2月1日からシティバンク・シンガポールの総合計預金残高(TRB)の最低基準が5000シンガポールドル(SGD)から1万5000SGD(約40万円から120万円)に引きあげられるほか、口座維持手数料も10SGDから15SGD(約803円から1204円)に値上がりする。

ターゲット層を富裕層に絞りこむことで事業の効率化を図り、顧客の資産に応じたサービス提供を目指す。

顧客の資産に応じたサービスの提供、料金体系の簡潔化

シティバンクの最新の「料金ガイド」によると、新たな利用基準はクレジットカード口座をのぞく、シンガポールの全シティサービス(バンキング、シティ・プライオリティ、シティ・ゴールドなど)に適用される。TRBの対象となるのは通常の預金口座、投資口座、担保付貸付口座だ。

シティは引きあげの理由を顧客サービス向上の一環だとしており、顧客の資産に応じたサービスの提供が実現すると同時に、顧客にとっては理解しやすい料金体系に調節可能である点を主張している。

顧客獲得戦で多数のライバル大手が「包括的金融戦略」に走る中、富裕層路線を露骨に意識した戦略が逆効果に働きかねないとの懸念は一切見られない。シティの広報部がザ・ストレーツ・タイムズ紙に語ったところでは、新基準導入の発表以来、基準を満たすように預金を増額する顧客が増えているという。

ムーディーズのシニア・アナリスト、サイモン・チェン氏は、今回のシティのような動きはけっして驚きに値しないとコメントしている。少額の預金とともに長期間にわたり放置される貯蓄口座が多いが、銀行側にとっては管理コストだけがかさむ。利益よりも維持コストで赤字になるというケースもある。

金融市場リサーチ会社、バリュー・ペンギンのアナリスト兼アドバイザー、ダクジュー・カン氏は、シティ・シンガポールが利益率への圧迫を感じているか、あるいは競争力に自信があるかのいずれかであると推測。関連性については不明だが、数か月前からシンガポールのクレジットカード市場に、手数料や金利の値上げが目立ち始めたと指摘している。
昨年超富裕層の割合が北米を上回ったアジア地域の中でも、シンガポールにおける富裕層拡大の勢いは目を見はるものがある。シティの戦略は期待どおりの効果をあげると予想される。(ZUU online 編集部)