消費者の節約ムードが広まり、真っ先に影響を受けるといっても過言ではない、サラリーマンのランチ。仕事に勤しむガッツリ飯を好むビジネスマンの強い味方であり、ワンコインでお腹を満たしてくれる牛丼だが、原材料高の波が牛丼チェーンに押し寄せている。

その荒波を航行する牛丼御三家のうち、松屋を展開する松屋フーズ <9887> は、業績の見通しに暗雲が立ち込めているが、その理由は?

コスト上昇が直撃 松屋の厳しさがにじみ出る

(写真=Thinkstock/Getty Images)
(写真=Thinkstock/Getty Images)

牛丼の原材料のうち、最も価格に影響力を及ぼすのが牛肉のショートプレート価格だ。日本食肉流通センターの集計によると、首都圏における最も取引量の多いアメリカ産のショートプレート1キロ当たりの価格は、直近の最安値を記録した2016年の8月から17年4月までの間に、3割近くも上昇している。トランプ大統領の誕生後、ドル/円の為替相場が大幅に円安に振れたことも輸入価格を押し上げる要因の1つともなったとみられる。

輸入牛肉の価格上昇のトレンドを受け、松屋の見通しには厳しさがにじみ出る。18年3月期連結決算の見通しでは、売上高は935億円と前期比で5.0%のプラスを見込むものの、営業利益は41億円、純利益は22億5000万円と、前期比でそれぞれ15.1%と20.7%の大幅な減少となる予想だ。その足かせとなるのが、原価率の上昇で、18年3月期は前期比1.1%増の32.8%となり、金額にして24億円ものコストアップを迫られ、厳しい経営が待ち受ける。

ほかの御三家に焦点を当てると、牛丼チェーン「すき家」を展開するゼンショーホールディングス <7550> も原材料高に苦戦しそうだ。同社の見通しでは、原価率が17年3月期の42.6%から18年3月期には43.1%と0.5%アップする見込み。金額ベースでは245億円もの負担増となる。しかし、18年3月期連結決算では、売上高は前期比9.4%増の5951億円、営業利益は同15.5%増の216億円、純利益は同14.4%増の96億円と、原価率の影響をモノともせず、業績を伸ばす見込み。事業ポートフォリオが牛丼に偏りすぎていない点が松屋とは異なるポイントだろう。

御三家唯一の勝ち組、吉野家

競合2社とは対照的な姿を見せるのが、吉野家ホールディングス <9861> だ。18年2月期の原価率は前期比1.3%マイナスの35.0%となる見込み。17年2月期でも原価率は前期比で1.9%減少しており、2年で3%以上のコストカットと、御三家の中で唯一、原価率が減少していく青写真を描く。これにより18年2月期の連結決算では、営業利益が44億円と前期の18億6500万円から約2.4倍に拡大し、純利益も前期比で7割近く伸び、21億円に到達する見通しを立てている。

御三家の2社の苦戦を横目に、吉野家が輸入牛肉の価格高騰のトレンドの中でも、原価率を低下させることができるのは、長期的なビジョンで、価格上昇が顕著になるまでに牛肉の調達を終えていたことが奏功した。一方の、松屋は牛肉の仕入から販売までのスパンが相対的に短いため、牛肉価格の上昇の影響が直撃した形となってしまった。

牛肉価格の高騰を受け、ライバルに差を付けられる格好となった松屋だが、さらなる試練が待ち受けている。過去の牛海綿状脳症(BSE)の発生を受けて、アメリカ産の牛肉輸入を禁止してきた中国が、米中首脳会談での合意に基づいて、今夏にもその解禁に踏み切るとみられている。世界最大の人口を誇る中国で、牛肉の需要が高まれば、アメリカから日本への牛肉価格への影響も避けられなくなるだろう。

牛丼以外がカギ 松屋、とんかつで挽回なるか

前途多難な松屋にとって救いともなりそうなのが、メニューのバリエーションと事業の多角化だ。御三家の中でも牛丼以外のメニューが充実する松屋にとってみれば、コストを抑えた季節限定メニューなどでヒットが生まれれば、展望が開けてくるかもしれない。さらに「松のや」をはじめとするとんかつ事業にも力を入れており、同社の牛めし事業に続く第2の稼ぎ頭までに成長してきた。その期待の表れか、松屋フーズのグループ全体の新規出店のうち、7割をとんかつチェーンが占め、苦戦する牛丼事業をサポートする。

輸入牛肉の価格高騰は、松屋の業績に最も深刻な影響を及ぼし、御三家の中で1人負けの様相を呈してしまったが、中国のアメリカ産牛肉の輸入解禁で、今後の需要がどれほど伸びるのかにより、アメリカから日本に輸入される牛肉価格にもさらなるコスト圧力がかかるのか、牛丼チェーン関係者は固唾を呑んで見守る。さらに、不安定な世界情勢の中で、為替相場の変動もあり、緊迫した状況が続いていきそうだ。(ZUU online 編集部)

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