「米国・英国に続くグローバリズムとポピュリズムの対決」として世界中の注目を集めていた仏大統領選だが、有権者の3分の1が投票せずという、フランスにおける政治不信の現状が浮き彫りになる結果となった。
終盤の予想どおり、マクロン大統領が65.82%の支持を得て勝利をおさめたものの、右派政党国民戦線の党首、ルペン氏が33.94%の支持を集めた事実も無視できず、一国が大きく分断していることが伝わってくる。
共和党議員「仏大統領がEUで権力を得ることはない」
マクロン大統領の勝利は、総体的に「安全牌」と受けとめられている感が強い。EU離脱や移民排除など、過激な政策をスローガンにかかげていた対立候補、ルペン氏が勝利した場合のインパクトと比べれば、どの対立候補が残っていても同様の反応が予想されたことだろう。
「右でも左でもない自由な新しい政策」を打ちだして勝利をおさめたマクロン大統領だが、実際には「新政権誕生で仏やEUが大きく変わる」といった期待や不安は、皆無に近いと見られている。
マクロン大統領の唱える多文化主義・弱者保護・欧州統合推進といった政策は、EUが目指す方向性とおおむね一致しており、非常に保守的な色合いが濃い。
共和党のブルーノ・バーナード議員 は、「これまでの仏大統領がそうであったように、マクロン大統領もEU内で突出した権力を得る可能性はない」「フランスはEUに反旗を翻せるほど強くはない」と、実質上EUを牛耳るメルケル独首相と対等に意見を戦わせるような強さが、自国の新大統領に備わっていない点を指摘した。
メルケル首相が選挙運動中からマクロン大統領を支援していたことは、度々報じられていた。選挙後も「マクロン大統領の勝利は団結した強力なEUの勝利だ」と、心から祝福する声明を発表するなど、反EU勢の敗北に安堵の胸をなで下している。