部下,教育,指導,叱責
(写真=PIXTA)

厳しく叱責しても堪(こた)えない。誘いを断っても通じない。むしろ「期待されてる証拠」「たまたま都合がつかなかっただけ」などと都合よく解釈し、態度や行動を改めない……。そんな人はどの職場にも1人はいるだろう。

よく言えばポジティブだが、「もっと真剣に取り組んでほしい」「仕事外で付き合いたいほど好きではない」といったこちらの意図が通じないので非常に厄介な存在である。なかなか対処が難しいが、彼・彼女らが何事も都合よく解釈をする3つの理由を知ると、その対処法も見えてくる。

ショックから自分を守る、防衛機制

1つ目の理由は、自分の心を守るためだ。実は人には、そのまま受け止めるには辛いショックに出会った場合、無意識的に自分を守ろうとする、防衛機制と呼ばれる心理作用がある。恋人にフラれた時、相手の悪い所ばかり考えたり、「元々別れるつもりだった」と友人に話したりした経験は誰しもあるだろうが、内心はひどく辛かったはずだ。

昨年末SMAPが解散した際、中居正広さんのジェスチャーはファンへの「またね」のサインだと話題になったが、これも防衛機制の典型である。

怒られたり誘いを断られたりといった、社会に出れば当たり前に起こることで防衛機制が働くのは、打たれ弱い証拠である。堪えていないように見えて、内心は人一倍傷ついているのだ。あまり叱られたことがなかった、過去に失敗を乗り越えられなかったタイプは、精神的に弱いことが多い。

このタイプは、些細なことでも頭の中では「嫌われた」「取り返しがつかない」と捉えてしまう癖がある。最終的には本人が思考の癖を改善し、打たれ強くなるしかないのだが、そのサポートの意味でも接し方に一工夫してほしい。厳しいことはなるべく穏やかな口調と表情で伝え、それでも足りないようであれば改善策を一緒に考えてあげるところから始めるのが良いだろう。

また誘いを断る際には、感謝や本当は行きたいなど一言添えると安心してくれるはずだ。

頑張りたくない自分を正当化

2つ目は、努力の回避である。本当は一層仕事に励まなければならないことや、大して好かれてないといったことも分かっているが、認めると色々と面倒だから、気づかないフリをしたい。そうした目的で、自分にとって都合よく解釈する人も実は多い。

叱責されたケースで言えば、仕事への更なる努力を求められていることは分かっているが、頑張る気はない。とはいえ、本音を言えばさらに怒られる。それも面倒なので、「期待の表れだからこのままで大丈夫」と思っておこう。頭の中では、こうした考えが起きているのだ。

このタイプには、都合のいい解釈などできないよう明確に要求を伝えれば努力させることは可能だが、あまりお勧めはできない。

というのも、うつになるリスクが高いのだ。ここ数年、「休職中に海外旅行に行く」など、働けないが遊びは問題なく楽しめる、これまでのイメージとは異なるうつが増えているが、罹患するのは仕事にあまり意欲的でない人や、努力が苦手な人がほとんどである。努力を回避したいのも、根底には頑張る経験の不足や、仕事への意欲の低さがある。無理強いすれば心は病んでゆく。

彼・彼女らに必要な努力をさせるには、負担の少ないよう、小さな目標を立てて上がることや、仕事の面白さを伝えることが効果的だ。そのためにも、こちらの話に耳を傾けてもらえるよう、まずは下ごしらえとして、仕事を超えた密な信頼関係を作って欲しい。

人は退屈を嫌う

意外に思われるかもしれないが、3つ目の理由は退屈しのぎである。これは、仕事よりも人間関係で多く見られる。人は本来、なんの刺激もない、誰にも相手にされていない状態を苦痛に感じ、刺激を求めるものである。

冒頭で挙げた「誘いを断ってもまたしつこく誘われる」ケースで考えてみよう。仕事にも慣れ、社内の人間関係も落ち着いている。特に不満はなくても、どこか退屈な毎日。これを打破しようと誰かを誘うのだが、断られること自体は良くても、「忙しくて時間がない」「そこまで密に付き合いたくない」といったところまで受け入れてしまうと、もう誘えなくなってしまうので、都合よく「たまたまタイミングが悪かった」と思い込むのである。

これは無意識にやってしまうことが多い。過去の恥を晒すようだが、私も昔、職場の女性とたまたま目が合い、ニコッとされただけで「自分に気があるのでは」と解釈し、何度かアプローチしたことがある。まったく相手にされずショックを受けたが、思い返すと仕事も職場の人間関係も落ち着き、どこか刺激が不足していた頃だった。

退屈しのぎ型への対処はシンプルだ。例えば、負担になりすぎない程度の仕事を頼んだり、趣味になりそうなものをいくつか紹介したりする。人に絡む以外の方法で退屈しのぎをしてもらえるよう考えれば良い。

都合よく解釈する人には、そうしなければ困る理由が必ずあるものだ。鬱陶しく感じるだろうが、感情的にならず、どの理由に当てはまるか見極めてみてはいかがだろうか。(藤田大介 DF心理相談所 代表心理カウンセラー)