今月10日、国立社会保障・人口問題研究所が、平成27年の国勢調査結果が確定したことを受けて、「日本の将来推計人口(平成29年推計)」を公表した。2065年には総人口が8,808万人と3割減少し、15歳から64歳の生産年齢人口は4,529万人と4割以上低下する*。50年後には人口が大幅に減少し、「働き手」が激減することは明らかだが、われわれはこの推計結果をどのように読み解くべきだろうか。

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(写真=PIXTA)

「人口統計」をみると、50年前の高齢化率は6.3%、2015年現在26.6%になり、50年後には38.4%に達する。これまで日本社会の高齢化がいかに急速で、今後も高齢化が進むことがわかる。しかし、この半世紀の間に高齢者をめぐる社会経済環境は一変し、さらに今後半世紀の間にも大きく変化するだろう。その時、65歳以上を高齢者とする年齢区分が果たして妥当なものなのだろうか。

今年1月、日本老年学会が高齢者の定義を65歳以上から75歳以上に引き上げる提言をまとめた。平均寿命が大幅に延び、加齢による身体的機能の変化の出現が遅くなるなど、高齢者の状況が著しく変わったからだ。現在の年金などの社会保障制度も、高齢者を65歳とすることを前提にしたものだが、雇用延長などで65歳以降も働く人が増え、その見直しが必要になるだろう。

また、15歳から64歳を「生産年齢人口」というが、今の日本では高等学校等への進学率がほぼ100%に近づき、18歳までは生産年齢人口とは言いがたい状況だ。高等教育を受ける人が増えて就学期間が長くなる一方で、高齢化により就労期間が延び、統計上の生産年齢人口も現実的には5歳引き上げて20歳から69歳と考えた方が実態に即しているのではないだろうか。

同研究所資料集によると、2015年の「50歳まで一度も結婚していない人の割合」である生涯未婚率は、男性23.4%、女性14.1%で、近々男性の4人にひとりは生涯独身ということになる。しかし、結婚の形が多様になり、事実婚や同性婚のような家族像を描く人もいる。50歳以降の初婚件数も増えており、今後も50歳まで未婚の人を「生涯未婚」と定義することが適当だろうか。

「人口統計」はあくまでも人口データを提供するものだ。ライフスタイルの多様化の中、それを基にどのような社会像を描くかが重要だ。少子高齢化、人口減少、世帯の縮小など、半世紀後の高齢者や家族の概念は大きく変化し、今後の政策決定に大きな影響を与える。長期時系列データは社会構造の変化を浮き彫りにすると同時に、統計指標自体の時代状況との乖離が新たな時代の変化を映し出す。われわれは、「統計データ」を“深読み”することが求められている。

* 「出生中位、死亡中位」推計による。

土堤内昭雄(どてうちあきお)
ニッセイ基礎研究所 社会研究部 主任研究員

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