仏大統領選を目前にひかえた国民戦線(FN)マリーヌ・ルペン党首が、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領とモスクワで会談を行ったことで波紋が広がっている。

ルペン党首が訪問先としてあえてこの時期にロシアを選んだ理由について、「融資目的」や「反EU思想の強調」「選挙支援」「対戦相手つぶし」など様々な憶測が飛び交っている。

グローバリズム、イスラム原理主義の脅威に対しロシアに協力要請

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(写真=Thinkstock/Getty Images)

ルペン党首が親露家であることは以前から知られていたが、今回の訪問では事前に会談相手が明かされておらず、単に「露議員との会談」として報じられていたことから、両者がクレムリンで固く握手を交わす姿は世間を大きく驚かせた。

プーチン大統領は「この会談が仏大統領選に影響を与えることは望んでいない」とする一方で、「しかしどの党の代表とでも交流する権利が我々(ロシア)にはある」と述べた

ルペン党首はロシアが世界的批判をうけているクリミア併合などをめぐるウクライナ問題に対し、「フランスとロシアの立場は一致している」とし、欧州連合(EU)の対露経済政策が不公平だと批判した。

またルペン党首はグローバリズムとイスラム原理主義を2大脅威と見なしており、これらの脅威に打ち勝つためにロシアの協力を要請。米新政権の誕生が「フランスの主権奪還を早める」ことへの期待も表明した。

過去にロシアから11億円の融資をうけたFN

ルペン党首とプーチン大統領の顔合わせは初めてとされているが、ここで再び浮上したのはロシアがEUつぶし目的でFNを含む「反EU勢力」に資金を提供していたという報道だ。

この事実が最初にメディアを騒がせたのは2014年。FNがファースト・チェコ・ロシアン銀行から940万ユーロ(約11億1578万円)の融資をうけているというものだった。当時は「プーチン大統領がEUを追いこみ、未来のEUの統率者と地盤を固めようとしている」などと報じられた。

ルペン党首は自国の金融機関が融資を拒絶したのを理由に、かつてロシアから融資をうけた事実を認めると同時に、今回の会談では「融資をめぐる発言はプーチン大統領からなかった」と、世間で憶測されているような「資金集め目的ではない」ことを主張した。

ルペン党首「プーチン大統領は主権国家と新しい展望の象徴」

経済的支援が目的でないのならば、エマニュエル・マクロン前経済相に次ぐ第2の有力候補とされるルペン党首は、なぜこの時期にロシアの首相と会談を行ったのだろう。

ルペン党首の狙いは世界の脅威とされるロシアとのきずなを深めることで、「強い統率者」としてのイメージを示そうとしたとの見方もある。「強い統率者の虚像」が国民を動かす力をもっていることは、トランプ大統領の例を見るまでもない。

会談後、ルペン党首はプーチン大統領を「主権国家と新しい展望の象徴」と評した。プーチン大統領はロシアの、トランプ大統領は米国の、ナレンドラ・モディ首相はインドの新たな指針となるとの見解を示した。

最有力候補として急浮上したマクロン前経済相の失脚画策?

もうひとつの推測はマクロン前経済相の失脚画策への協力要請だ。仏大統領選ではフランソワ・フィヨン元首相の不正給与スキャンダルを機に世論で独走していたルペン党首だが、ここに来て突然マクロン前経済相が支持率を伸ばし始めた。

フィヨン元首相もルペン党首に劣らず新露家として知られていることから、ロシアにとってはどちらが次期大統領になっても不都合はないはずだ。

実際のところ、マクロン前経済相の勢力が目につき始めた2月には、同性愛者との不倫疑惑報道が世間を騒がせ、マクロン前経済相は「ロシアによる偽ニュース」であることを主張した。

ルペン党首もプーチン大統領も会談の真相を語ることはないだろう。本当に後ろ暗いところのない「純粋な会談」であった可能性も否定できない。しかしルペン党首が主張する「両国の関係強化」だけが目的と受けとめるには、あまりにもタイミングに無理がある気がしてならない。(アレン琴子、英国在住フリーランスライター)

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