要旨

  1. 今月23日に第1回投票が迫るフランス大統領選挙の混迷の様相が深まっている。
  2. 5月7日の第2回投票(決選投票)は、中道のマクロン候補と極右の国民戦線のルペン候補の対決となりマクロン氏が勝利する見通しだ。しかし、左翼党のメランション候補の支持の急伸で、極右対極左の決選の可能性が浮上するなど、結果は予断を許さない。
  3. 主要な候補者の公約は結果を占う上でも、経済や金融市場に及ぼす影響を考える上でも重要だ。ルペン対マクロンの決選投票は「愛国主義対グローバリズム」という対立軸が強調されるおそれがある。都市対農村、エリート対非エリートの様相もあるが、世代間の対立という傾向は強くはない。年齢層による濃淡ないことはマクロン氏の強みだ。
  4. 市場は、愛国主義とEUやユーロの離脱を掲げるルペン大統領の誕生を警戒しているが、法と議会が壁となるため、公約を直ちに、そのままの形で実現することは難しい。
  5. 「EUの残留か離脱かを問う国民投票」のカードをちらつかせながら、EUにフランスに有利な条件を引き出すことを、当面の目標とするだろう。ドイツとともに統合の枠組み作りを担ってきたフランスが、次々とEUの政策に反旗を翻し、主権の奪還を求めるような事態となれば、EUは立ち行かなくなるおそれがある。
  6. トランプ氏の勝利後の株高、ドル高、金利高というトランプ・ラリーのようなルペン・ラリーはあり得ない。世界や日本の経済への持続的な影響もないだろう。