2015年10月に発足した第3次安倍晋三改造内閣にて設定された「ニッポン一億総活躍プラン」。「強い経済」と「子育て支援」、「安心できる社会保障」の充実を目指していますが、このうち「強い経済」をつくるための労働力人口(15歳~64歳)は、2003年の8,716.5万人をピークに右肩下がりです。戦後最大規模とされる労働人口不足を補うために、今、働き方の改革が求められています。では、どのように変えていけばよいのでしょうか。

総人口と労働力人口の推移、そしてこれから

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(写真=beeboys/Shutterstock.com)

まず、日本の総人口と労働人口の推移を簡単に整理します。統計をとり始めてから、日本の人口が一番多かったのは2008年の1億2,808.4万人のときです。それからは緩やかに減少を続け、2015年現在では1億2,709.5万人。労働力人口は、8千230万人から7千630万人に減っています。

「もはや戦後ではない」と経済企画庁が経済白書「日本経済の成長と近代化」の結び文に記載した、高度経済成長の始まりは1956年で、前年の1955年に1人あたりの実質国民総生産(GNP)が、戦前の水準を超えていました。そのときの総人口は9千万人、労働力人口は5千500万人です。

将来的な見通しとして、このままでは今後、少子高齢化が進み人口が減少していくのは周知の事実です。2000年生まれの子どもたちが、「老後」を迎える2065年には、総人口が5,322万人、労働力人口は2,663万人と予測されています。これはおおよそ大正時代の日本と同じものです。大正時代と決定的に違うのは、大正時代の14歳以下の割合は36.5%ですが、2065年には9%になる見込みということです。

高齢者活躍のポイントは「貢献」

これだけ減りゆく労働力には脅威を感じますが、大正や昭和の時代と現代では、明らかに「仕事」の性格が違っています。昔は何ごとも手作業が基本でしたが、今は機械化やオートメーション化が進み、例えば農作物もビルの中で生産できる時代です。

労働力を補うキーポイントは女性と高齢者の活用といわれています。高齢者に期待される役割としては、例えば技術を持っている場合「現場で後進の技術育成に尽くす」ことなどが挙げられます。定年を越えても働く高齢者は増えています。しかし、正社員の頃とは待遇が違うと嘆く方も多いようです。

もし技術を持っていないという場合は、思い切って後進に道を譲り、「子どもと遊ぶ」「世間話をする」「町をきれいにする」といった社会貢献を軸に、保育士や介護ヘルパー、清掃員などに職種転換を図れるようにするのも良いかもしれません。

女性活躍のポイントはリモートワークの受容

女性活躍のカギは、リモートワークという働き方にあります。インターネットを始めとする通信技術の発達により、家からスカイプで会議に参加し、グーグルドライブでファイルの共有を行って仕事を進めることができます。企業側がそれぞれのワーカーを信頼して仕事の内容を明確にし、進捗管理をして任せることができれば、働けるようになる女性が格段に増え、子育てや介護などで離職した方の活躍できる場が広がります。

企業としては、ワーカーが家にいても「きちんと仕事をしている」と確認できる、リモートワーク専用の人事評価制度を導入するとよいかもしれません。これは企業にとってもコスト削減につながる策です。働き方改革のポイントは、成果主義によって個人の能力の「見える化」を促進し、誰の目にも明確な評価をすることにあります。「その時間にそこに居たから仕事をしたことになる」という考え方は通用しなくなっていくでしょう。

変革のポイントは、自由な発想を受け入れる懐の深さ

働き方改革の動きは、新しい制度の導入だけでなく、働き方への考え方を変えるきっかけになるかもしれません。そのような流れのなかで、各企業の担当者は社員がワクワクする働き方をできるように、社内の環境を整えていくことが重要になってきます。小ぶりな組織の強みは、柔軟な発想や意思決定の速さにあります。従来とは違う働き方を受け入れる、柔軟な発想の中小企業が増えていくことが待たれます。(提供: あしたの人事online

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