企業物価指数,円安,原油高
(写真=ニッセイ基礎研究所)

国内企業物価は前月比で2ヵ月連続の上昇

1月16日に日本銀行から発表された企業物価指数によると、2016年12月の国内企業物価は前年比▲1.2%(11月:同▲2.2%)と下落幅は前月から1.0ポイント縮小し、事前の市場予想(QUICK集計:同▲1.5%)を上回った。前月比では0.6%(11月:同0.4%)と2ヵ月連続でプラスとなった。2016年平均では前年比▲3.4%(2015年平均:同▲2.3%)と2年連続の下落となった。

国内企業物価(*1)の前年比寄与度をみると、鉄鋼・建材関連(11月:前年比▲0.0%→12月:同0.1%)、為替・海外市況連動型(11月:前年比▲0.4%→12月:同0.2%)がプラス寄与に転じたほか、素材(その他)(11月:前年比▲0.6→12月:同▲0.5%)のマイナス寄与が前月から縮小したため、国内企業物価は前年比で下げ幅を縮小した。

中国景気に底打ち感が強まっていることや、引き続きトランプ次期政権のもとで景気拡大期待が高まっていることなどを背景に国際商品相場が堅調に推移していることに加え、円安の進行もあり物価下落圧力は弱まりつつある。

対前年比の伸び率をみると、鉄鋼・建材関連(11月:前年比▲0.4%→12月:同0.4%)は、スクラップ類(11月:前年比26.7%→12月:同36.3%)が堅調に推移したことから、前年比で上昇に転じた。為替・海外市況連動型(11月:前年比▲5.5%→12月:同3.0%)についても、石油・石炭製品(11月:前年比▲5.6%→12月:同3.7%)や非鉄金属(11月:前年比▲5.4%→12月:同1.5%)の上昇を主因にプラスに転じるなど物価の下落圧力は弱まっている。

特に石油・石炭製品は、OPEC減産合意による原油需給の改善観測を背景に原油価格(ドバイ、月中平均)が大幅に上昇(11月:前年比5.0%→12月:同47.5%)したことが影響した。

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国内企業物価指数の調査対象品目814品目のうち、前年に比べ上昇したのは250品目(11月:233品目)、下落は478品目(11月:497品目)となった。下落品目と上昇品目の差は228品目で11月の264品目から縮小しており、品目数でみた価格の下落傾向に歯止めがかかりつつある。

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(*1)
1.機械類:はん用機器、生産用機器、業務用機器、電子部品・デバイス、電気機器、情報通信機器、輸送用機器
2.鉄鋼・建材関連:鉄鋼、金属製品、窯業・土石製品、製材・木製品、スクラップ類
3.素材(その他):化学製品、プラスチック製品、繊維製品、パルプ・紙・同製品
4.為替・海外市況連動型:石油・石炭製品、非鉄金属
5.その他:食料品・飲料・たばこ・飼料、その他工業製品、農林水産物、鉱産物
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輸入物価の下落幅は大きく縮小

12月の輸入物価は、資源価格の上昇から契約通貨ベースで前年比0.4%(11月:同▲1.5%)と2014年8月以来のプラスとなった。さらに円ベース(11月:前年比▲10.0%→12月:同▲2.8%)では円安の進行もあり前月から下落幅を大きく縮小した。

輸入物価(円ベース)(*2)の前年比寄与度をみると、石油・石炭・天然ガス(11月:前年比▲2.8%→12月:同▲0.1%)、化学製品(11月:前年比▲0.8%→12月:同▲0.5%)、食料品・飼料(11月:前年比▲0.9%→12月:同▲0.4%)、機械器具(11月:前年比▲3.2%→12月:同▲1.7%)、その他(11月:前年比▲1.7%→12月:同▲0.8%)のマイナス寄与が前月から縮小したほか、金属・同製品(11月:前年比▲0.6%→12月:同0.7%)がプラス寄与に転じたことが、輸入物価の下げ幅を縮小させた。

対前年比の伸び率をみてみると、石炭やLNGが堅調に推移したことや円安の進行を背景に、石油・石炭・液化天然ガス(円ベース)は前年比▲0.3%と前月(同▲10.5%)からマイナス幅を大きく縮小した。

金属・同製品(円ベース)については、鉄鉱石などの金属素材(前年比12.2%)、鉄鋼(前年比7.8%)の上昇を受けて前年比7.3%(11月:同▲6.0%)と上昇に転じた。石油・石炭・液化天然ガス(円ベース)、金属・同製品(円ベース)に対してそれぞれ1ヵ月程度の先行性を有する原油価格(ドバイ)、日本銀行国際商品指数が上昇基調にあることから、今後も物価上昇圧力が高まることが予想される。

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輸入物価(円ベース)の変化率を為替要因と契約通貨ベース要因に分解してみると、ともに物価を押し下げる方向に作用していたが、12月は国際商品市況の上昇で契約通貨ベース要因が物価を押し上げる要因となった。

米大統領選挙でトランプ氏が勝利したことを受けて為替レート(月中平均)は、11月の1ドル=108.3円(前年比11.6%の円高)から、12月には1ドル=116.0円(前年比4.7%の円高)と一段と円安が進行した後、1月(1ドル=115.9円程度、前年比2%程度の円高)も同水準で推移するなど円高の影響は一巡しつつある。

原油価格を含めた国際商品市況の持ち直しによって物価下落圧力が緩和されていることに加え、円安の進行で物価の下押し圧力が一巡することから、輸入物価は2016年度末までに前年比でプラスに転じるだろう。

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(*2)
1.機械器具:はん用・生産用・業務用機器、電気・電子機器、輸送用機器
2.その他:繊維品、木材・同製品、その他産品・製品
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最終財への下押し圧力は和らぎつつある

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12月の需要段階別指数(国内品+輸入品)をみると、素原材料が前年比3.1%(11月:同▲5.4%)、中間材が前年比▲2.6%(11月:同▲4.6%)、最終財が前年比▲1.3%(11月:同▲2.7%)となった。素原材料が前年の水準を上回るのは2014年12月以来2年2ヵ月ぶりとなる。

原油をはじめとした国際商品市況の持ち直しや円安の進行で川上(素原材料)の物価下落圧力は一巡しており、川下(最終財)への下押し圧力は和らぎつつある。消費者物価(生鮮食品を除く総合)と関連性の高い最終消費財は16年度末までにプラスに転じた後、円高の影響一巡やエネルギー価格の上昇を受けて伸びを高めると予想する。

国内企業物価は年明け以降プラスへ

国際商品市況の改善・円安の進行を受けて、前月比でみた国内企業物価は2ヵ月連続でプラスとなった。また、OPEC、非加盟国が協調減産に合意したことを受け原油価格(ドバイ)は1バレル=50ドル台半ばで推移しており、物価下落圧力は緩和される方向にある。このため、国内企業物価は円高・原油安の影響が一巡する年明け以降、前年比でプラスに転じるとみている。

ただし、トランプ次期政権の政策を巡り金融市場では再び緊張感が高まっており、為替レートや原油価格に与える影響を注視する必要があるだろう。

岡圭佑(おか けいすけ)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 研究員

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