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(写真=Fer Gregory/Shutterstock.com)

統合型リゾート(IR:Integrated Resort)整備推進法案、いわゆるカジノ法案が成立され、いよいよ日本にもカジノのある統合型リゾートが誕生する運びとなった。外国人観光客の増大や地域活性化など、プラス面が盛んに宣伝され、すでに多くの都市や自治体、企業などが準備に入っていると噂されている。なかでも熱心なのが、お台場地区での統合型リゾート建設を目指すフジテレビだ。

なぜフジテレビは統合型リゾートに狙いを定めたのか。そもそも統合型リゾートに死角や不安はないのか。その実情を追ってみた。

いよいよ実現 期待高まる日本版カジノ

通称カジノ法案が成立され、政府は具体的な制度設計を盛り込んだ「IR実施法案」を2017年から1年以内に国会に提出する作業に入る。

カジノだけでなく、高級ホテルやショッピングモール、シアター、テーマパークなどを含めた統合型リゾート実現のため、関連企業だけでなく誘致を目指す各自治体も熱い視線を送っている。東京オリンピック以降の外国人観光客や国内高齢富裕層の集客、地元経済の活性化などが予想され、その経済効果は4兆円と試算するシンクタンクもあるなど、アベノミクスの切り札として期待する声は大きい。

たしかにラスベガス、マカオ、シンガポール、香港など、著名な国際的カジノでは、1施設の収益規模が数百億〜数千億円と極めて大きい。またカジノ運営会社、いわゆるカジノオペレーター本体の収益は、たとえばラスベガスで約15億ドル(約1,650億円:1ドル=110円換算)だ。さらに世界各国のカジノでは、周辺への経済波及効果を含めると数千億〜数兆円という規模に達するともいわれている。

すでに東京、横浜、大阪、北海道、長崎、沖縄など、日本各地で複数の自治体が立候補を表明している。カジノ法案の成立を前に、各地域の広報活動は一気にヒートアップする勢いだ。そして、なかでもカジノ実現が有力視されている候補地の一つが、フジテレビがある東京“お台場”だ。

フジテレビは何を目指す

実はこれまでも、フジテレビによる「お台場カジノ構想」は度々浮上していた。

フジテレビと三井不動産、鹿島建設などが、東京・お台場でのカジノを含めた統合型リゾート開発計画案を出したのは2013年暮れのことである。それ以前もそれ以降も、カジノ法案そのものは、これまで何度か国会でも議論されては廃案となってきたが、その当時からフジテレビは着々と準備を進めていたことになる。その内容とは、お台場地区にカジノを併設した巨大ホテルを据え、周辺に商業施設や国際展示場などを整備して、発電施設も備えた24時間型のスマートシティーを建築するという壮大な構想だ。何度か紆余曲折を経て、2016年12月のカジノ法案成立により、ようやく具体化の兆しが見えてきたのである。

ではなぜ、フジテレビはこの壮大な構想の実現を急ぐのか。理由の一つとして考えられるのが、本業のテレビ放送の低迷であるといえよう。報道もドラマもバラエティーも、フジテレビにかつての勢いはなく、ついにはゴールデンタイムの視聴率が制作予算の少ないテレビ東京にまで抜かれてしまうような状態である。

起死回生を狙ってのカジノ構想、しかもイベント放映などの副次的効果も期待できる統合型リゾートならば、テレビとの連動性も高い。話題作りだけでなく視聴率や収益面でも、統合型リゾートに期待する面は極めて大きいといえるだろう。

ただし、カジノの候補地は前述したようにお台場だけではない。日本各地で自治体が名乗りを上げているのだ。また、ラスベガス・サンズ、MGMリゾーツ・インターナショナルなど、海外有数のカジノ運営企業や日本の娯楽関連企業も日本でのカジノ開設をめざし、水面下で激しいロビー活動を続けているところだ。

こうした激しい競争を勝ち抜き、フジテレビはお台場での統合型リゾート構想を実現することができるのだろうか。前途に待ち受けている道は決して平坦ではないといえよう。

懸念されるカジノのデメリット

経済効果が大いに期待される統合型リゾート構想だが、もちろん懸念材料はある。野党が指摘しマスコミでも度々取り上げられている、ギャンブル依存症の問題や青少年への悪影響、そしていわゆる反社会勢力のマネーロンダリング(資金洗浄)に利用されるのではないかなどの問題だ。

また東京オリンピックを前に、土木建築作業員の人手不足が指摘されている。ただでさえ東北復興のための人手が不足している現状では、今後さらなる建材費や人件費の高騰を招くのではないかという点も懸念材料だ。

今回のカジノ法案成立に際しては、これらの問題に対して具体的な法整備をこれから検討するとしている。だが、解決のための方向が見えない現状で法案成立を強行突破したのは、いたずらに国民の不安を煽るだけではないだろうか。やはり拙速の感は否めないといえる。

カジノ法案により、日本ではどのような統合型リゾートが具体化していくのか、指摘される諸問題にはどう対応していくのか、政府や行政はそのための対策案を早急に示すべきだろう。カジノリゾートを事業の突破口と捉えるフジテレビ連合にも、それらの問題に対する具体的な提案を是非とも期待したい。

いずれにせよ、今回のカジノ法案は方向性を示しただけといえるので、より今後の動向からは目が離せないだろう。(提供: 百計オンライン

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