金融資産ゼロ世帯が全体の30.9%という事実をご存知だろうか。60歳代で29.3%、70歳以上で28.3%にのぼる。実に3世帯に1世帯が貯蓄ゼロということである。また、リタイア前の50歳代は29.5%にのぼる。つまり、リタイアを目前に控えた世帯の3割が、退職後の生活準備資金がゼロと答えているのである。

筆者のところには年間300組以上の人が相談に来られるが、世帯年収500万円でもしっかりと貯蓄ができている人もいれば、世帯年収2000万円でもまったく貯蓄ができていない人もいる。収入が多いから貯蓄ができているかというとそうとも限らないのである。貯蓄が出来る人と出来ない人との違いは何なのであろうか。

お金で全てを推し量ることはできないが、「健康」と「お金」と「人間関係」は人生の豊かさを量る上で切り離せないものであると考える。定年までに豊かな老後生活を送るだけのお金を貯めることができるかどうかは非常に大きな意味をなすであろう。そこで、定年までの資産形成に成功する人・成功しない人がどのような人なのか考察してみたい。あなたはいくつ当てはまるだろうか。

豊かな老後生活のための「資産形成ができない人」11の特徴

(写真=tuaindeed/Shutterstock.com)

(1)見栄っ張りである

必要かどうかを考えずにブランド品を購入したり、家計のバランスを考えずにお金を使う。見た目には裕福に見えても、家計は火の車であることが多い。

(2)将来設計をたてていない

「いつ」「何のために」「どれだけ」必要か考えて計画的にお金を貯めていないため、支出が多くなる。計画性がなく、目標設定もしていない。

(3)お金を使うことが好き

消費や浪費が優先する。お金を使うことに快感を覚えるタイプで、あったらあっただけ使う。老後資金の準備ができない恐れがある。

(4)メリハリがない

被服代にも教育費にも食費にも交際費にもレジャー費にも、どの費目にもお金をかける。一向にお金が貯まらない。

(5)なりゆきまかせである

「収入-支出=貯蓄」である。つまり、収入から使うだけ使い、余った分を貯蓄するタイプはなかなかお金が貯まらない傾向にある。理想は「収入-貯蓄=支出」である。つまり、まず必要な金額を貯蓄に回し、残りで生活をする習慣を身につけるとお金が貯まりやすい。

(6)「○○限定」「○名様限り」「○%値引き」という言葉に弱い

必要でないものまで買ってしまう傾向が強くなり、お金を使いすぎてしまう。

(7)セールには必ず行く

その場の雰囲気に流されて散財する傾向がある。

(8)家計簿をつけっ放しにしている。

家計簿をつけるだけで満足し、分析をしないために、どこにお金をかけているかわからないままなんとなくお金がなくなってしまう。

(9)急な出費の準備をしていない

冠婚葬祭、病気、家電製品の修理など、日常的な生活費にはかからない費用が発生し、老後資金形成が難しくなる要因となる。

(10)資産形成について学ぶ気がない

お金を増やしたい、儲けたい、と思っているものの、自分で勉強をしようという気がない人は、おいしい話・うまい話に飛びつく傾向があり、老後資金を失ってしまうこともある。

(11)どうにかなると思っている

どうにかなると思ってどうにでもなるのは若いうちだけである。年を重ねるほど、どうにかなるという楽観主義は老後破産まっしぐらの傾向が高くなる。

「豊かな老後生活のための資産形成ができる人」6つの特徴

(1)自動的に貯まるしくみを作ってある

預貯金であれば積立定期や財形貯蓄など、投資・運用であれば銀行自動引落の投信積立や確定拠出年金など、自動的に貯まるしくみをつくってある。

(2)将来設計が明確である

成功する人は、いつまでにどのようになりたいかの姿を明確に描いている。一方、失敗する人は、将来設計がないままなんとなく貯金をしているため、ついつい将来のことを忘れてお金を使ってしまう傾向が強い。

(3)逆算思考である

将来設計=夢=ファイナンシャルゴールを明確にして目標を掲げ、そこから逆算して計画的に資産形成している。

例えば40歳の人が65歳で定年退職を迎えるとするとあと25年ある。自助努力で準備をする老後の必要資金が3,000万円とすると、月々10万円ずつ貯金をしていけばよいのである。また、5%複利で運用を行えるのであれば、月々約5万円ずつ積立をしていくとよいということがわかる。

(4)うまい話にのらない。

人間誰しも「欲」がある。しかし、資産形成に成功する人は「おいしい話」はないことを理解し、感情のコントロールが上手である。

(5)時間を見方につけている

早いうちからスタートすることは準備の負担を少なくするという点から有効である。老後に大きな差となって表れてくる。

(6)学んだことを実践している

お金のことを学び、知識をつけた上で、それを実践に移す行動力がある。いくら知識をつけても実践しなければ、豊かな老後に向けての資産形成も夢物語で終わってしまう。

豊かな老後のための3ポイント

最後にまとめとして、豊かな老後を過ごすために3つの重要なことを挙げておきたい。

(1)計画性

「いつまでに」「何のために」「いくら」必要かといったファイナンシャルゴールを設定する。

(2)しくみ化

人間の意志は弱いものである。自動的・強制的に貯まるしくみを作る。

(3)実践力

老後を謳歌するためにも少しでも早くスタートして時間を味方につけたいものである。そのためにも知識をつけ、実践することが必要である。

豊かな老後を過ごすための資産形成に魔法はないものと思いたい。早い時期からプランを立て、目標に向かってお金の準備をして行くことが大切になる。

また、FPなどの専門家に相談しながら豊かな老後に向けて資産形成していくことも非常に有効と考える。お金を払わずに失敗するのと、お金を払って成功するのであれば、専門家に払うお金は長い目で見たときに有効な使い道となるのではないだろうか。

竹内道子 FPオフィス道~michi~ 代表
証券・保険・不動産販売および独立系FP会社で経験を積み、ファイナンシャルプランナーとして独立。資産運用・老後資金・住宅ローン・保険などライフプラン実現に向けた相談に年間300組以上受ける傍ら、企業従業員や一般消費者に向けてマネープランなどのセミナー講師を務める。机上の空論ではない実務経験に基づいた問題解決・夢の実現を強みとする。

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