medium_5573567960

先日3月10日に日本政府が発表した貿易統計では、経常収支が4カ月連続の赤字となりました。足元では、消費増税前の駆け込み需要が個人消費を支えていますが、4月以降の落ち込みは避けられないとの声も上がっております。新聞や雑誌などには、財政赤字とあわせた「双子の赤字」の文字もちらほら。そこで本稿では、アメリカの経済事情と「双子の赤字」の問題点を見ていきたいと思います。

世界最大の経済大国はみなさんがご存知の通りアメリカです。その華やかで豊かな経済も実は双子の赤字の上のもとに成り立っている足場がおぼつかない経済なのです。よく、ニュース等でアメリカの借金が上限に達してしまって債務の上限を引き上げるかどうか上院と下院でギリギリの攻防を行っている等と報道されていますが、なぜ世界中がアメリカの台所事情に注目しなければならないのでしょうか。今日はアメリカ経済が世界に与えている影響という面からこの双子の赤字がなぜ問題になってしまうのか一緒に考えていきたいと思います。


赤字体質のアメリカ

ここで双子の赤字についておさらいをしておきたいと思いますが、経常赤字と財政赤字の事を双子と言っておりアメリカは長期間にわたりその様な状態が続いています。経常収支については1980年から現在に至るまでずっと赤字状態、財政収支について1998~2001年のわずかな期間を除いて1980年からずっと赤字の状態が続いています。経常赤字は主に貿易による赤字で米国経済が発展するに従って輸出より輸入が増大していきました。以前は日本との貿易摩擦がよく取り上げられていましたが、現在は対中国の方が問題となっており、中国元の切り上げ要求などにつながっています・財政収支は特に顕著だったのがブッシュ大統領時の大型減税や国防費の増大などによる物でした。ITバブル崩壊や同時多発テロ等をうけこういった要因が長期間にわたり財政を圧迫してきました。この様にアメリカは双子の赤字状態である事が普通になってしまったのです。


過剰消費と過剰債務

国だけでなくアメリカ国民の気質とも言えるのが過剰消費と過剰債務です。その背景には2007年に崩壊した住宅バブルがあります。これは何とも都合のよい話で住宅価格が永遠に上がり続けるから貯蓄をしなくてもよいという神話の様な物でした。しかし予想以上に住宅バブルが長期間に及び続いたため渦中の人はその神話を疑うどころか、上昇した資産価値を担保に新しい借金をして物を消費し続けたのです。ついには世界中をパニックに陥れたサブプライムローンが登場し、殆ど安定的な収入が無い人にも高額な融資が行われホームレスの人が突然大豪邸を手に入れると言うおかしな話が次々と起こったのです。この住宅ローン債権は金融工学で複雑にデリバティブ商品に組み込まれてしまい、アメリカの住宅ローンの問題が世界中に飛び火してしまったのです。


基軸通貨ドルの信認

さて、これまでは実際に起こった話をご紹介してきましたが実際に双子の赤字が世界に与える影響を見ていきたいと思います。まずみなさんがご存知の通り世界の基軸通貨はアメリカドルです。その流動性の高さや安定性からアメリカドルに代わる物は無いと言われており、世界中の決済通貨として無くてはならない物としてその存在価値は誰もが認めています。また投資家の中にはアメリカドル自体を資産として保有している人やアメリカドル建て証券、債券を持っていると言う人は世界中に存在します。

この様に基軸通貨であるアメリカドルは決済通貨と言う役割だけでなく資産としての役割も担っているのです。ですから、アメリカドル自体の為替レートや金利が突然大きく変動してしまうとリスクヘッジが出来なくなってしまう人が大勢出てきてしまう為、基軸通貨国であるアメリカはドルの信認が崩れない様な努力をする必要があるのですが、リーマンショックを皮切りに国内の金融機関を救済する為にマネタリーベースを3倍以上増加させた量的緩和、日本同様のゼロ金利政策とドル安政策を並べ世界中に大きな影響を与えました。これにより巨額の損害を受けたのは輸出入企業、機関投資家、個人投資家と世界全体に及びました。世界が固唾を飲んでアメリカの台所事情を心配するのはこういった強い影響力を持っているからなのです。


世界最大の流動性をもつ米国債

さらにもう一つ世界で一番安全で流動性が高い金融商品である米国債の存在を忘れてはなりません。世界最大の米国債保有国は中国ですが、日本も巨額の米国債を保有しています。金融商品はすべてムーディーズやスタンダード&プアーズの様な格付け会社により安全性がランク付けされています。銀行間でお金を貸し借りする際等にこういった債券を担保に融資をしたりしますが、安全性の高い物を担保とすることでCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)と言った債券の保証金を低く抑える事が出来ます。しかし、アメリカの債務問題が悲惨な結末を迎えデフォルトを宣言されてしまうと米国債の利払いが行われなくなります。さらにもっと恐ろしいのが米国債の格付で、銀行はこの格付けが下がってしまうと担保とする際のCDSのコストが上昇してしまい、それまで以上の保証金を払わないと資金が調達できなくなってしまいます。銀行の資金調達が困難になると実体経済にもその影響が及び、世界全体が混乱してしまう羽目になります。


双子の赤字は生まれ変われるか

この様にアメリカが発行している通貨・国債は全世界の共通言語とも言って良いくらい大きな影響力を持っています。30年以上も続くこの赤字状態はいつまでも続けられるわけが無く、いつか上限に達してしまい終焉を迎える事になります。その時のインパクトがどれほどの物か想像もつきませんがこの先自分の資産を守る為にはこの双子の赤字問題から目を離すわけにはいかなそうです。リーマンショックから7年目にあたる現在では景気の拡大局面を迎える確率が高まってきていますが、アメリカが過去と同様に過剰消費に向かって行ってしまった場合、新たなバブルが形成されてしまうかもしれません。バブルは中身のない見かけ上の成長なので崩壊するとまた金融危機が訪れます。しかし、次回分の財政出動が出来る余地は残っておらずリーマンブラザーズの様に見捨てられてしまう金融機関が多数出る事になります。今後のアメリカ経済はそういった視点で情報を集め、すぐに対応できる様に準備をしておきましょう。

photo credit: John-Morgan via photopin cc