アメリカ合衆国は、東西に約4,500キロメートル、南北に約2,700キロメートルにわたる広大な面積を誇り、本土だけでも4つの時間帯に分かれている。それほど広大な国土を持つ国であるため、気候も地域によって大きく異なることは想像に難くない。気候や地域性を考えることで、アメリカへの投資の適性をより正確に判断することができるのではないだろうか。

気候や地域性から考える米国の住宅市場

America
(写真=V J Matthew/Shutterstock.com)

気候の違いと空室率の傾向から米国の住宅市場を考えてみよう。

1. 東海岸と西海岸の気候の違い

東海岸のほとんどの地域は温暖湿潤気候に属し、首都ワシントンD.C.やニューヨークの気候もこの温暖湿潤気候に分類される。はっきりとした四季の変化が見られるのが温暖湿潤気候の特徴である。地域によって若干の違いはあるものの、夏季に雨量が増えること、夏季は高温多湿になるのに対して冬期は乾燥することが多い。

西海岸北部は西岸海洋性気候、南部は地中海性気候に属する。これらの特徴は1年を通して温暖であることが特徴だ。カリフォルニア州南部においては、冬期の平均気温が10度を上回ることもある。日本最北端の稚内市よりもさらに北、北緯約47度に位置するワシントン州最大の都市シアトルにおける1月の平均気温は年によって異なるものの2〜3度といわれており、稚内市のマイナス5.2度(2016年1月・気象庁発表)と比べても高い。

2. 空室率の傾向

日本では空室率が上昇しているにもかかわらず、新規の貸家着工数は増加しており、依然として供給過剰の状態にある。国土交通省と財務省が管轄している住宅金融支援機構によると、2002年から2014年までの人口1万人あたりの住宅着工戸数は米国が43戸であるのに対し、日本が82戸とほぼ倍である。このような背景から日本では空き家の増加が問題となる一方、米国不動産全体における物件の空室率は減少傾向にある。米国の空室率減少の要因として考えられるのが人口増加だろう。アメリカでは依然として人口増加が続いているのだ。これは、人口減少局面に入った日本との大きな違いである。

次に、地域ごとに検討してみよう。米国不動産では沿岸部の空室率が低いのに対して内陸部の空室率が比較的高いのが特徴として挙げられる。この傾向は大都市にも顕著に表れている。例えば内陸に位置するシカゴにおける2015年の空室率は7.4%。アメリカ第3の都市であるにもかかわらず、その数字米国全体の空室率7.1%を上回る。ダラスは 8.3%とかなり高くなっている。2015年に空室率が低い都市は、ロサンゼルスとボストンで共に3.3%、続いてサンフランシスコの3.6%、シアトルの3.8%である。

ロサンゼルスの魅力

前述の通り、米国の大都市で空室率が最低水準にあるのがロサンゼルスだ。ロサンゼルスの魅力についてみていこう。

1.温暖で過ごしやすい気候

ロサンゼルスが位置する南カリフォルニアは、温暖な気候で知られている。ロサンゼルスは緯度34度に位置し、東京(緯度35度)とほぼ同じ緯度にある。気象庁によると、真夏の平均最高気温が25.9度、真冬の平均最低気温が10.3度であり、過ごしやすい気候であることが窺える。

2.様々な人にとって住みやすい地域

また、南側がメキシコに接しているカリフォルニア州は、様々な人種が集まり暮らしている。ロサンゼルス都市圏の人種構成を見てみると、ヒスパニック系が46.4%、白人が32%、アジア系が12.4%、アフリカ系が6.7%と、全米平均より白人が少なく、ヒスパニック系やアジア系の割合が多い。多様な文化を受け入れる土壌があるため、様々人種にとって住みやすい地域といえそうだ。

3.高い教育水準

ロサンゼルスが存するカリフォルニア州には55以上の大学と大学院があり、23万人以上の大学生が住んでいると言われている。優秀な大学には、優秀な学生が多く集まり、活気ある地域を構成している。

以上のような背景もあることから、全米屈指の空室率の低さを保っているといえる。

投資対象としての米国不動産

これらのデータを見ると、米国不動産は投資対象として検討する価値があるといえそうだ。特に空室率の低いカリフォルニア州、そして沿岸部に位置する大都市も投資対象としては悪くはなさそうである。米国不動産は東南アジアほど激しい価格変動が起こりづらい。また、米国全体が、不動産投資に重要なファクターである人口増加傾向にあることも見逃せない。投資対象として米国不動産を選択肢に加えてみることで、資産運用の可能性が大きく広がるのではないだろうか。 (提供: みんなの投資online

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