はじめに

「女性の活躍促進」政策により、仕事と子育ての両立環境の整備が進められている。しかし、依然として、女性が働き続けることは容易ではない。都市部では保育園待機児童解消の目処が立たず、預け先に困る家庭が多い。また、保育園を確保できたとしても、認可外では保育料が月10万円を超えることも多く負担が大きい。さらに、子どもが風邪を引いて病児保育などを利用すると、給与がほとんど消えてしまい何のために働いているのか疑問に感じる、という声も聞く。加えて日本では、依然として夫婦の家事・育児分担が妻に偏る家庭が多く、両立の困難さに悩む女性は多い。

よくこういった女性の就業継続の話題が出ると、経済的にも身体的にも厳しくても、いったん離職すると2億円の機会損失になってしまう、という話が出る。この2億円には、内閣府「平成17年国民生活白書」における大卒女性標準労働者(1)の生涯所得推計値が引用されることが多い。しかし、これは約10年前の値であり、時代の変化を追えていない。

本稿では、大学卒女性の生涯所得について、最新の賃金等の統計データを利用するとともに、女性の働き方が多様化(2)する現状に対応するよう複数ケースを設定して推計を行う。

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(1)学校卒業後直ちに企業に就職し、同一企業に継続勤務しているとみなされる労働者。
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2)「改正育児・介護休業法」にて、例えば、育児休業制度は、2016年より正社員以外の利用条件が緩和。短時間勤務制度は、2012年より従業員規模によらず3歳未満児養育中の労働者(正社員以外でも条件により利用可能)に対して義務化。また、子の看護休暇取得条件の緩和、マタハラ防止措置などもある。
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近年の女性の就労状況

まず、生涯所得推計の前提として、近年の女性の就労状況について、詳しく見ていきたい。

◆女性の労働力率の変化~既婚女性の労働力率上昇と未婚女性の増加でM字カーブは解消傾向

総務省「労働力調査」によると、15歳以上の女性の労働力率は、2005年から2015年にかけて、48.4%から49.6%(+1.2%pt)へとわずかな上昇にとどまる。労働力率の比較的高い若年層の人口が、少子化で減少しているため、女性全体では大きな変化はないようだ。しかし、年代別に見ると、30代を中心に上昇しており、M字カーブは解消傾向にある(図表1)。この背景には、出産・子育て期の有配偶女性の労働力率が上昇していることと(詳しくは後述)、もともと労働力率の高い未婚女性が増えていることがある。

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◆女性雇用者の雇用形態別割合~女性全体の6割が非正規、高年齢層ほど多い。

女性の労働力率は、30代を中心に上昇しているが、その多くは非正規雇用者である。総務省「労働力調査」によると、女性雇用者に占める非正規雇用者の割合は、1990年代以降、いずれの年代でも上昇傾向にあり、特に若年層における上昇幅が大きい(図表2)。若年層では、バブル崩壊後の景気低迷の影響を受け、新卒時に正規雇用の職に就けずに非正規雇用者として働く者が増えている。一方、35歳以上では、昔から、出産・子育てでいったん離職してパート等で再就職する女性が多いため、非正規雇用者率は高水準で推移している。なお、2015年の女性雇用者に占める非正規雇用者の割合は、全体では56.3%である(図表3)。35歳未満では正規雇用者の方が多いが、35歳以上では非正規雇用者の方が多くなり、年齢が高いほどその割合は高まる。

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◆結婚・出産後の妻の就業継続状況~寿退社2割、出産後も過半数が就業継続、育休利用は4割。ただし、出産後の就業継続状況は就業形態で大きな差。

先に、30代を中心に既婚女性の労働力率が上昇していると述べた。ここでは、結婚・出産後の女性の就業継続状況を詳しく見ていく。

国立社会保障人口問題研究所「出生動向基本調査」によると、結婚後、及び第1子出産後の妻の就業継続率は上昇している(図表4)。結婚後に就業継続した妻の割合は、結婚年が1985~89年では56.6%だが、2010~14年では72.7%(+16.0%pt)である。また、第1子出産後に就業継続した妻の割合は、第1子出産年が1985~89年では24.1%だが、2010~14年では38.3%(+14.2%pt)である。

なお、結婚・出産前就業者に絞って計算し直すと、結婚後に就業継続した妻の割合は、結婚年が1985~89年では60.3%だが、2010~14年では81.0%(+20.7%pt)である。また、第1子出産後は、第1子出生年が1985~89年では39.2%だが、2010~14年では53.1%(+13.8%pt)である。

また、育児休業利用率も上昇している。第1子出産年が1985~89年では5.7%(出産前就業者の9.2%)だが、2010~14年では28.3%(+22.6%、出産前就業者の39.2%で+29.9%)へと上昇している。

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しかし、育休利用率は、妻の就業形態により差がある。第1子出生年が2010~14年では、正規の職員が59.0%、パート・派遣が10.6%、自営業等は8.7%であり、いずれも過去と比べると上昇しているが、正規の職員とそれ以外では6倍前後もの差がある(図表5)。さらに、就業継続者に占める育休利用割合を計算し直すと、正規の職員では85.5%である一方、パート・派遣では41.8%、自営業等では11.8%にとどまる。また、パート・派遣では、出産後の就業継続率も低い(25.2%)。

つまり、現在、女性全体では、寿退社は2割と少数派になり、結婚後も仕事を続ける女性が多数派となっている。また、出産後も働き続ける女性が過半数を超え、育休取得率も上昇している。しかし、出産後の就業継続環境は就業形態によって大きく異なる。育休利用の多い正規の職員では出産後も働き続ける女性が約7割だが、育休利用の少ないパート・派遣では約25%である。そして、現在、このパート・派遣など非正規雇用者として働く女性が増えている。

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◆女性の賃金等の変化~1995年以降、女性全体では微増、大学・大学院卒では横ばい・微増

生涯所得推計の前提として最後に、近年の賃金の状況等を確認する。

厚生労働省「賃金構造基本統計調査」によると、所定内給与額(超過労働給与額を差し引いた月々の現金給与額)は、1995年以降、男性では横ばい・微減で推移しているが、女性では、全体は微増、大学・大学院卒では横ばい・微増で推移している(図表6)。これは、詳しく見ると(本稿では省略)、女性の待遇改善というより、比較的賃金の高い中高年層の女性労働者に占める割合が上昇した影響である。よって、冒頭の政府推計と同条件で推計する場合、大きな差異はないと予想される。

なお、本稿では大学卒女性に注目するが、近年、女性の大学進学率は男性に追随して上昇傾向にあり、2015年では47.3%である(図表7)。

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大学卒女性の生涯所得の推計

◆設定した女性の働き方ケース

大学卒女性の生涯所得について、正規雇用者・非正規雇用者別に、働き続けた場合や出産・子育てで離職をした場合など、11の働き方ケースを設定して推計する(図表8・9)。

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◆生涯所得の推計条件

生涯所得の推計方法を以下に示す。

・生涯所得=生涯賃金+退職金(正規雇用者のみ)
・生涯賃金=年齢別賃金の合計(※)

※1 正規雇用者及び非正規雇用者の場合
年齢別賃金=きまって支給する現金給与額(3)×12ヶ月+年間賞与その他特別給与額
※2 パートの場合
年齢別賃金=(実労働日数×1日当たり所定内実労働時間数×1時間当たり所定内給与額)×12ヶ月+年間賞与その他特別給与額

生涯賃金の推計は、厚生労働省「平成27年賃金構造基本統計調査」における「きまって支給する現金給与額」及び「年間賞与その他特別給与額」から各年齢の賃金を推計し、それを合算する(4)。なお、大学卒業後、同一企業でフルタイムの正規雇用者として働き続ける労働者として、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」における「標準労働者(学校卒業後直ちに企業に就職し、同一企業に継続勤務しているとみなされる労働者)」を用いる。その理由は、他ケースとの比較を想定し、現在のところ、育児休業や短時間勤務などを利用しやすい環境にあり、正規雇用者比率も高い労働者と考えたためである。ただし、標準労働者は、「所定内給与額」は存在するが、「きまって支給する現金給与額」が存在しないため、同条件の一般労働者における両者の比率から、標準労働者の「きまって支給する現金給与額」を算出する。(参考:独立行政法人労働政策研究・研修機構「ユースフル労働統計2015」)

・育児休業利用時の取扱い
育休中は、休業前の賃金水準で「育児休業給付金」が支給されるものとする。育休から復職時は休業前の賃金水準に戻るが(参考:「改正育児・介護休業法」によれば、休業を理由とした不利益取扱いは禁止)、復帰初年度のみ「年間賞与その他特別給与額」は半額とする。

・短時間勤務制度利用時の取扱い
短時間勤務時は残業を行わないため、超過労働給与額を含む「きまって支給する現金給与額」ではなく「所定内給与額」を用いて年収を推計する。また、賃金水準は労働時間数比率(6時間/8時間=5%)を乗じた値とする。また、短時間勤務期間の経過年数は、実年数の75%とし(例えば、短時間勤務を8年間利用した場合、フルタイム勤務6年分に相当)、フルタイム復帰時には、その経過年数に相当するケースAの年齢別賃金に接続する。

・55歳以降の取扱い(正規雇用者)
正規雇用者における55歳以降の賃金は、ケースによらず同水準とする(標準労働者では55歳を境に「所定内給与額」が大きく減るが、ケースによる違いには様々な仮定が必要であり、今回は設定していない)。

・非正規雇用者の取扱い
非正規雇用者の生涯賃金の推計は、「正社員・正職員以外」の値を用いる。育休から復職時の賃金水準は、標準労働者と同様に、休業前と同等とする。なお、ケースA-Bにて標準労働者が非正規雇用者として復職する際の賃金水準は、第1子出産退職時と同年齢の非正規雇用者と同等とする。

・退職金の取扱い
正規雇用者の退職金は、厚生労働省「平成25年就労条件総合調査」の1人平均退職給付額を用いる。ただし、男女別の数値がないため、男女計のものを用いる。出産等による休業のない場合は、勤続年数階級35年以上の値、育休を利用した場合は勤続年数階級30~34年の値、第1子出産時に退職した場合は勤続年数階級20~24年の値に勤続年数比率を乗じた値とする。

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(3)労働契約等により予め定められている支給条件により支給された6月分現金給与額(基本給、各種手当等含む)。ここから超過労働給与額を差し引いたものが「所定内給与額」。
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4)本稿の推計は、独立行政法人労働政策研究・研修機構「ユースフル労働統計2015」における生涯賃金推計を参考に、現在の各年齢の賃金を足し合わせて求めている。長期に渡る就業期間では物価・賃金水準は変化するが、賃金水準を現在のものに合わせるという考えに立つ。この方法とは別に、物価水準等を調整して生涯所得を得る方法も考えられ、賃金の世代間格差などを把握するために適しているが、今年、新卒で働き始めた者の生涯所得という見方は難しい。
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◆生涯所得の推計結果~大卒同一企業勤務女性の生涯所得は2億6千万円、育休2回・時短でも生涯所得は2億円超、出産退職は2億円のマイナス。一方、非正社員では半分以下に。

大学卒女性の働き方ケース別に生涯所得を推計した結果を示す(図表10)。

女性が大学卒業後、同一企業で働き続けた場合(ケースA)の生涯賃金は2億3,660万円、退職金(2,156万円)を合わせると、生涯所得は2億5,816万円となる(5)。

一方、大学卒業後、同一企業で働き続ける女性が、二人の子を出産・育休を2回利用し、フルタイムで復職した場合(ケースA-A)の生涯賃金は2億1,152万円で、退職金(1,856万円)を合わせた生涯所得は2億3,008万円である(ケースAより△2,808万円、△10.9%)。つまり、二人の子を出産して、それぞれ育休を1年利用しても、出産なしで働き続けた場合と比べて、生涯所得は1割しか減らないことになる。ただし、本稿における推計では、育休から復職後は、すみやかに休業以前の状況に戻り、出産なしの就業継続者と同様に働くこと(休業によるマイナスはないこと)を想定している。しかし、実際には仕事と家庭の両立負担は大きく、職場と家庭双方の両立支援環境が充実していなければ、出産なしの就業継続者同様に働くことは難しい。また、このほか、育休からの復職者に対する評価制度(休業していない者との相対評価など)や女性自身のモチベーションの変化(仕事・家庭における優先順位の変化など)等、いくつかの観点で課題がある。ただし、政府の「女性の活躍促進」政策や「働き方改革」における労働生産性向上や長時間労働の是正といった議論を見ると、すみやかな復職を希望する場合は、それを実現しやすい方向に向かっているようだ。

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また、同様に、二人の子を出産・育休を2回利用し、第2子が3歳未満まで短時間勤務をした場合の生涯賃金は2億214万円で、退職金(1,856万円)を合わせた生涯所得は2億2,070万円である(ケースAより△3,748万円、△14.5%)。第2子が小学校入学前まで短時間勤務をした場合の生涯賃金は1億9,378万円で、退職金(1,856万円)を合わせた生涯所得は2億1,234万円である(ケースAより△4,582万円、△17.7%)。つまり、育休を2年利用し、短時間勤務をした場合でも生涯所得は2億円を超える。ただし、本稿における推計では、育休からのすみやかな復職に加え、短時間勤務からのすみやかなフルタイム復帰も想定している。実際には、前述のような両立負担や評価、モチベーション等の課題がある。同時に、育休や短時間勤務等の両立支援制度の非利用者が感じる負担感や不公平感等への対応も課題だろう。

一方、第1子出産後に退職し、第2子小学校入学時にフルタイムの非正規雇用者として再就職した場合の生涯賃金は9,332万円で、退職金(338万円)を合わせた生涯所得は9,670万円である(ケースAより△1億6,146万円、△62.5%)。また、同様に、日本で昔から多い、パートで再就職した場合の生涯賃金は5,809万円で、退職金(338万円)を合わせた生涯所得は6,147万円である(ケースAより△1億9,669万円、△76.2%)。よって、過去の政府推計と同様、最新値で推計しても、出産退職は2億円のマイナスとなる。

実は、これは労働者個人としてだけでなく、企業側から見ても大きなマイナスである。就業を継続していれば生涯所得2億円を稼ぐ人材を確保できていたにも関わらず、両立環境の不整備等から、人材を手離すことになり、新たな採用・育成コストを要している。女性の出産離職は、職場環境だけが問題ではないが、両立環境の充実を図ることは、企業にとってもコストを抑える効果がある。

また、大学卒業後、非正規雇用者として働き続けた場合の生涯所得は1億1,567万円であり、同一企業で働き続ける正規雇用者(ケースA)の半分以下である(△1億4,249万円)。また、賃金水準が高くないため、育休を2回利用しても、生涯所得はさほど変わらない(1億1,080万円、Bより△487万円)。非正規雇用者では、派遣・契約先企業の正規雇用者と同様の業務をする場合もあるが、賃金水準が低く(さらに各種手当にも恵まれにくい)、退職金もない場合が多いため、生涯所得には大きなひらきが出てしまう。これまでもレポートで指摘してきた通り6、特に、若年層では不本意な理由で非正規雇用者として働く者が多い。今後、政府の「働き方改革」における同一労働同一賃金の議論が進み、非正規雇用者の待遇改善が実現されることに期待をしたい。

なお、参考のため、図表11にケース別に各歳別賃金の推移(生涯賃金)を示す。ケース別・各歳別に賃金の推移を見ると、どこでマイナスが生じ、どのあたりから追いつくのか、あるいは、差がひらいてしまうのかなどをイメージしやすい。

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5)なお、本稿と同条件で2005年の大卒女性標準労働者の生涯賃金を推計すると、2億4,143千万円となる。
(*6)久我尚子「 若年層の経済格差と家族形成格差-増加する非正規雇用者、雇用形態が生む年収と既婚率の違い 」、ニッセイ基礎研究所、基礎研レポート(2016/7/14)、久我尚子「 学歴別に見た若年労働者の雇用形態と年収~年収差を生むのは「学歴」か「雇用形態(正規・非正規)」か 」、ニッセイ基礎研究所、基礎研レター(2016/8/22)など。
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おわりに

本稿では、大学卒女性の生涯所得を推計するために、まず、近年の女性の就業状況について確認した。かつては結婚で仕事を辞める女性も多かったが、現在では、結婚後も就業者の8割は働き続けており、寿退職は過去のものとなっている。また、出産後も過半数は働き続けており、育児休業利用率も上昇している。しかし、就業形態によって出産による就業継続状況には大きな差があり、正規雇用者は多くが育休を利用して働き続けている一方、非正規雇用者は育休利用率が低く、就業継続率も4分の1程度である。日本では昔から、出産を機に離職し、子育てが落ち着いてからパートとして再就職する女性が多かった。しかし、長らく続く景気低迷により、学校卒業時に正規雇用者として就職できずに、はじめから非正規雇用者やパート・アルバイトとして働く女性が増えている。

大学卒女性の生涯所得を推計すると、大学卒業後に同一企業で正規雇用者として働き続けた場合は2億6千万円、二人の子を出産し二度の育休と短時間勤務を利用した後、すみやかに復職した場合は2億1~2千万円となった。また、昔から日本で多い、出産退職しパートで再就職した場合は約6千万円であり、離職しない場合と比べて2億円のマイナスとなった。働く目的は経済的理由だけではないだろうが、子どもに、より質の高い教育環境を与えられる可能性などを考えると、2億円という金額は一考に価するのではないだろうか。

また、マイナス2億円という金額は、企業側にとっても大きな損失である。両立環境の不整備等から離職され、新たな採用・育成コストが発生している。また、今回は出産・育児による離職しか想定していないが、超高齢社会においては介護離職も大きな課題である。よって、仕事と家庭の両立環境の整備は、企業におけるリスク管理としても取り組むべきだ。

一方、近年、増えている非正規雇用者の生涯所得は、出産等なしで働き続けても正規雇用者の半分に満たず、同世代内の経済格差がより明らかとなった。今後ますます共働き世帯が増える中、女性の収入が世帯全体の経済状況に与える影響は大きくなる。これまでも、いくつかのレポートで主張してきたが、若年層の非正規化は景気低迷による就職難の影響が大きく、世代間の不公平感は是正されるべきだ。

なお、今回の推計では、正規雇用者として標準労働者(学校卒業後、同一企業に継続勤務)を仮定した。それは、現在のところ、同じ企業で継続勤務をしている正規雇用者でないと、育児休業や短時間勤務などを利用しにくく、出産・育児を経て働き続けることが難しいと考えたためだ。つまり、女性が働き続けられる労働環境は一部に限定されており、そこに合致しないと退職を選択するか、場合によっては家族形成を躊躇することにもなりかねない。

政府の「働き方改革」には、非正規雇用者の待遇改善を望むとともに、結婚・出産・育児・介護などライフステージが変化しても、働き続けたい者が働き続けられるような柔軟性のある労働環境の整備を求めたい。

久我尚子(くが なおこ)
ニッセイ基礎研究所 生活研究部 主任研究員

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