国内株式から大規模な資金流出
2017年5月の国内公募追加型投信(ETFを除く)の推計資金流出入を見ると、国内株式からの資金流出が大きく4,000億円に迫った【図表1】。内外REITについても、4月から引き続き資金流出であった。その一方で、外国株式とバランス型には資金流入していたが、流入金額はともに1,000億円台と小幅であった。
国内株式は、1年近く資金流出が続いている【図表2】。ただ、3月と4月はパッシブ・ファンド(黄色棒)に限ると資金流入に反転するなど、2017年に入ってから流出金額自体は減少傾向にあった。それが、5月は月前半に日経平均株価が再び一時2万円目前に迫るなど国内株式が上昇する中、パッシブ、アクティブともに1,500億円を超える資金流出となった。月後半に日経平均株価が1万9千円台に定着した昨年12月以来のことである。国内株式を逆張する投資家が多いことが分かる。
また外国REITについては、流出金額が100億円程度と4月(200億円)と比べて小さかった。人気外国REITファンドの分配金の引き下げをきっかけに昨年11月から資金流出が続いているが、分配金引き下げに伴う解約が一巡してきたのかもしれない。
AIファンドが引き続き人気
個別ファンドへの資金流入を見ると、毎月分配型のファンドと合わせてAI(人工知能)関連ファンドに資金流入した【図表3】。4位の「ダイワ・グローバルIoT関連株ファンド -AI新時代-」は4月に設定されたテクノロジー系の企業に投資するテーマ型のファンドである。その一方で為替ヘッジなしが5位、為替ヘッジありが6位となった「ブラックロック・米国小型株式 ビッグデータ戦略ファンド」は米国の小型株の優良銘柄を選別する際に、AIを使ってビッグデータを活用している5月新設のファンドである。3つのファンドは2月に設定された「野村グローバルAI関連株式ファンド」や「GSグローバル・ビッグデータ投資戦略」と比べるとやや低調なスタートであるが、AIファンドに対する投資家の関心が引き続き高いことがうかがえる。
また、2位にインド株式ファンド、9位にインド・ルピーの通貨選択型ファンドが入った。4月から引き続きインド関連ファンドの人気も高かった。
国内株式の中小型成長株ファンドでも逆張り
5月にパフォーマンスが良好であったファンドを見ると、上位ファンド全てが国内株式ファンドとなった【図表4】。特に、1位から9位までが中小型成長株ファンドであり、健闘が目立った。
5月の国内株式市場は、前半は堅調であったが、後半に円高に反転したこともあり外需系の大型株を中心に伸び悩んだ。そのため、国内株式市場全体(TOPIX)は2%強の上昇にとどまった。ただ、中小型の成長(グロース)株に限ると、Russell/Nomura日本株インデックスの中小型グロースの上昇率が6%を超えるなど、大きく上昇した。その様な市場環境に加えて、銘柄選別でプラスアルファが取れた中小型成長株ファンドの収益率は10%を超え、パフォーマンスが特に良好であったといえる。
イボットソン分類で「国内株式・中小型成長型」のファンドを集計してみたところ、昨年9月から右肩上がりに上昇しているが、その一方で資金流出が続いている【図表5】。特に、足元5月は370億円弱と大規模な流出であった。集計した国内株式の中小型成長株ファンドの5月末時点での純資産残高総額が7,000億円弱であったため、全体の5%が5月に解約されたことになる。中小型成長株といえば、株式の中でも特に長期保有して業績拡大に伴う株価上昇を狙うイメージがある。しかし、実際には国内株式全体と同様に逆張りされる傾向があり、ある程度利益が出たところで売却してしまう投資家も多いようだ。
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前山裕亮(まえやま ゆうすけ)
ニッセイ基礎研究所 金融研究部
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