上場企業の3月期決算発表も終わり、有価証券報告書で役員報酬を1億円以上受け取った役員が公表された。東京商工リサーチによると、221社の上場企業で457人が1億円以上の役員報酬を受け取ったという。役員報酬に加え、一般投資家と同様に、役員たちは保有する株式からの配当も受け取る。大量に株式を保有する役員クラスともなれば、所有する株式数のシェアは有価証券報告書で名前がリストアップされ、筆頭株主として名を連ねるケースもある。

ここでは米経済紙フォーブスの大富豪ランキングトップ10にランク入りしている日本の富豪たちの配当収入に着目する。尚、配当額のうち資産管理会社が保有している株式からの配当額に関しては計入していない。

孫氏、配当収入だけで100億円超え

まず、フォーブス日本長者番付 2017のランキングトップ10をおさらいする。ランキングは次の通り(敬称略)。

10位 三木正浩  資産額 4050億円
9位 伊藤雅俊   4100億円
8位 毒島邦雄   4660億円
7位 森章   4880億円
6位 高原慶一朗  5000億円
5位 三木谷浩史  6770億円
4位 滝崎武光   1兆3880億円
3位 佐治信忠   1兆4650億円
2位 柳井正  1兆8200億円
1位 孫正義    2兆2640億円

フォーブスの日本の大富豪ランキングでトップとなったソフトバンクの孫正義社長は、資産額が2兆2640億円に上る。このうち、ソフトバンクグループ <9984> の株式のうち21.0%にあたる2億3120万5000株(2017年3月末現在)を保有する筆頭株主だ。同社の16年度の年間配当は44円となり、孫氏が受け取る配当額は101億7300万円に上る。日本一の大富豪にふさわしく、配当からの収入だけで一般のサラリーマンが生涯かけても稼げないような天文学的な金額を毎年得ることになる。しかし、資産額全体からみると、配当による資産全体の利回りは年率0.44%とインカムゲインとしては、パフォーマンスは控えめともいえるだろう。

フォーブスランキングで孫氏に次いで資産額が2位となったカジュアル衣料チェーン「ユニクロ」を展開するファーストリテイリング <9983> の柳井正会長兼社長は、同社の筆頭株主で保有株主数は2298万7284株、持ち株比率は21.67%を占める(17年2月28日現在)。同社の配当金は16年8月期で1株当たり350円となり、柳井氏の配当収入は80億4500万円となる。

フォーブスランキング3位の佐治信忠・サントリーホールディングス会長は、同社が非上場のため、データが公表されていない。トップ3に続いたのがキーエンス <6861> の滝崎武光名誉会長は、同社の発行済みの株式のうち7.71%に当たる937万7000株を所有(17年3月20日現在)。17年3月期の連結決算では、事業年度が9か月間の変則となり、1株あたりの配当は75円。年換算100円で資産すると、滝崎氏の配当収入は9億3700万円に上る。

日本の富豪ランキングトップ5に入った楽天 <4755> の三木谷浩史代表取締役会長兼社長は楽天の発行済みの株式のうち12.3%となる1億7615万5800株を保有(16年12月31日現在)。同社は1株あたり年間4.5円の配当を株主に還元しており、年間7億9200万円の配当を受け取る。

上位5人に続くトップ10のうち、それぞれの出身企業の有価証券報告書で、大株主として名前がリストアップされていたのが、資産ランキング10位の三木正浩氏。靴のチェーン店ABCマート <2670> を創業した人物で、フォーブスの資産額では4050億円を保有している。資産のうち同社の発行済み株式の25.9%にあたる2138万株を所有(17年2月28日)しており、1株当たり120円の配当を受け取る。その配当額トータルは25億6500万円にも上る。

フォーブスの長者番付でしのぎを削る富豪たちだが、配当額でも孫氏の強さが目立ち、トップ10のうち、公開情報をもとにした資産では、唯一100億円の大台を超える配当額となった。

ファーストリテイリングの柳井氏も孫氏と競うように、配当額もトップ10の富豪の中では2番目につけた。株主優待で送られる商品でささやかな喜びを感じる一般投資家とはけた違いの配当を決算のたびに手にする富豪たち。

その巨額の報酬は、これまで事業を立ち上げたり、時代の荒波にも負けずに事業を成長させてきたりした功績への対価であり、富豪の地位に到達するまでの苦労を考慮すれば、それを受け取るのに値する人物であろう。(ZUU online 編集部)

【お詫びと訂正】佐治氏のお名前に誤字がありました、訂正してお詫びいたします。