世界最大の資産運用会社バンガードが、顧客が直接投資できるシステムでコストを大幅に削減し、ファンド手数料と口座維持費を合わせてもわずか0.30%未満という、低コストのオンライン小口投資サービス を英国で始めた。

最低残高、利用料金ともにロボアドより低額。投資家の注目を集めそうだ。

「顧客に少しでも利益を還元したい」という発想から誕生

バンガードの新しいオンライン投資では、ファンド手数料が0.14%、口座維持費が0.15%。25万ポンド(約3619万円)以上の運用ならば手数料はゼロ。つまり手数料の上限は、最高でも年間375ポンド(約5万円)に抑えられる。

最低運用額は一括500ポンド(約7万円)、または月100ポンド(約1万円)からと、投資初心者でも手が出しやすい点が嬉しい。

オンラインで簡単に開設可能な口座 の種類は、「標準型投資口座」「バンガード ISA」「Junior ISA」の3つ。ISAは日本でも2014年に導入されたNISA(少額投資非課税制度)のモデルとなった、英個人貯蓄口座だ。

投資商品 は、顧客の需要に合わせた「Life Strategy」「ETF(上場投資信託)」「TRF(退職年金基金型信託)」など、幅広い国際信託から選べる。

バンガードの個人投資部門責任者、ライアン・バロー氏は、「顧客に少しでも利益を還元する目的で、低コスト・オンライン投資という発想に至った」とコメントしている。
バンガードはすでに米国でプラットフォーム利用料を無料にするなど、積極的な利益還元を実施しており、今後そうしたサービスの需要が伸びれば、さらなるコスト削減も検討しているという。

既存のロボアドを超える低コスト投資ブームが到来するのか?

1975年の設立以来、投資産業の第一線で市場をリードしてきたバンガード は、現在世界中に2000万人を超える顧客を持ち、2兆ドルの資産を運用する巨大投資会社として知られている。投資市場に旋風を巻き起こしているロボアド分野にも2013年に参入し、「バンガード Personal Advisor Services」で新顧客層を開拓中だ。

低コストが利点とされるロボアドだが、バンガードのロボアドは最低運用資金が10万ドル(約1117万円)、年間利用料0.3%からと、庶民には手が出しにくいのが難点だった。今回の低コスト・オンライン投資は、そうした経済面での障害をクリアし、より幅広い消費者にアピールする意図がある。

バンガードのような大手中の大手が低コスト投資に乗りだしたことで、ライバル企業が後に続くと予想されている。米投資情報サイト「TheStreet」の「ベスト・ロボアド2017」 でトップ10入りを果たしたRebalance IRAも、最低残高500ドル(約7万円)、年間利用料0.5%と低コストに徹している。

顧客の利益に焦点が当てられている近年、人気を二分するBettermentやWealthfrontなどでも、いずれ同様の動きが見られる可能性は高い。

英金融行動監視機構(FCA)の最新のレポート でも、「資産マネージャーは顧客の利益を最優先すべき」であり、「価値の提供」に向けて、戦略を立て直す必要性が議論されているほか、手数料を含めた運営自体の透明化や市場の競争力強化など、投資産業が転換期をむかえる上で重要な要素も指摘されている。

誰でも気軽に資産運用を楽しめる包括的な環境は、世界経済を促進する上で欠かすことのできない要素となりそうだ。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)

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