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景気の現状判断DI(季節調整値):前月から横ばい、回復基調は継続

1月12日に内閣府から公表された16年12月の景気ウォッチャー調査によると、景気の現状判断DI(季節調整値)は51.4と前月から横ばいとなり、拡大・縮小の節目である50を2ヵ月連続で上回った。景況感は長らく続いた踊り場を脱却し、緩やかな回復基調が続いている。なお、内閣府は基調判断を「着実に持ち直している」に据え置いた。

今回の調査では、米大統領選挙後の円安・株高による資産効果に加え、ボーナス・年末年始商戦などがマインドの下支えとなった模様である。家計動向関連では、円安の影響もありインバウンド消費が好調であったことが百貨店を大きく押し上げた。

一方、一部の業種では生鮮食品価格の高止まりから買い控えを懸念する報告が寄せられたほか、気温が低めに推移した前月から一転して暖冬となったため冬物商材が低調となったようだ。企業部門においては、円安・株高基調の継続でマインドが好転していることに加え、内外需要の回復を背景に生産や輸出が持ち直していることもプラスに働いたようだ。

コメントをみると、引き続き人手不足関連が改善要因となるなか、円安・株高を好感するコメントが前回調査から増加している(最終頁の図参照)。消費の下押し要因となっている生鮮食品の価格高騰への懸念も幾分和らいでいる。

円安・株高、ボーナス・年末年始商戦が下支え

現状判断DI(季節調整値)の内訳をみると、家計動向関連(前月差▲0.8ポイント)が前月から悪化する一方で、企業動向関連(同+1.5ポイント)、雇用関連(同+1.8ポイント)が改善した。家計動向関連では、飲食関連(前月差+2.5ポイント)、サービス関連(同0.5ポイント)がプラスとなったが、小売関連(同▲1.9ポイント)、住宅関連(同▲0.3ポイント)が全体を押し下げた。

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コメントをみると、家計動向関連のうち 小売関連 では「前月から続く円安の影響もあり、インバウンド売上は前年比で9.7%増となっている。一般品は依然として前年割れであるが、消耗品の伸びによって増収となっている」(近畿・百貨店)とのコメントのように、円安の影響でインバウンド消費が押し上げられたほか、「クリスマス期間は日並びや天候に恵まれ、前年を上回る売上となった。株高効果もあるのか、宝飾品の売上もここ数ヵ月前年を上回ってきている」(四国・百貨店)など、クリスマス期間が3連休と日並びが良かったことも影響したようだ。

一方、「全館の売上としては、暖冬の影響や販促施策でセール企画が多く単価が下がったこともあり、前年比にはやや届いていない」(北陸・その他小売)といったように、気温が低下した前月から一転して暖冬となったため、冬物商材が低調となった模様である。生鮮食品の価格高騰への懸念は依然根強いものの、「高値が続いていた野菜価格が低下しており、価格に非常に敏感である」(中国・スーパー)といったように、若干落ち着きをみせている。

住宅関連 では、「これまで好調であった、都心部のタワーマンションの集客状況が落ち着いてきている。郊外に至っては集客が激減しているなど、新築マンションの販売は非常に厳しい」(近畿・住宅販売会社)や「マンション、戸建住宅共に、低金利と円安に支えられ、まずまずの売れ行きであるが、好調というほどではない」(東海・建設業)とのコメントのように、都市部を中心に住宅市況に陰りもみられる。

企業動向関連 は、製造業(前月差+1.5ポイント)、非製造業(同+1.7ポイント)ともに前月から改善した。コメントをみると、製造業では「円安で販売量が増加している」(東海・電気機械器具製造業)など円安を好感するコメントのほか、「特殊な製品を中止として、国内、海外向け共に、活発に動いている」(近畿・金属製品製造業)といったように、内外需要の回復を示唆するコメントも多数寄せられた。

非製造業では、「年末にかけて、荷主メーカーの出荷量がやっと増え始めてきている。年始にかけてやや増加の見込みである」(南関東・輸送業)など、年末年始の需要増が押し上げ要因となったとみられる。

雇用関連 では、「従業員増員の求人が少しずつ増えている。人手が足りないので、派遣会社に頼んだというケースは引続き多い。お歳暮時期の仕事も、例年より時間外勤務の多い事業所があった」(九州・人材派遣会社)といったように、求人数は派遣を中心に増加傾向にあるなか、「求人数は引き続き増加傾向である。雇用形態も正社員募集が多い」(南関東・人材派遣会社)とのコメントのように、正社員の人材需要が高まっている様子も窺える。

景気の先行き判断DI(季節調整値):改善基調は持続も、一部に不透明感も

先行き判断DI(季節調整値)は50.9(前月差▲0.4ポイント)と6ヵ月ぶりに悪化したものの、節目の50を3ヵ月連続で上回った。先行き判断DIの内訳をみると、雇用関連(前月差+1.0ポイント)が前月から改善する一方で、家計動向関連(同▲0.4ポイント)、企業動向関連(同▲0.9ポイント)は悪化した。

家計動向関連 では、「消費マインドはなかなか改善しないが、富裕層の消費が今後も景気の回復を牽引する」(東海・百貨店)や「米国の次期大統領決定を受けて、塩漬けだった相場が大きく動いている。円安により、冷え切っていたインバウンド需要も徐々に改善する」(南関東・家電量販店)といったコメントのように、富裕層・訪日外国人旅行客の高額消費への期待が下支えとなるとみられる。

また、「野菜の価格も落ち着き、春に向けて客足も良くなる」(東海・一般レストラン)とのコメントから、生鮮食品の価格高騰に対する懸念が和らぎつつある様子も窺える。もっとも、「米国の次期大統領選への期待が先行しており、就任後の政策効果が出てくるまでは様子見となる。現在は堅調な株価や為替のトレンドに変化が起きれば、消費マインドは低迷せざるを得ない」(近畿・百貨店)など米大統領就任を前に先行きへの不透明感を指摘するコメントが散見された。

企業動向関連 では、「円ドル為替水準が現状のまま安定すれば、米国市場への輸出が多い当社にとっては良い条件となる」(北陸・一般機械器具製造業)など先行きも円安の下支えが見込まれる一方で、「素材の値上げが決定しているが価格転嫁もできず、昨今の円安の影響もあり、今後は現地生産にシフトしていく」(東海・電気機械器具製造業)や「ガソリン価格が上昇傾向で、車で出かける回数が減り、景気にも影響する」(東海・輸送用機械器具製造業)など、円安の悪影響を指摘するコメントも見受けられた。

雇用関連 では、「年度末までに採用者数が増える見込みであり、このまま企業とのマッチングが増えれば働く人も増え景気も上向く」(中国・人材派遣会社)とのコメントのように、年度末に向けた人材需要の増加が景況感を下支えするとみられる。

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家計の節約志向は依然根強いものの、先行きは緩やかな回復が続くことが予想される。もっとも、足もとの金融市場はトランプ氏の勝利後の円安・株高基調が一服しており、政策運営を巡り不透明感が高まれば再び円高・株安が進行しマインドに悪影響をもたらす可能性もある。海外の政治情勢や金融市場の動向にも引続き注意が必要となろう。

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岡圭佑(おか けいすけ)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 研究員

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