デンマークに拠点を置く大手投資銀行サクソバンクを親会社に持つ「サクソバンク証券」は、サクソバンクが毎年“Outrageous Predictions” (大胆予測) と称し、「現実に起こった場合世界市場に多大な影響を及ぼす10大テーマ」に添い、シナリオ形式でユーモラスにまとめたレポートの邦訳版「サクソバンクの大胆予測」を発表している。
同社のレポートは、市場のコンセンサスとは大きく異なる“大胆な”予測にもかかわらず、波乱だらけの2016年においては、今までに出したいくつかの驚愕のシナリオのうち、2014年から含んできた「イギリスのEU離脱」など、一般的なエコノミストの予想とは異なる同社の大胆予測が現実に起こってしまった驚きの年でもあった。
当たらないはずの大胆なシナリオが“当たってしまった”驚愕の2016年をふまえ、今回はサクソバンクの「2016年大胆予測」のシナリオを検証し、2017年大胆予測を紹介する。
ユーロ/ドルの行き先は「1.23」
【予測】
ヨーロッパが経常収支黒字を維持し、インフレ率が低いことなどからドル安ユーロ高の展開となり1ユーロ1.23ドルと予想。
【結果】
1ユーロ1.10 ドルをはさんで推移。一番ユーロが安くなった4月には1.13ドルまでいくものの、イギリスのEU離脱(ブレグジット)決定、トランプ次期大統領への期待感などもあり、為替はドル高ユーロ安の展開。12月時点で1ユーロ1.10ドルさえも下回り予測と逆行した。
ロシアルーブルは16年末までに20%上昇
【予測】
資源価格の上昇などによりエネルギー収入に頼るロシア経済が好調となり、対ドルでルーブルが16年末までに20%の上昇と予想。
【結果】
予想が大筋で当たり。原油価格の上昇にも支えられルーブルは今年初めの段階で1ドル73ルーブル前後だったのが、12月現在1ドル60ルーブル前後と約18%もの上昇となった。
シリコンバレーのユニコーンに吹く現実の風
【予測】
ベンチャーキャピタルからのユニコーン(企業の評価額が10億米ドル以上の新興企業)への投資が冷え込み、ハイテク企業の株価の下落やサンフランシスコの住宅価格高騰にも歯止めがかかると予想。
【結果】
ハイテク株が多く上場しているNASDAQでは史上最高値を更新するほど活況の1年だった。サンフランシスコの住宅価格高騰はまだ続いているが、こちらはそろそろ下がるとの予測も出ている。
リオ五輪がブラジル主導の新興国景気回復を加速
【予測】
リオ五輪開催やそれに伴う公共投資によってブラジル主導となり新興国の景気が回復する。その結果2016年には新興国の株価が25%上昇する。
【結果】
予想通り、開催国のブラジルやロシアなどは堅調。過去1年でそれぞれの株価指数は3割、5割程度上がるなど、MSCIの新興国指数をみても、南米や東欧は大きくあがったが、全体では大幅な上昇は認められなかった。
民主党、米大統領選、議会選、ダブル圧勝
【予測】
上下両院で多数派を占めていた共和党に議会選挙で民主党が圧勝し、大統領選でも勝利すると予想。
【結果】
大統領選では共和党候補ドナルド・トランプ氏が勝利し、議会選挙でも共和党が過半数を維持し民主党のダブル圧勝とはならなかった。
OPEC内部対立で、原油価格一時100ドル回復
【予測】
中東全体やその他地域の地政学的リスクプレミアムの増大や減産などを背景に原油価格は一時100ドルに達すると予想。
【結果】
原油価格は12月に1バレル=50ドルを回復したが、100ドルにはまだまだ達していない。
低迷が続く金を尻目に銀は33%高騰
【予測】
銀の生産削減計画がある一方、需要の増大により銀の価格が33%高騰すると予想。
【結果】
年初には1オンス14ドル前後だったのが7月には一時40%以上も値上がりし1オンス20ドルを突破した。しかし現在は1オンス16ドル前後で推移している。
社債市場のメルトダウンの犯人はFRB
【予測】
歴史的な低金利政策により債券への投資資金の調達が容易な環境にあったが、FRBの利上げにより社債市場は壊滅的な打撃を受けると予想。
【結果】
FRBによる利上げが12月に実施され、債券価格の下落が見られたが、大きな混乱は起きなかった。
エルニーニョ現象でインフレ発生
【予測】
エルニーニョ現象により土壌の水分不足や干ばつが発生し、農作物の減収によるインフレが発生すると予想。
【結果】
エルニーニョ現象は春の段階で終息している。
不平等是正で消える高級産業の最後の笑み
【予測】
ヨーロッパでの消費低下や新興国、中国などの景気後退の結果、高級品の売上は低下していく。不平等是正により高級品大手LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトンの売り上げが50%以上落ち込むと予想。
【結果】
今年8月に発表されたLVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトンの1~6月期決算によると、売上高が前年同期比103%の171億8800万ユーロ、営業利益が同100%の29億5900万ユーロ、純利益が同106%の18億6300万ユーロと増収増益となった。
2016年の予測と結果、いかがだっただろうか。イギリスのEU離脱やトランプ氏の当選など、実に予測が難しい1年だった2016年。サクソバンクの予測そもそも“大胆”と掲げているわりに、ロシアルーブルや銀価格の上昇などは予測どおりとなっている。 果たして17年はどんな年になるのだろうか。既にサクソバンクは2017年の大胆予測を発表している。無料でダウンロードできるので、投資家として、来年がどんな年になるのか予測するうえで参考にしてみてはいかがだろうか。
サクソバンク(Saxo Bank A/S)について
サクソバンクは1992年に設立されたデンマーク金融監督庁の許可を受けたオンライン取引を専門とする銀行であり、マルチアセット取引に特化しているのが特徴。豊富なFXぺア取引、CFD、NDF、海外商品先物まで幅広く取り扱っており、多彩なラインナップがある。デンマークのみならず、日本、イギリス、シンガポール、フランス、スイス、アラブ首長国連邦等を含む世界の金融都市でビジネス展開をしており、欧州ではFXの先を行く企業として認識されている。日本では子会社である「サクソバンク証券」が取扱を行っている。