実質消費支出は前月比では3ヵ月連続の減少
総務省が1月31日に公表した家計調査によると、16年12月の実質消費支出は前年比▲0.3%(11月:同▲1.5%)と10ヵ月連続で減少したが、減少幅は前月から縮小した。ほぼ事前の市場予想(QUICK集計:前年比▲0.6%、当社予想は同▲0.5%)通りの結果となった。前月比では▲0.6%(11月:同▲0.6%)と3ヵ月連続で減少した。月々の振れが大きい住居、自動車などを除いた実質消費支出(除く住居等)は前年比▲1.5%(11月:同▲1.9%)、前月比▲2.1%(11月:同▲0.7%)となった。
実質消費支出の動きを項目別に見ると、交通・通信(前年比11.2%)、教育(同14.5%)は前年比二桁の高い伸びとなったが、生鮮野菜を中心とした物価上昇が続く食料が前年比▲3.2%と5ヵ月連続の減少となったほか、家具・家事用品が前年比▲8.0%と大きく落ち込んだ。10項目中5項目が増加、5項目が減少した。
実質消費水準指数(除く住居等、季節調整値)は前月比▲1.2%(11月:同▲1.8%)と3ヵ月連続で低下し、10-12月期では前期比▲1.8%(7-9月期:同▲0.5%)と2四半期連続で低下した。同指数は16年度入り後持ち直していたが、夏場以降は天候不順や生鮮野菜高騰の影響もあり弱い動きとなっている。
乖離する需要側統計と供給側統計
家計調査以外の12月の個人消費関連指標を確認すると、商業動態統計の小売販売額は前年比0.6%と2ヵ月連続で増加したが、11月の同1.7%から伸びが大きく鈍化し、前月比では▲1.7%(11月:同0.2%)と大きく落ち込んだ。物価上昇分を割り引いた実質ベースの季節調整済・販売額指数(当研究所による試算値)は前月比▲1.5%の大幅低下となったが、10-12月期では前期比1.2%(7-9月期:同1.2%)と2四半期連続で上昇した。
百貨店売上高(日本百貨店協会)は前年比▲1.7%(店舗調整後)と10ヵ月連続の減少となったものの、11月の同▲2.4%から減少幅が縮小した。16年4月以降、減少が続いていた外国人観光客向けの売上高が前年比8.3%と9ヵ月ぶりに増加に転じた。
また、12月の自動車販売台数(軽自動車を含む)は前年8.1%と11月の同8.8%に続き高い伸びとなり、季節調整値(当研究所による試算値)では前月比1.0%と3ヵ月連続で増加した。新型車投入効果もあり、自動車販売は好調に推移している。さらに、外食産業売上高は前年比3.3%と4ヵ月連続で増加し、11月の同1.7%から伸びを高めた。家計調査以外の消費関連指標の多くは消費の持ち直しを示すものとなっている。
家計調査の消費支出は夏場以降弱い動きが続いているが、販売側(供給側)の統計は底堅さを維持している。雇用所得環境の改善傾向が続いていることと合わせて考えれば、個人消費は持ち直しの動きが続いていると判断される。ただし、物価上昇に伴う実質所得の低下が消費の下押し要因となっていることには注意が必要だ。
12月の家計調査では、生鮮野菜の購入単価(平均価格)は前年比18.2%の高い伸びとなり、購入数量が同▲5.6%落ち込んだ。また、購入数量の減少にもかかわらず価格高騰によって生鮮野菜の支出金額が前年比11.5%の高い伸びとなり、その他の消費の抑制につながっている。
17年1月の東京都区部の消費者物価指数では、生鮮野菜が前年比12.1%(16年12月:同22.5%)となり上昇が一服しつつあるが、ガソリン、灯油が前年比で二桁の伸びとなるなど、今後はエネルギー価格の上昇が消費者物価の押し上げ要因となる。引き続き物価上昇による実質所得の低下が個人消費を下押しすることが懸念される。
斎藤太郎(さいとう たろう)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部
経済調査室長
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