地方消費税の配分の偏りについて
では、清算後の各都道府県への地方消費税の配分はどのようになっているのであろうか。図表4は、H27年度決算における都道府県別人口1人当たりの地方消費税の配分額を比較したものである。全国平均を100とすると、最大値は東京都の130.4であり、東京都の1人当たり地方消費税配分額は最小値の沖縄県の約1.6倍である。
しかし、沖縄県を除いて見ると、税収配分の偏りは必ずしも都市部と地方部の間で生じているのではなく、むしろ、都市部間で生じており、その中でも特に東京都が突出していることがわかる。例えば、東京都近郊の埼玉県、千葉県、神奈川県は、1人当たりの消費支出に対する1人当たりの地方消費税の配分額が相対的に少ない。この原因は、清算基準のウェイトの75%を占めている財・サービスの販売額基準および同10%を占めている従業者数であると言われている。
端的に言えば、前者は、(埼玉県民の他都道府県での消費額)>(他都道府県民の埼玉県での消費額)という構図になっており、埼玉県から他都道府県、特に東京都へ消費が流出していることを意味している。
後者は、(埼玉県民のうち他都道府県への通勤者数)>(他都道府県民のうち埼玉県への通勤者数)という構図になっており、埼玉県から他都道府県、特に東京都への通勤者数が多いため、埼玉県民の従業者数が東京都においてカウントされていることを意味している。
これらは千葉県や神奈川県についても同様であり、消費の流出先や従業者のカウントが東京都に集中する結果、東京都への配分額が突出するとされている。つまり、地方消費税配分額が過度に東京都に偏っている原因は、財・サービスの販売額基準や従業者数という清算基準が必ずしも適切ではないことにある(2)と指摘できる。これらの清算基準に対する批判は以前からなされており、人口のウェイトを上げるべきだという意見もある。
今般、与党の平成29年度税制改正大綱において、清算基準におけるウェイトを、人口基準は15%から17.5%、従業者数基準は10%から7.5%とする変更案が盛り込まれた(3)。この清算基準の変更は、配分額の東京都偏重の解消に一定程度寄与すると考えられる。
一方で、地方税全体について同様の比較を行うと、最小値に対する最大値の倍率で見た1人当たりの税収額の格差は、地方消費税の1.6倍よりもはるかに大きく、2.6倍もある。税目別に見ると、地方法人二税(4)の6.1倍を始めとして、すべての税が地方消費税を上回っている(図表5)。
以上の事実を踏まえると、清算基準によって、地方消費税配分額が過度に東京都に偏っているといえる現状において、基準を変更することは配分額の東京都偏重の解消に一定程度寄与すると思われるが、そもそも地方消費税の1人当たりの税収額の格差は他の地方税と比較すると相対的に小さいことを認識しておくべきであろう。
-----------------------------
(2)沖縄県が最小値となっているのは、人口1人当たりの財・サービスの販売額や従業者数が相対的に少ないからだと考えられる。
(3)その他にも、インターネット販売等による通信販売額が本社所在地で集計されているため、配分額が都市部に偏る要因になっているという批判があり、平成29年度税制改正において、通信販売額を集計額から除外する方針が示されている。
(4)地方法人二税とは、企業が都道府県や市町村に納める法人住民税>と法人事業税の2税を指す。
-----------------------------