失業保険(失業給付)の申請でハローワークを訪れたら、その日のうちに失業保険の支給が開始されるというわけではない。失業状態にあるのかどうかを判断する待機期間を過ぎてから、失業保険の支給が開始されるのだ。待機期間とは何か、どのような流れで失業保険を受給できるのか、申請する際に何に注意する必要があるのかについて解説する。
(2020年11月27日編集部一部加筆)
失業保険を受給する流れ
失業保険をスムーズに受給するためには、在職中から準備を始める必要がある。
1.雇用保険の加入状況を確認する
通常は問題ないが、事業所によっては雇用保険に加入していないというケースもある。不安がある場合は、ハローワークで雇用保険の被保険者であるかどうかを確認したい旨を伝えよう。「雇用保険被保険者資格取得届出確認照会票」に氏名と生年月日、事業所名を記入し、運転免許証などの本人確認書類を提示して確認する。
2.離職証明書の内容を確認する
離職することを会社に伝えると、会社から「離職証明書」に記名と押印をするように指示される。記名する前に離職理由や雇用期間が正しく記載されているかを確認しよう。離職理由や雇用期間によって、受給できる失業保険の額が変わることもある。
3.離職後、ハローワークで申請手続きをする
離職したら、会社から送られる「雇用保険被保険者離職票」と本人確認書類、縦3センチ×横2.5センチの写真2枚(3カ月以内に撮影したもので、正面上半身が写っているもの)、本人名義の預金通帳を持っていき、ハローワークで求職申し込みを行う。
4.雇用保険受給者初回説明会に参加する
求職の申し込みを行った日に、「雇用保険受給者初回説明会」の日程を指定される。その日に、雇用保険受給資格者のしおりと印鑑、筆記具を持って、説明会に参加する。このとき、1回目の失業認定日の告知を受ける。
5.失業認定日にハローワークに行く
失業認定日(4週間に1回)には、必ずハローワークに行って失業認定を受ける。失業認定を受けないと失業認定日までの4週間分の失業保険を受け取れない(もしくは受給期間が遅れる)ことになる。
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失業保険の待機期間とは
ハローワークで求職の申し込みを行ってからの通算7日間を「待機期間」と呼ぶ。待機期間は、失業保険を受け取ることはできない。
会社都合の離職者と特定理由離職者の場合は、待機期間終了後から失業保険を受給できるが、特定理由以外の自己都合離職者と、会社に重大な損害をもたらすような過失によって解雇された人などは、待機期間終了後、さらに3カ月間は給付を受け取ることができない。
注意すべき自己都合と会社都合
会社都合で離職するか、特定理由以外の自己都合で離職するかによって、失業保険の受給総額は大きく異なる。
会社都合による離職
会社の都合でやむを得ず離職する場合を、会社都合による離職という。例えば、次のような事例が挙げられる。
事業所が倒産した、あるいは事業所が移転して通勤が困難となった、特に重大な過失があったわけでもないのに解雇された、賃金の3分の1を超える額が支払い日までに支払われない月が2カ月以上、または6カ月間に3カ月以上あった、といった内容だ。
また、1カ月に100時間を超える時間外労働があった、連続する2カ月間以上に平均して月80時間を超える時間外労働があった、上司や同僚からいやがらせを受けた、といった劣悪な労働環境も会社都合による離職として認められる。
自己都合による離職
一方、自己都合とは、会社の都合とは関係なく自分の都合で離職した場合をいう。自己都合で退職して雇用保険の失業給付を受け取る場合、給付が制限される期間が3カ月間あった。だが、2020年10月より自己都合退職による失業保険の支給が1カ月早まることになった。
なお、給付制限が2カ月間になる条件に適用されるのは、5年間のうち2回の離職までである。5年間のうち離職を3回行うと、その3回目の給付制限期間は3カ月となることに注意したい。
自己都合による退職で失業保険の支給が1カ月短縮された背景には、失業者の求職活動を支援することが理由としてある。離職して失業した状態が続いた場合に失業給付が3ヵ月間受け取れないと、求職活動はもちろんのこと、日常生活にまで影響が及んでしまうだろう。そのため、5年間のうち2回までという条件付きだが、給付制限を3カ月間から2カ月間に変更されたのだ。
また、有期の雇用契約の更新を希望したにもかかわらず会社の合意を得られなかったケースや、心身の問題や家族の介護などのやむを得ない事情で離職するときは「特定理由離職者」とみなされ、雇用保険の被保険者であった期間に条件はあるものの、会社都合の離職と同程度の失業保険を受給することができる。
申請から受給までに要する期間の具体例
求職申し込み(失業保険の申請)を行うと、会社都合や特定理由の場合は7日間の待機期間が終了した後から失業保険の支給が発生する。
申請 → 7日後に待機期間が終了 → 支給開始 → 約3週間後に第1回失業認定日 → 約5日後に受給
つまり、申請してから受給までに33日ほどかかることになる。初回は支給開始から約3週間後に失業認定日があるので、約21日分の失業保険を受け取ることになる。2回目以降は所定給付日数が終わるまで約28日分ずつ振り込まれることになる。
特定理由以外の自己都合の場合は、待機期間終了から3カ月後に失業保険の支給が発生する。
申請 → 7日後に待機期間が終了 → 3カ月後に支給開始 → 3~4週間後に第1回失業認定日 → 約5日後に受給
申請してから受給までに130日ほどかかることになり、約21~28日分の失業保険を受け取ることになる。2回目以降は所定給付日数が終わるまで、約28日分ずつ受け取ることになる。
ここまで、失業保険の申請から受給までに要する時間の具体例を紹介した。それでは、失業保険は実際にどのくらい給付されるのだろうか。
次に、失業保険で給付される金額を解説していく。
失業保険でいくら受け取れる?
失業保険の計算方法や受給金額が高くなる方の条件、給付金額の具体例を説明していこう。
失業保険の給付金額の計算方法
失業保険の給付金額は「所定給付日数」と「基本手当日額」をもとに計算していく。「所定給付日数」とは失業保険の基本手当が給付される日数の上限である。
所定給付日数は自己都合、または会社都合による離職、受給者の年齢によって異なるのでおさえておきたい。
・自己都合の場合
年齢に関係なく雇用保険の被保険者であった期間が1年未満の場合、所定給付日数は0日。1年以上10年未満の場合は90日。10年以上20年未満の場合は120日。20年以上の場合は150日となる。
・会社都合の場合
年齢に関係なく雇用保険の被保険者であった期間が1年未満の場合、所定給付日数は90日。それ以降は、年齢と被保険者であった期間によって、90〜330日と異なる。
・障害者などの職業困難者
45〜65歳未満の場合、被保険者であった期間が1年未満では150日。45歳未満の場合、1年以上であれば300日。45〜65歳の場合、1年以上であれば360日となる。
また、「新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための雇用保険法の臨時特例等に関する法律」が2020年6月12日に施行されて、基本手当の所定給付日数を受け終わる方は最大で60日間の延長が適用されることになった。離職日によって対象者が異なるため、ハローワークで確認してほしい。
そして、「基本手当日額」とは失業保険で受給できる1日あたりの金額のことである。基本手当日額の求め方は、離職した日の直前6カ月に支払われた賞与を含めない賃金の合計を180で割って算出された金額のおよそ50〜80%(60〜64歳は45〜80%)だ。
基本手当日額は年齢の区分ごとに上限額が異なり、毎年8月1日に更新されている。現在の基本手当日額は以下のとおりだ(令和2年8月1日より適用)。
- 30歳未満:6,850円
- 30歳以上45歳未満:7,605円
- 45歳以上60歳未満:8,370円
- 60歳以上65歳未満:7,186円
受給金額が高くなる人の条件
失業保険の受給金額が高くなる人は、以下の条件にあてはまる。
- 勤務先が倒産したり解雇されたりした場合
- 雇用保険被保険者であった期間が長い
- 離職前の給与が高い
勤務先が倒産した場合、会社都合の離職になるため所定給付日数が増える。さらに、被保険者であった期間が長いほど所定給付日数も増加するのだ。
そして、離職前の給与が高い方も基本手当日額の上限に達しやすくなるので、受給金額も高くなりやすい。
具体例で給付額を試算
ここでは以下の条件をもとに、失業保険の給付額を実際に計算してみよう。
- 離職時の年齢が37歳
- 被保険者であった期間が15年
- 離職前6カ月間の賃金総額が210万円
- 退職理由:自己都合
基本手当日額は6,177円となり、給付日数が120日間で総支給額は74万1,240円となる。
また、同じ条件で会社都合の離職であった場合、給付日数は240日間に増えて、総支給額は148万2,480円となるのだ。
計算する上での注意点
失業保険の基本手当日額のもととなる離職前6カ月間の賃金総額には、毎月の給与ではない賞与や祝い金などが含まれないことに注意したい。そのため、基本給が低く、その他の賞与などが高い方が離職した際には、想定より基本手当日額が低くなる可能性もあるのだ。
自己都合の場合は離職後の資金計画が必要
特定理由以外の自己都合の場合、離職しておよそ4カ月以上は失業保険を受け取ることができない。この期間の生活費をどうするか、資金計画を立ててから離職するようにしたいものである。
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