企業において「リスクマネジメント」は重要な要素である。中でも予期せぬ事態が発生した場合に備え、事前に緊急時対応策として構築しておく手順や対応方法を「コンティンジェンシープラン」という。これは自然災害やテロなどの不測事態をスムーズに乗り越えるための企業バイブルになっている。

コンティンジェンシープランはBCP(事業継続計画)を立案するうえでも、最初に取り組むべき核となる計画案だ。ITによるビジネスの加速やグローバル化の影響で、企業が不透明な状態で脅威にさらされるケースがさらに多くなってきている。

コンティンジェンシープランの焦点は緊急事態が発生した直後に対応できるかどうかで、企業への被害を最小限に抑えることを最大の目的としている。今回は、マネジメントにおけるコンティンジェンシープランの重要性とそのポイントを紹介しよう。

マネジメントの重要性

みなさんは、企業の「危機管理」についてどう考えているだろうか。近年、緻密化や相互依存度が高まったことで、企業を取り巻くリスクが増大し、その形も多様化している。そのため、企業でのマネジメントの重要性は、今や高度成長期時代とは比べ物にならないほど高まっているのだ。

マネジメント・カテゴリには品質マネジメント、人材マネジメント、環境マネジメント、ITマネジメント、プロジェクトマネジメント、リスクマネジメントなどがあげられる。どれをとっても企業にとっては不可欠なものだが、損益の回避を図るためのリスクマネジメントの重要性は特に高い。コンティンジェンシープランを含めたリスクマネジメントの徹底こそが、企業の未来を守る礎だといえるだろう。

ITによるビジネスの加速やグローバル化の影響

ITテクノロジーの変化によるビジネス環境の移り変わりや、急速に進むグローバル化は、マネジメント分野において経営者に新たな課題と問題をもたらしている。

企業内では、情報セキュリティの破壊やサイバーテロリズムによる不安が増加している。加えて、急速なグローバル化により、国内はもちろん、海外におけるビジネス環境そのものの不透明性も増している。

それを裏付けるように、リスクマネジメントを調査する機関であるデロイトトーマツ企業リスク研究所の「企業リスクマネジメント調査(2015年版)」によると、優先すべきリスクを「海外拠点の運営に関わるリスク」と答えた人が46%でトップだったとしている。

これらを総合すれば、企業は目隠しの状態で一歩一歩突き進んでいくような危険な状態で、打開策としてのマネジメントが一刻も早く必要になっているのだ。

コンティンジェンシープランによるリスク回避手法、ポイント

企業での危機管理を徹底することは、企業の将来を支える根底となる。そのため、リスクマネジメントに不可欠なコンティンジェンシープランを策定して、非常事態のリスクを回避していく必要があるだろう。まずは、手順とポイントを順番に確認しよう。

1. 緊急事態の例を明確にする
緊急事態に備え、具体的に起こり得る事態を想定しシナリオを作成する。

● 輸入業者の場合
輸送中の貨物船が大型の台風により遅延、インドネシア近郊で停泊を余儀なくされた。商品は3週間後に迫ったインポートショーでのイベントグッズ。到着はおよそ1ヵ月後だと連絡が入った。

● 金融機関の場合
関東の顧客データが5万件流出してしまった。預金高、名前、住所、電話番号、家族構成などが含まれたデータで、朝からクレームの電話が鳴りやまない状態だ。

このように、いくつかのシナリオをあげてみよう。企業によって自然災害が背景だったり、テロリズム的な行為が原因だったりするが、豊かな発想で起こり得る事例をできるだけ細かく掲げることが重要だ。

2. 予想被害状況を立てる
緊急事態のシナリオをもとに、どのような被害が予想されるか仮立てする。会社にとって重要な経理書類や機密情報はどうなるのか、人(顧客や社員)への被害はあるのか、金銭的な被害はどれくらいになるのか、商品の損失や企業の稼働状況はどうなるのかなど、被害をできるだけ具体的に想定していこう。

3. 優先順位を決める
コンティンジェンシープランで最も重要なのが優先順位だ。緊急事態が起こった後、いくつかある「しなければならないこと」の中から、優先順位をつけて対応をしていくことが重要になる。最も重要なことから準備を始め、1週間、1ヵ月、3ヵ月、半年などそれぞれ期間的な目途をつける。

4. 経営者と社員の目標が一致するよう確認
コンティンジェンシープランでは、経営者と社員が同じ意識を持って緊急事態を回避することが重要だ。なぜなら、たとえ経営者だけではなく、社員の何人かが別の方向へ向かってしまうと敏速に機能しなくなってしまうからである。

緊急事態が起こった時は、全社一致団結して行動することが必要になる。日頃から社員教育やミーティングを通して緊急事態への姿勢を確認し、事態が起こってすぐにコンティンジェンシープランが実践できるように準備しておこう。(提供: 百計オンライン

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