富裕層と太いパイプを持つ百貨店業界で、リフォーム参入が目立ち始めている。これまで行ってきた家具やインテリアコーディネートから一歩進み、高級キッチンやバスルームを提案する企業も現れ始めている。各社のリフォーム実施状況をリポートする。
ターゲットは50代以上
百貨店大手10社のリフォーム実施状況を見てみると、リフォームを提供しているのは3社だった。
今年から本格的にリノベーション事業を開始したのが、セブン&アイ・ホールディングスのそごう・西武(東京都千代田区)。6月、池袋本店に「くらしのデザインサロン」を開設。50代以上のシニア世代をターゲットに、リノベーションやインテリアコーディネートの総合窓口となっている。
同店では数年前から、催事として、建築士やインテリアコーディネーターとの相談会イベントを開催。「もっと詳しく相談したい」などの声が高まったことから、常設のスペースを設けることにした。
同サロンは、200平米のスペースに、リビング、キッチン、バスルームを再現。ここでは、まず家に関して相談したいユーザーに、同店の社員であるサロンコンシェルジュが対応。建築士、インテリアコーディネーター、医者、照明デザイナーなど20人のスペシャリストを紹介する。
相談と専門家の紹介は無料で、同店ではリノベ時に発生する家具や食器などの物販を狙う。
水越友子係長は、「最近では百貨店とはいえ、物を並べるだけではダメ。暮らしの入り口からご提案しようと考えた時に、ニーズが高いと考えたのがリノベーションでした」と話す。
売上高トップの三越伊勢丹ホールディングス(東京都新宿区)では、伊勢丹新宿本店、日本橋三越本店に住まいの相談カウンターを開設。オーダーメード家具やリフォームを提供する。キッチンにはオーダーメードキッチンブランドの「キッチンハウス」、高級オーダーシステムバス「アルティス」など。また今年から中古マンションのリノベーションにも参入。住宅関連イベントに出展し、中古マンションの改修アイデアを披露する。
2014年からリフォーム事業に注力し始めたのが、高島屋(大阪府大阪市)。同年、法人向け内装事業を提供する小会社高島屋スペースクリエイツと、同社のリフォーム部門を統合。これまで帝国ホテル、ザ・リッツ・カールトン東京などの設計を手掛けてきた経験を生かし、ホテルライクな高級リフォームを提案する。
松坂屋、阪急は未着手
積極的にリフォーム事業を展開する企業がある中、2007年に大丸と松坂屋の統合によって誕生したJ.フロントリテイリング(東京都中央区)や阪急・阪神百貨店のエイチ・ツー・オーリテイリング(大阪府大阪市)はリフォーム事業を提供していない。
東京急行鉄道(東京都渋谷区)や小田急電鉄(東京都新宿区)は、グループ内の不動産・住宅会社では改修事業を行っているが、百貨店事業との連携は、店舗内での住宅相談会イベントなどを除きほとんどない。
百貨店上位25社の売り上げは約7兆6000億円。2006年から減少の一途だったが、2012年頃から景気の上向きを受け、増加に転じている。メーンターゲットである富裕層に、より踏み込んだ暮らしの提案を行うため、各社のリフォーム事業は今後さらに拡大していきそうだ。(提供: リフォーム産業新聞 2016年12月06日掲載)
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