安倍内閣が日本経済の再生を目指して進める働き方改革は、一億総活躍社会実現のために欠かせない重要課題です。その中でも重要なポイントとなっているのが、非正規雇用で働く社員の待遇改善であり、早急に取り組むべき問題だとされています。実際の正規雇用・非正規雇用での格差の実態と原因について見ていきましょう。

正規社員における長時間労働者の割合から見る非正規社員数増加の実態

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(写真=VVO/Shutterstock.com)

日本の正規社員は、諸外国と比較しても長時間労働者の割合が多いのはよく知られており、特に30代から40代の男性正規社員でその傾向が目立ちます。

厚生労働省の雇用政策委員会が平成27年にまとめた資料によると、平成26年における一般労働者の年間総実労働時間は2,021時間、パートタイム総実労働時間は1,084時間、全体で1,741時間となっています。全体では平成25年の1,746時間よりもわずかに減少しているもののパートタイム労働者比率が増加したことなどが要因となっているためであり、純粋な労働時間減少によるものではないといえます。

また、平成26年の週60時間以上の雇用者は全体の8.5%ですが、30代男性となると16.5%となっており、年齢別でも労働時間が多いということが浮き彫りになっています。20代の正規社員も長時間労働が多くはなりがちですが、30代、40代となると社内における責任も重くなり、時に配置転換や転勤などの必要に迫られる場面がおのずと増えてくるでしょう。

非正規雇用者が増えているのには、このように長時間労働を避けるためであったり転勤ができないためといった要因も潜んでいると思われます。そして、一度非正規雇用になると、その後正規雇用を希望してもなかなか実現しにくくなるのが現状です。

正規社員と非正規社員との賃金格差が目立つ日本の雇用状況

厚生労働省がまとめた平成28年賃金構造基本統計調査によると、雇用形態間賃金格差(正社員・正職員=100)は、男女計で65.8(前年63.9)、男性で67.4 (同65.8)、女性で72.0(同69.8)となっており、男女計及び女性で統計を取り始めた平成 17年の調査以来過去最小となっています。

欧米諸国では8割程度の格差であるのに対して日本における雇用形態間賃金格差は顕著であり、この格差は今に始まったことではなく定着化しているような状態です。同じ内容の仕事をしていても正規雇用か非正規雇用かで待遇や賃金における不合理な格差があることで、アンバランスな雇用状況になっています。正規雇用・非正規雇用での賃金格差を解消していくことが全体的な働くモチベーションの増加につながり、最終的には生産性の向上が導かれることになるでしょう。

長時間労働・賃金格差の解消が女性や高齢者の労働参加を導くきっかけに

現在の日本において、女性は結婚・出産を機に正規社員から離れる傾向が強く、また出産後は勤務時間や勤務地に重きを置いて非正規雇用を選択する方が多い傾向にあります。高齢者についても同様で、体力面などの理由によりフルタイムや遠方の勤務地を避ける場合、非正規雇用を選択するしかない状況の方もみえるでしょう。

しかし、働き方改革の推進によって長時間労働や賃金格差を解消させることにつながれば、女性や高齢者が労働参加をしやすくなる環境が生まれます。特に女性では、有能であっても出産を機に仕事をいったん離れざるを得ない状況になるために、出産することにためらいが出てしまって日本全体の出産年齢の増加に拍車をかける要因にもなっています。女性が安心して出産し、仕事復帰できる環境があれば働く女性の不安解消にもなるでしょう。

多様な働き方が認められる制度の普及が待たれる

いまは元気で働いている方も、ライフイベントや家庭の事情など、突然に働き方の変化を迫られる可能性もあります。そうした多様な働き手の事情に応えてくれる企業の制度の拡充も待たれるところです。(提供: あしたの人事online

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