米住宅着工,許可件数
(写真=PIXTA)

結果の概要:住宅着工・許可件数ともに前月から減少、市場予想も下回る

12月16日、米国センサス局は11月の住宅着工、許可件数を発表した。住宅着工件数(季節調整済、年率)は109.0万件(前月改定値:134.0万件)と07年以来の高水準となった前月から減少、市場予想の123.0万件(Bloomberg集計の中央値、以下同様)も大幅に下回った(図表1、図表3)。

住宅着工に先行する住宅着工許可件数(季節調整済、年率)は、120.1万件(前月改定値:126.0万件)と、こちらも122.9万件から上方修正された前月から減少、市場予想の124.0万件も下回った(図表2、図表5)。

54593_ext_15_0

結果の評価:11月の軟調は一部10月の反動。注目される住宅ローン金利の影響

11月の住宅着工件数の伸びは、前月比▲18.7%(前月:+27.4%)と15年2月(▲18.9%)に次ぐ大幅な落ち込みとなったものの、前月が82年7月(+29.3%)以来の高い伸びとなっていた反動が大きいとみられる。前年同月比も▲6.9%(前月:+24.9%)とマイナスに転じたが、こちらも前月が16年2月(+35.8%)に次ぐ水準となっていたことから反動の影響とみられる(図表3)。

住宅着工件数(前月比)を、戸建てと集合住宅に分けてみると、戸建てが▲4.1%(前月:+10.5%)、集合住宅が▲45.1%(前月:+76.0%)と、いずれ前月の大幅なプラスからマイナスに転じた(図表4)。

住宅着工件数(前月比)の地域別寄与度は、北東部▲6.5%ポイント(前月:+6.9%ポイント)、中西部▲2.2%ポイント(前月:+5.2%ポイント)、南部▲4.3%ポイント(前月:+8.7%ポイント)、西部▲5.7%ポイント(前月:+6.6%ポイント)と全ての地域でマイナスとなった。

54593_ext_15_1

住宅着工件数の先行指標である住宅着工許可件数は、11月の前月比が▲4.7%(前月:+2.9%)と4ヵ月ぶりにマイナスに転じた。また、前年同月比も▲6.6%(前月:+7.2%)と3ヵ月ぶりにマイナスに転じた(図表5)。

許可件数を戸建て、集合住宅でみると、戸建ては前月比+0.5%(前月+4.3%)と4ヵ月連続のプラスとなったものの、集合住宅は▲13.0%(前月:+0.6%)と3ヵ月ぶりのマイナスに転じた(図表6)。

54593_ext_15_2

11月の結果は好調であった10月の反動と考えられる。実際、建設業者のセンチメントを示す住宅市場指数は、12月の結果が、総合指数、足元の新築住宅販売、今後6ヵ月後の販売見通し、ともに前月から大幅に改善し、05年以来11年ぶりの高い水準となっているため、住宅市場の回復基調は持続していると判断できる。もっとも、11月選挙以降にみられる住宅ローン金利の急上昇に伴い、住宅ローン申請件数は減少しているため、今後金利上昇が住宅市場に与える影響が注目される。

窪谷浩(くぼたに ひろし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 主任研究員

【関連記事】
米国経済の見通し-来年以降は、米国内政治動向が鍵。トランプ氏の政策公約が全て実現する可能性は低い。
【11月米雇用統計】労働参加率、賃金は下振れも、雇用の伸びは堅調で、12月の利上げを後押しする内容。
【12月米FOMC】予想通り、1年ぶりとなる0.25%の利上げを実施
【10月米個人所得・消費支出】個人消費は予想比下振れも、個人所得は堅調な賃金・給与が下支えし、16年4月来の高い伸び。
【10月米住宅着工、許可件数】住宅着工許可件数は132.3万戸。市場予想を大幅に上回り、07年以来およそ9年ぶりの高水準。