中小企業の人事マネジメントにおける悩ましいトピックの1つとして「モンスター社員」の存在が挙げられます。モンスター社員はちょっとしたことでも訴えを起こし、労使紛争を巻き起こします。このようなモンスター社員からどのようにして企業を守ればよいのか、人事制度の面から説明します。

就労規約や法規を悪利用する社員

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(写真=Yuganov Konstantin/Shutterstock.com)

一般的に「モンスター社員」と呼ばれる人たちには以下のような問題点があると言われています。

・処遇に不満を持つと、両親や配偶者を会社に来させて文句を言わせる
・有給休暇や福利厚生などの制度を徹底的に利用するのに、少しでも自分の権利が侵害されると行政など外部機関を巻き込んで訴訟を起こす
・パワハラやセクハラなどを繰り返し、自分の部下をつぶしたりする

以上の観点から、モンスター社員には権利と義務についての認識が甘く、自分の権利は強く主張するが、自分に与えられた義務についてはほとんど認識がないことが分かります。つまり、会社の一員としての客観的な視点が欠けているのです。また、会社組織内で上手く働けないのは「誰かのせいだ」ということばかり考えていて、企業側が「モンスター社員」と認識している「本人」は自分のことを「モンスター」だとは決して思っていません。

パワハラやセクハラを繰り返したり、自分の部下を精神的に追い込んでつぶしてしまったりする社員、このような人物も「自分は正しい」と思い込んでいます。更に悪質な「モンスター社員」は、訴えることを前提で長時間残業をさせる企業を狙って転職を繰り返すことがあります。企業が犯すミスを逆手に取る行為を阻止することは、今を生きぬく企業経営の大きな課題として浮上してきています。そして、その具体的な対策として講じられているのが就業規則の明記と細分化です。

「モンスター社員」が登場する背景

高度経済成長から1990年代のバブル経済期の頃まで、社員は仕事を頑張った報酬として昇給や昇進を期待できました。中小企業であっても会社に尽くして一生懸命に働けば、生活がどんどん豊かになっていくという楽しみや将来への希望があったのです。しかし、バブル経済崩壊後は、昇給やベースアップが期待できなくなり、また幹部ポストの削減やリストラ等によって、仕事へのモチベーションを持てない時代になっています。

社内コミュニケーションと人間関係

また、社員同士のコミュニケーションが上手くいかず、それが人間関係のストレスになることがあります。例として上司と部下の間に発生するコミュニケーション・ギャップを見てみましょう。もし上司が高度成長期を経験し、企業のために自分を抑えて努力してきた世代であれば、自己主張の強い若手社員のことをあまり良く思わないかもしれません。一方で若手社員は、上司はタテマエで発言するからホンネが見えず、何を考えているのかわからないと感じているかもしれません。

社内でのコミュニケーションとして、「飲みニケーション」という言葉があります。「私は社員と毎週のように飲みに行っているから、社員とコミュニケーションがとれている」という社長がいます。しかし、そのような「飲みニケーション」の場では、社長が不快に感じるような不満を口にすることは難しいため、社員の本音を聞き出すことは難しいといえます。したがって、いくら社員と飲む回数を増やしたとしても、社長は現場の課題を把握できていないことになります。

現代に必要なのは心理的報酬と評価報酬

自分に部下がいる場合、どのようにしてモチベーションを引き上げればよいのでしょうか。近年「心理的報酬」という言葉を耳にすることが増えました。具体的には、実績を表彰したり、言葉による賞賛を与えたりするというものです。自分の仕事ぶりを正当に評価されたと感じることができれば、達成感や自身への有能感が得られ、企業に働く者としての精神的満足感を得ることができます。

これは自身の承認欲求を満たしてほしいと望む若い世代には特に効果があるかもしれません。仕事へのモチベーションを引き上げるためには、社内の「人事評価制度」を再構築し、適正な評価結果に基づいた「昇給・昇進」の実現が効果的であるといえます。(提供: あしたの人事online

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