を課されることはほとんどないということである。ただし、その意思が感じられない場合や、短期間(5年以内)のうちにこれが繰り返されるようである場合はこの限りでない、ということだ。
確定申告を意図的に提出しなかった場合
申告の忘れについては無申告加算税が課されるのに対し、もしも申告した税額が過少であった場合、これは過少申告加算税が課されることとなる。
無論、過少申告加算税に関しても無申告加算税同様の救済措置はあるため、気づいた段階で、あるいは発覚した段階で速やかに納税すればそこまで重い罰則が課されることはない。
しかし、それらが意図的に行われた場合、これは重加算税の賦課基準「隠ぺい又は仮装に該当する場合」に当てはまる。重加算税とは、税務手続き上隠ぺいや仮装があった場合にその他の加算税に代わって課される罰則で、その割合は最大で50%にも及ぶ。
無申告加算税においては最大で30%、過少申告加算税においては最大でも15%の加算に留まることを考えれば、重加算税の重さが良く分かることと思う。なお、これが発覚した段階までに延滞した期間に伴って延滞税も課されるため、実際の支払税額はより増大するはずだ。
確定申告は忘れず、意思を見せること
ここまで重大な罰則ばかりについて解説したが、悪質であると判断されない限りは重加算税などが課されることは基本的にない。
各加算税は平成28年度税制改正によって見直しが計られ、平成29年1月1日以後の申告に関して課される罰則は全体的に増税された。これは国の方針として正しい税申告を促すためだ。
そしてその判断を行うのは税務署であり、税務署が調査によって判断できるのは提出された申告書や納税状況だけなのである。申告の忘れに気づいた際は、申告書の作成や納付の準備を速やかに行うことも重要だが、同様に数字等を誤りなく記入することも大切だ。(ZUU online 編集部)