オバマ前大統領のアドバイザーも務めた著名エコノミスト、モハメド・エラリアン氏が、「根本的な方向転換を行わないかぎり、2年以内に経済危機が訪れる」 との警告を発した。
暗雲の晴れないBrexit、低金利、若者の失業率、所得格差など、複数の要因が複雑に絡み合い、2008年の経済危機以降、作為的に生みだされた「人工的な市場の繁栄」が、終幕に近づいていると、市場の動きを冷静に観測している。
Brexit交渉の停滞にしびれをきらす市場
世界経済の行方に関しては、専門家の間でも様々な意見が飛び交っている。最大の関心は「経済危機に向かって前進しているのか、あるいは回避することができるのか」の一点だ。
一流のエコノミストの中でも、最も経験と知識のある人物として知られているエラリアン氏は、ネガティブ派の一人だ。オックスフォード大学とケンブリッジ大学で経済学を学んだ後、IMF(国際通貨基金)や世界最大の資産運用会社、PIMCO(パシフィック・インベストメント・マネジメント・カンパニー)での経験を活かして、現在は独Allianzでチーフ・アドバイザーの地位に就いている。
エラリアン氏が懸念する次の経済危機の引き金の一つは、Brexitである。離脱を決定づけた昨年6月の国民投票から1年が経過した現在も、実質上は何の交渉も取りまとめられていない。
政治家は市場の混乱を回避するために、意図的に離脱交渉プロセスを遅らせているが、それとともに市場の動きも鈍化している。「そうした停滞に市場自体が苛立ち始め、投資家は以前にも増して交渉の行方に敏感になっている」というのが、エラリアン氏の見解だ。