コアCPIは2ヵ月連続のプラス

総務省が3月31日に公表した消費者物価指数によると、17年2月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比0.2%(12月:同0.1%)と2ヵ月連続で上昇し、上昇率は前月から0.1ポイント拡大した。事前の市場予想(QUICK集計:0.2%、当社予想も0.2%)通りの結果であった。

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生鮮食品及びエネルギーを除く総合は前年比0.1%(1月:同0.2%)、総合は前年比0.3%(1月:同0.4%)であった。

コアCPIの内訳をみると、電気代(1月:前年比▲5.6%→2月:同▲4.0%)、ガス代(1月:前年比▲7.4%→2月:同▲6.5%)の下落幅が縮小し、灯油(1月:前年比19.7%→2月:同29.8%)、ガソリン(1月:前年比11.2%→2月:同15.8%)の上昇幅が大きく拡大したことから、エネルギー価格の上昇率が前年比1.6%(1月:同▲0.8%)と2年2ヵ月ぶりにプラスに転じた。

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一方、テレビ、ビデオカメラなどの教養娯楽用耐久財の減少幅拡大(1月:前年比▲3.6%→2月:同▲4.2%)、宿泊料などの教養娯楽用サービスの上昇幅縮小(1月:前年比1.6%→2月:同0.9%)などがコアCPIを押し下げた。

コアCPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが0.12%(1月:▲0.06%)、食料(生鮮食品を除く)が0.16%(1月:0.14%)、その他が▲0.08%(1月:0.02%)であった。

東京都区部のコアCPIはマイナス幅拡大

17年3月の東京都区部のコアCPIは前年比▲0.4%(2月:前年比▲0.3%)と13ヵ月連続の下落となったが、下落率は前月から0.1ポイント拡大した。事前の市場予想(QUICK集計:▲0.2%、当社予想も▲0.2%)を下回る結果であった。

ガソリン(2月:前年比15.1%→3月:同21.2%)、灯油(2月:前年比16.4%→3月:同15.1%)が前年比で二桁の大幅上昇を続ける中、電気代(2月:前年比▲5.9%→3月:同▲3.6%)、ガス代(2月:前年比▲10.9%→3月:同▲8.7%)の下落幅が縮小したことから、エネルギー価格の下落率が2月の前年比▲5.1%から同▲2.5%へと縮小した。

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一方、家具・家事用品(2月:前年比▲0.4%→3月:同▲1.7%)の下落幅が大きく拡大したこと、被服及び履物(2月:前年比2.6%→3月:同0.9%)の上昇幅が大きく縮小したこと、携帯電話機(2月:前年比▲15.9%→3月:同▲26.6%)の下落幅が拡大したことなどがコアCPIを押し下げた。

東京都区部のコアCPI上昇率のうち、エネルギーによる寄与が▲0.13%(2月:▲0.27%)、食料(生鮮食品を除く)が0.07%(2月:0.09%)、その他が▲0.33%(2月:▲0.12%)であった。

コアCPI上昇率は夏場にかけてゼロ%台後半へ

円安、原油高の進展を受けて、全国のエネルギー価格は上昇に転じた。ガソリン、灯油の前年比上昇率は3月をピークに縮小に向かうが、原油価格の動きが遅れて反映される電気代、ガス代は17年度入り後に上昇率がプラスに転じ、夏場にかけて伸びを高めることが見込まれる。エネルギーによるコアCPI上昇率の押し上げ寄与は夏場にかけて0.5%程度まで拡大するだろう。

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また、既往の円高による物価下押し圧力は残っているものの、足もとのドル円レートはすでに前年とほぼ同水準となっており、夏頃からは円安が物価の押し上げ要因となることが見込まれる。

日銀が基調的な物価変動を把握するために重視している「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」の上昇率は低下傾向にあり、物価の基調は依然として弱いが、エネルギー価格の上昇、円高による下押し圧力の一巡などから、全国のコアCPI上昇率は夏場にかけてゼロ%台後半まで高まる可能性が高い。

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斎藤太郎(さいとう たろう)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 経済調査室長

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