VR
(写真=Panchenko Vladimir/Shutterstock.com)

2016年10月にPlayStation VRが発売されたように、2016年は「VR元年」といわれるほどVR関連の動きがあった年である。このままVRは本格普及につながるのか、各社の戦略とあわせてみていきたい。

VRの特徴は臨場感

VRとは、Virtual Reality(仮想現実)の頭文字を取ったもので、コンピューターが作り出す映像を3Dなどの技術を使い、まるで現実のように見せる技術である。現在、VRの活用が進んでいるのはゲーム分野だ。

レーシングゲームを例にみてみよう。これまでは操作時に車を第三者目線でとらえたような広い視野だったが、VRでは車の運転席からみた視野となっている。また、VR端末にはポジショントラッキング機能が内蔵されており、頭や身体の動きに連動して画面の視野が変わる。そのため、プレイヤーはまるで画面の中にいるような感覚を体験できる。

現在のVR市場はソニー、米Oculus(オキュラス)社、台湾HTC社の3社が独占

では、現在のVR市場は本格的な普及期に入ったといえるのであろうか。

Statista.comによると、現在のVR市場はソニー、米Oculus、台湾HTCの3社で金額シェアの99%を占めている独占市場である。だが、3社は用途や価格帯では違った戦略を取っている。

Oculusはパソコンとスマートフォン向けにVR端末を販売している。例えば、Oculus Riftはパソコンに接続してゲームや動画を鑑賞する際に使うVR端末である。さらに、Samsung Gear VR Powered by Oculusという、韓国サムスンのスマートフォン「Galaxy」に接続してゲームや動画を見るためのVR端末も販売している。価格もOculus Riftは約10万円と高価であるが、Samsung Gear VRは家電量販店では1万円前後の価格で販売されており、入門モデルの位置づけだ。

HTCが販売するHTC Viveはパソコン向けのVR端末で、価格は10万円前後。コントローラーが付属されており、対角線上にレーザー装置を取り付けることでポジショントラッキング機能が5メートル四方で可能となる。さらに、歩くと画面の視野が変化する機能を持つ。3社の中では最もリアルなVR端末といえる。

ソニーのPlayStation VRはゲーム機用のVR端末であり、価格は約5万円となっている。他の2社と比較して価格を抑えているが、廉価版で普及を狙ったミドルエンド向けVR端末といえる。

現行のVR端末はハイエンドのPC向けをOculusとHTCがカバーし、ミドルエンドのゲーム機向けをソニー、ローエンドのスマートフォン向けをOculusがサムスンのGalaxyブランドで販売している市場である。

今後の普及は米Oculus社主導か

このように3社が独占しているVR端末市場であるが、現在の市場は本格的な普及期に入ったのであろうか。スマートフォン市場の拡大と比較して分析してみよう。

2015年度の情報通信白書によると、世界のスマートフォン出荷台数の価格帯別比率は新興国でのスマートフォンの普及が進むにつれ、ハイエンドからローエンドへのシフトが起きている。実際、HIS Technologyのデータによると、2013年から2014年にかけてハイエンドのスマートフォンの比率は39%から34%へと5ポイント低下したのに対し、ローエンドは39%から42%へと3ポイント増加した。まずはハイエンド中心に市場が立ち上がるが、本格的な普及期に入るにつれて普及価格帯に推移していくのが、製品市場の拡大の典型的な動きである。

普及価格帯への進出を積極的に狙っているのは、Oculusである。

現行のVR端末であるOculus Riftを動作させるためにはハイスペックのPCが必要である。しかし2016年10月に米国で行われたOculusのカンファレンスでは、Oculus RiftをロースペックのPCでも動作できるようにすると発表されたようだ。

またOculusは、米Facebookが将来性を見込んで2014年に20億ドルで買収した。FacebookはPC、モバイル、タブレットと、動作させるためのデバイスを選ばない。そのためOculusは、VR普及のためにさまざまなデバイスで戦略を仕掛けることができるようになった。一方、ソニーはPlayStationという自社プラットホームを持っているため、他のデバイスでのVR普及の展開は難しいといえる。

このことから、今後のVR端末市場は、Oculus主導で進んでいきそうだ。(提供: 百計オンライン

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