小回り3カ月

来週15日は「スーパー・イベント・デー」である。オランダ総選挙、FOMC、米国のデットシーリング(債務上限)期限、米国予算教書提出。もうひとつある。米国長期金利とドル円がピークをつけた12/15から丸3カ月が経過する。相場の世界では「小回り3カ月」というひとつのサイクルがある。そろそろ相場の潮目が変わるタイミングに来ている。

外国為替市場ではドル円相場が115円の節目を抜けるのは難しいと思われていたが、抜けてきた。ドル円は一目均衡表の雲のねじれにさしかかり、雲に沿って上へ抜け出ようとしている。雲の上限がまさに115円だ。ここからはドルの上値は重くない。

(出所:Bloomberg)

米国10年債利回りは2.6%へ

最大の支援材料は、米国長期金利が再び上昇してきたことだ。前回のレポートで、「米国金利は上がらず、年初来横ばいだが、決してレンジを切り下げてはいない。レンジを切り下げない、ということは、米国債を手掛ける投資家やトレーダーが見方を大きくは変えていない」と述べたが、再び彼らの債券売りが始まったようである。ビル・グロスが、「2.6%を越えたら債券相場は本格的な長期ベアマーケット入りする」と指摘した、その2.6%に顔合わせだ。明確にここを抜ければそれこそ相場の景色が一変するだろう。

(出所:Bloomberg)

金利上昇の背景はシンプルである。米国景気が強いからだ。米民間雇用サービス会社ADPが発表した2月の全米雇用リポートによると非農業部門の雇用者数が前月から29万8000人増と、市場予想(約19万人)を大幅に上回った。建設業が11年ぶりの増加幅となり、製造業は統計で遡れる2002年以降で2番目の伸びを記録した。

米連邦準備理事会(FRB)が1日発表した地区連銀経済報告(ベージュブック)は、米経済が2017年初めから2月中旬にかけて「緩やかに拡大した」との総括判断を示した。労働市場の逼迫が続き、一部地区では賃金上昇ぺースの加速がみられたと述べている。エンジニアやIT(情報技術)関連など技能を必要とする人材の不足が賃金を押し上げていると指摘する地区が多かったほか、建設、製造業などでの人手不足をあげる地区もあった。

前回のレポートでも述べたが、早晩インフレが加速してくるだろう。そのことを誰よりも気に懸けているのは物価の番人たるFRBであろう。来週のFOMCでは政策金利の見通しなどでサプライズがあるものと期待している。それが長期金利を一段と押し上げ、ドル円相場は円安ドル高トレンドへ回帰するだろう。

広木隆(ひろき・たかし)
マネックス証券 チーフ・ストラテジスト

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