1月の生産は事前予想を大きく下回る

経済産業省が2月28日に公表した鉱工業指数によると、17年1月の鉱工業生産指数は前月比▲0.8%(12月:同0.7%)と6ヵ月ぶりに低下し、先月時点の予測指数の伸び(前月比3.0%)、事前の市場予想(QUICK集計:前月比0.4%、当社予想は同▲0.3%)を大きく下回る結果となった。出荷指数は前月比▲0.4%と2ヵ月連続の低下、在庫指数は前月比0.0%の横ばいだった。

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1月の生産を業種別に見ると、世界的なITサイクルの改善を受けて電子部品・デバイスは前月比5.7%と好調を維持したが、新型車投入による増産の反動などから輸送機械が前月比▲4.7%と大きく落ち込んだほか、化学(除く医薬品)(前月比▲3.5%)、はん用・生産用・業務用機械(同▲1.7%)など、速報段階で公表される15業種中12業種が前月比で低下(3業種が上昇)した。

財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷指数(除く輸送機械)は16年10-12月期の前期比3.3%の後、17年1月は前月比0.7%となった。また、建設投資の一致指標である建設財出荷指数は16年10-12月期の前期比2.3%の後、17年1月は前月比▲1.8%となった。

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16年10-12月期のGDP統計の設備投資は前期比0.9%と2四半期ぶりの増加となったが、15年10-12月期以降、増加と減少を繰り返しており、現時点では一進一退を脱していない。ただし、円高を主因として急速に落ち込んだ企業収益はすでに最悪期を過ぎている可能性が高く、設備投資は今後持ち直しに向かうことが見込まれる。

消費財出荷指数は16年10-12月期の前期比3.4%の後、17年1月は前月比▲1.9%となった。耐久消費財(前月比▲4.1%)、非耐久消費財(前月比▲0.8%)ともに前月比で低下した。1月の消費財出荷は低調だった輸出向けが下押ししており、必ずしも国内消費の低迷を反映していない可能性が高い。消費全体の基調を判断するためには3/3公表予定の1月の家計調査の結果をみる必要があるが、すでに公表されている業界統計、本日公表された商業動態統計の動きを見る限り、個人消費は持ち直しの動きが続いていると考えられる。

1-3月期の生産は10-12月期から大きく減速する公算

製造工業生産予測指数は、17年2月が前月比3.5%、3月が同▲5.0%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(1月)、予測修正率(2月)はそれぞれ▲2.0%、0.6%であった。
予測指数を業種別にみると、2月は予測調査が実施されている全ての業種が前月比で上昇、3月は情報通信機械以外の業種が全て前月比で低下となっている。基調をみるためには2月、3月を均してみる必要があるが、全体として16年後半の勢いが鈍化していることは確かだろう。

これまで生産の牽引役となっていた輸送機械、電子部品・デバイスのうち、輸送機械は1月の輸出が落ち込んだことに加え、新型車投入の反動もあって、増産が一服している。一方、電子部品・デバイスの生産計画は2月が前月比14.9%、3月が同▲12.1%と振れが大きくなっているが、前年比では2月が36.1%、3月が25.1%と大幅増産計画となっており、引き続き好調を維持していると考えられる。

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17年1月の生産指数を2、3月の予測指数で先延ばしすると、17年1-3月期は前期比0.8%となるが、生産計画が大きく下方修正される傾向を考慮すると、4四半期ぶりに前期比でマイナスとなる可能性もある。1-3月期が減産となったとしても16年7-9月期が前期比1.3%、10-12月期が同2.0%と高い伸びが続いた反動もあるため、生産の回復基調が崩れたとは言えない。

世界的な製造業サイクルの持ち直しは継続しているため、日本の生産がこのまま失速するリスクは低いだろう。ただし、16年後半のように日本の鉱工業生産が世界全体の生産活動を上回るペースで増加する局面は過ぎた可能性が高い。国内需要が依然として力強さに欠けていることも踏まえると、先行きの生産の回復ペースは緩やかなものとなることが予想される。

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斎藤太郎(さいとう たろう)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 経済調査室長

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