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実現すればオフィス床需要増に

「国際金融都市・東京」構想と不動産市場~日本版金融ビッグバンから東京版金融ビッグバンへ~

去る6月9日、東京都から「国際金融都市・東京」構想骨子が公表された。冒頭の序論では、「金融」の活性化が都市の魅力や競争力維持のために不可欠なものであるとし、具体的施策として、(1)魅力的なビジネス面、生活面の環境整備、(2)東京市場に参加するプレーヤーの育成、(3)金融による社会的課題解決への貢献」を掲げている。

国際金融都市・東京構想,不動産市場
(写真=Thinkstock/GettyImages)

この構想と不動産市場との関係で、まず思い浮かぶのは、建設中あるいは建設計画中のオフィスビルにおけるテナント需要の拡大である。(1)では、海外の金融系企業や有能な人材を惹きつけ定着するよう、税負担の軽減や金融手続きの迅速化、英語対応の強化に加えて、特区を活用した生活環境整備も推進するという。また②(2)でも海外金融系企業の誘致促進等を標榜しており、実現すればオフィス床需要増がみこまれる。

そして、この構想骨子のサブタイトルは、~「東京版金融ビッグバン」の実現へ~であり、1996年に当時の橋本内閣が掲げた「日本版・金融ビッグバン」を想起させる。当時の日本版・金融ビッグバンでは、2001年までにわが国金融市場が、ニューヨーク、ロンドン並みの国際金融市場として復権することを目標として金融システム改革が標榜された。しかしその後、不良債権問題が深刻化する中、国際金融センター論は縮小。一方で、不良債権問題への対応としての施策が、各種規制緩和とともに実行に移されたことから、不動産市場では証券化や投資運用のための法制度等が整備されることとなった。

具体的には、2000年の投資信託法の改正による不動産投資信託(リート)の実現や、2007年の金融商品取引法制定により投資運用業者として不動産運用会社も位置づけられたこと等である。現在の不動産取引市場では、こうしたリートや不動産運用会社が運用するファンド等による不動産取引が市場の牽引役になっている。資産運用の対象として不動産が位置づけられ、不動産投資市場が拡大してきた発端が日本版・金融ビッグバンにあったとも思われる。

頓挫してしまった国際金融市場としての復権については、東京国際金融センター構想に継承され、この度の構想骨子発表に繋がっている。国際金融センター論は、リーマンショック前の好況時にも再燃した経緯がある。当時も様々な国際金融センターのあり方が議論されたが、この度の構想骨子では、魅力的なビジネスや生活面の環境整備として税制に加え、金融系外国人材の職住近接といった就労者個人にも目を向けた環境向上に言及している点が目新しい。これについては、不動産開発との関連性も高い。英語でも円滑にビジネスや生活ができるようになることで、都市力は底上げされ、不動産市場の持続的成長にも繋がる。

もうひとつ、これまでより一歩踏み込んでいるのが資産運用業の取り込みだ。国内で蓄積した富が預金に滞留している現状を脱し、投資資金として運用されることが国際金融センター構想の核となっている。そのための海外金融系企業の誘致目標も示され、さらに新興の資産運用会社や小規模な資産運用会社の育成、サポート、機関投資家との連携にも言及されている。不動産運用の分野は、前述のリート等の国内不動産を対象とした投資商品に加えて、近年は海外不動産への投資の関心も高まっており、次の段階へと進みつつある。国内資金に限らずアジアからの資金を集める、あるいは海外不動産の特定の領域を得意分野とするというような内外不動産運用会社が存在感を増す可能性もある。

国際金融センター構想の中で、不動産を対象とした資産運用業はその一翼を担うものであり、海外金融系企業等の誘致はテナント需要を底上げし不動産市場の成長をもたらす。その誘致のために魅力ある都市づくりがなされれば、不動産市場の優良なストックとなるだろう。東京国際金融センター構想に、不動産市場は多面的に関わっていくように思う。

加藤えり子(かとう えりこ)
ニッセイ基礎研究所 金融研究部 不動産運用調査室長

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