貿易収支が2年4ヵ月ぶりに前年比で悪化

財務省が2月20日に公表した貿易統計によると、17年1月の貿易収支は▲10,869億円と5ヵ月ぶりの赤字となり、赤字幅は事前の市場予想(QUICK集計:▲6,293億円、当社予想は▲6,679億円)を大きく上回った。輸出は前年比1.3%と2ヵ月連続で増加したが、12月の同5.4%から伸びが鈍化する一方、輸入数量の伸びが高まったことに加え、原油安、円高の一巡から輸入価格が上昇に転じ、輸入金額が前年比8.5%(12月:同▲2.6%)と2年1ヵ月ぶりの増加となったため、貿易収支は前年同月に比べ▲4,392億円の悪化となった。貿易収支が前年よりも悪化したのは14年9月以来、2年4ヵ月ぶりとなる。

輸出の内訳を数量、価格に分けてみると、輸出数量が前年比▲0.3%(12月:同8.4%)、輸出価格が前年比1.6%(12月:同▲2.7%)、輸入の内訳は、輸入数量が前年比6.2%(12月:同3.6%)、輸入価格が前年比2.2%(12月:同▲6.0%)であった。

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原数値の貿易収支は5ヵ月ぶりの赤字となったが、1月は正月休みの影響で輸出量が少なく貿易赤字になりやすいという季節性がある。季節調整済の貿易収支は1,555億円と15ヵ月連続の黒字となり、基調としては貿易黒字が継続している。ただし、原油価格の上昇によって輸入の伸び(前月比3.7%)が輸出の伸び(前月比0.7%)を大きく上回ったため、貿易収支の黒字幅は12月の3,275億円から縮小した。

IT関連輸出の伸びが大きく鈍化

1月の輸出数量指数を地域別に見ると、米国向けが前年比▲5.1%(12月:同5.2%)、EU向けが前年比▲2.7%(12月:同3.5%)、アジア向けが前年比4.2%(12月:同13.4%)となった。

季節調整値(当研究所による試算値)では、米国向けが前月比▲8.5%(12月:同▲1.9%)、EU向けが前月比▲4.8%(12月:同▲1.3%)、アジア向けが前月比▲7.7%(12月:同7.3%)、全体では前月比▲1.7%(12月:同▲0.1%)となった。

1月は主要3地域向けの輸出がいずれも前月比でマイナスとなった。1月は中華圏の春節の影響で振れが大きくなりやすい点には注意が必要だが、春節と直接関係がない欧米向けの輸出も大きく落ち込んでいる。

また、16年後半の輸出を大きく押し上げた自動車輸出(数量ベース)は前年比▲4.2%(12月:同2.0%)と減少に転じ、16年末にかけて急加速していたIT関連輸出(電算機類、半導体等電子部品、音響・映像機器、通信機、科学光学機器の合計)も伸びが大きく鈍化した。単月の動きだけで判断するのは尚早だが、輸出の牽引役となってきた自動車、IT関連に変調の兆しが見られることは要注意だ。

16年10-12月期のGDP統計では財貨・サービスの輸出が前期比2.6%の高い伸びとなり、プラス成長の主因となったが、17年1-3月期は輸出の伸びが大きく低下する公算が大きい。一方、輸入は持ち直しつつあるため、外需が成長率の押し下げ要因となる可能性もあるだろう。

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斎藤太郎(さいとう たろう)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 経済調査室長

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