企業にとって、さまざまなお客様の声や意見は、参考にすべき有用なものの一つです。しかしいわれのない「クレーム」は、対応次第では企業の評判にも大きな影響を与えうるリスクのある問題の一つでもあります。SNSなどが発達した現在、日本企業の多くを占める中小企業もこうした問題に無関係ではいられません。

最近では社外だけではなく、時として内部の社員が横暴なクレーマー、いわゆる「モンスター社員」となってしまい、経営に少なくない影響を与えているケースが増加傾向にあります。このモンスター社員の存在に、組織としてどう向き合っていくべきなのでしょうか。

「モンスター社員」が生まれる背景と問題点

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(写真=Ollyy/Shutterstock.com)

「モンスター社員」とはそもそも、どのような存在なのでしょうか。明確な定義はありませんが、一例として次のようなケースが挙げられます。

・ 自分の立場や処遇に不満と持つと、本人、もしくはその保護者、配偶者などが会社にその不当性について文句を言う
・ 福利厚生や有給休暇などの就労者側の権利を最大限行使するわりに、本業のタスクを完遂しない
・ 繁忙期などに周りの状況を考慮せず休暇を取得し、それに対する正当な意見には「働く側の権利」を取り上げ、対抗措置を講じる
・ 同僚やチームに、モラルハラスメントやパワーハラスメントを行う

自己の一方的で正当性のない主義主張によって組織の活動にダメージを与える存在で、周りの上司や同僚と円滑にコミュニケーションを取ることが困難な人材です。これらがいわゆる「モンスター社員」といわれています。

確かに、昔から組織には大なり小なり、足並みを乱す人材は存在しました。ただ、モンスター社員のように、モラルや一般常識が通じず「悪質クレーム」のような負の影響をもたらす人材は、近年顕著に見られるものです。

この背景には、コンビニエンスストアやレストランなどの公共施設で頻発している、理不尽なクレーム・謝罪を求める「行き過ぎた消費者(カスタマー)主義」などが目立ち始めたことと、少なくない相互関係があると言われています。いわゆる「モラルの低下」「相手を慮る姿勢の欠如」で、これは少し前から社会問題化している「モンスターペアレント」なども同様です。

彼らの「主張」「意見」は、一般的には「自分勝手で理不尽なわがまま」に値しますが、彼らの中では主張すべき意見として捉えられており、一般的なモラルと離れたところに位置しているのです。

期待をかけて自社に招き入れた人材がこのような行動をとってしまうことは、経営者としてはあまり想定したくないことかも知れません。ですが、トラブルがエスカレートして実際に訴訟などにつながってしまったケースも現実に存在しているのです。

モンスター社員対策=合理的な人事評価制度の構築と見直し

モンスター社員の存在は、企業の経営に影響を与えうるリスクと捉えるべきでしょう。経営者や人事サイドは、組織と経営の健全な状態の維持を目的に、防衛策を用意する必要があります。特に「合理的な人事評価制度」を構築することが重要になってきます。

まず、このような社員に対しては「じっくりと主張を聞く」段階を設けましょう。その後、社員が落ち着いて話ができるタイミングで、自社の制度に照合して明確に「できること・できないこと」について、組織としての見解を明確にします。そのために、人事評価制度の運用ルールとして、定期的な面談を実施することを明記しておくとよいでしょう。

その際、雇用条件とパフォーマンスの乖離による「マイナス査定」「降格」といった、社員にとってもすぐには受け入れがたい事項については、事前に合理的な基準を構築・整備し、社内に周知された形跡が残っているかが重要です。以下のような観点で、自社の制度やその運用をチェックしてみましょう。

1.評価項目や評価基準が明確となっているか
2.評価基準が合理的なものとなっているか
3.評価方法が適切なものとなっているか
4.評価者によるばらつきがないか
5.評価結果に著しい偏りがないか

「自分の会社に限って」と思わず、適切な準備を

「自分の会社の社員と、そんな争いが起きるなんて」と感じることもあるかも知れません。しかし、トラブルが発生する前に防衛策を実行に移しておくのは経営者の仕事と言えるでしょう。ぜひ、適切な準備をすすめておきたいものです。(提供: あしたの人事online

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