結果の概要:住宅着工、許可件数ともに前月から減少、市場予想も下回る

5月16日、米国センサス局は4月の住宅着工、許可件数を発表した。住宅着工件数(季節調整済、年率)は117.2万件(前月改定値:120.3万件)と、121.5万件から下方修正された前月改定値からさらに減少、市場予想の126.0万件(Bloomberg集計の中央値、以下同様)も下回った(図表1、図表3)。

住宅着工に先行する住宅着工許可件数(季節調整済、年率)は、122.9万件(前月:126.0万件)と、こちらも前月を下回ったほか、市場予想の127.0万件も下回った(図表2、図表5)。

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結果の評価:住宅着工、許可件数の落ち込みは一時的と判断

住宅着工件数の伸びは、前月比▲2.6%(前月:▲6.6%)と前月からマイナス幅は縮小したものの、2ヵ月連続の減少となった。これは、2月の暖冬により大幅に増加した反動による影響が残っていると考えられる。一方、前年同月比では+0.7%(前月:+6.6%)と5ヵ月連続のプラスとなるなど、回復基調が持続している(図表3)。

住宅着工件数(前月比)を戸建てと集合住宅に分けてみると、戸建てが+0.4%(前月:▲5.1%)とプラスに転じた一方、集合住宅は▲9.2%(前月:▲9.7%)と4ヵ月連続のマイナスとなった。

一方、住宅着工件数(前月比)の地域別寄与度は、西部が+4.8%ポイント(前月:+1.2%ポイント)、中西部も+0.2%ポイント(前月:▲1.3%ポイント)とプラスを維持したものの、南部が▲0.8%ポイント(前月:+9.6%ポイント)、北東部が▲3.5%ポイント(前月:▲2.8%ポイント)とマイナスになった(図表4)。

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住宅着工の先行指標である住宅着工許可件数は、前月比が▲2.5%(前月:+3.4%)と、着工件数同様マイナスとなった。一方、前年同月比は+5.7%(前月:+13.0%)と、前月からプラス幅は縮小したものの、5ヵ月連続のプラスとなった(図表5)。

住宅着工許可件数(前月比)を戸建て、集合住宅でみると、戸建ては▲4.5%(前月:▲1.0%)と2ヵ月連続のマイナスとなった一方、集合住宅は+1.4%(前月:+12.7%)とこちらは2ヵ月連続でプラスを維持した(図表6)。

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一方、建設業者のセンチメントを示す住宅市場指数は、5月が70(前月:68)と、住宅着工、許可件数の動きとは対照的に、前月から改善した(図表7)。とくに、今後6ヵ月の新築住宅販売見込みは79(前月:75)と、05年6月(80)に次ぐ水準に改善した。また、住宅市場を取り巻く環境も、雇用不安の後退、住宅ローン金利の安定と住宅市場には追い風となっている。

このため、足元で住宅着工、許可件数のモメンタムは下がっているものの、減速は一時的と判断している。

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窪谷浩(くぼたに ひろし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 主任研究員

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