東京株式市場では、一進一退の動きが続いています。米国の主要株価指標が高値を更新する一方、外為市場では一時に比べ円高・ドル安圧力が強まっており、強弱材料が対立する形になっています。

そうした中、東京株式市場は7/27(木)から、受け渡しベースでは「8月相場」に突入します。市場参加者の多くが夏休みに入るため、売買が細り、さらに動きにくくなる可能性もありそうです。反面、8月は生活に密着し、投資家にとっても馴染み深い外食企業や小売企業の多くで配当・株主優待の権利が確定する月でもあります。

そこで今回の「日本株投資戦略」では、8月に株主優待の権利が確定する銘柄について考えることにしました。投資家の関心が強い銘柄をご説明する一方、業績や配当についても考慮し、「日本株投資戦略」特選の「8月優待銘柄」についてもご紹介することにしました。

投資家の関心が強い8月優待銘柄は?

表1は当社WEBサイト上の「国内株式」内に設置されている「株主優待検索」ページから、8月に株主優待の権利が確定する銘柄を「閲覧回数順」にソートし、その回数の多い銘柄について上位20銘柄を並べたものです。それらの銘柄について株価(7/20現在)と最低投資単位で投資した場合の株主優待内容を記載しております。

最近、株主優待はそれを享受して生活を楽しむ著名投資家や各種メディアによる紹介もあり、多くの投資家の関心を集めているようです。しかし、「魅力ある株主優待」を考える時、投資家によって「投資余力」も「投資スタンス」も「生活スタイル」も「好み」もそれぞれ異なると思いますので、魅力を感じられる株主優待内容も「人それぞれ」であるのが現実だと思います。だとすれば、様々な投資家が数多く閲覧している銘柄には、それ相応の意味があると考えられます。

経済効率的には無論、なるべく少ない投資金額で権利を確保でき、優待と配当を合わせた総合利回りが高ければ、満足度は高くなると考えられます。しかし、「魅力ある株主優待」はそれだけでは決まらないとみられます。知名度や業績面で安心感のある銘柄であることや、優待内容がその投資家にとって有用性の高いものであることも重要な要素だと考えられます。例えば表1にも掲載されたクラウディア <3607> の場合、「株主優待券」を使い、同社指定取扱店舗で婚礼衣裳購入・レンタル、挙式・披露宴等に利用し、割引(5~10%)他サービスの提供を受けることができます。まさしく「婚活中」の投資家には有用性が高いといえますが、それ以外の投資家には有用性が低下すると考えられます。

冒頭で触れましたように、8月に株主優待の権利が確定する銘柄には、外食企業や小売企業が多いのが特徴です。このため、株主優待の内容としても、それらの企業の店舗等で使える食事券や買物券等が多いのが特徴です。食事券や買物券は株主になった企業の商品やサービスの提供を受けることで、それらの企業をより深く知るチャンスになると思われます。

なお、表1をご参考頂き、8月に権利が確定する株主優待について検討する時は、おもに以下の3点にご注意ください。

(注1)表1の株主優待の内容は、最低投資金額で得られる権利の概要を示したもので、詳細や最低投資金額を超えた投資金額での優待内容等については、各社公式サイトでご確認ください。例えばイオン <8267> の場合、優待カード(オーナーズカード)を保有する株主に対し、半期100万円を限度とする買物金額に対し、保有株数に応じた割合で返金されます。その割合は100株以上保有では3%ですが、500株以上では4%、1,000株以上では5%、3,000株以上では7%となっています。

(注2)株主優待の権利を行使する時に条件や制限がある場合もありますので、ご注意ください。例えばヤマザワ <9993> の場合、山形県・宮城県内在住株主の場合は自社買物優待券(100円)を20枚(税込1,000円以上の買物につき1,000円ごとに1枚利用可)を受け取ることができますが、それ以外の地域に在住する株主には山形県産つや姫が提供されるという内容になっています。

(注3)表1に掲載した銘柄の権利付最終日はすべて8/28(月)ですが、ライトオンのみ8/15(火)です。権利落ち日以降に買い付けても株主優待の権利は享受できませんのでご注意ください。また、権利付最終日に向けて買い需要が増えやすい反面、権利落ち日以降はそれが剥げ、株価が下がりやすくなる面がありますので併せてご注意ください。

投資家の関心が強い8月株主優待銘柄1

日本株投資戦略」特選の「8月優待銘柄」はコレ!?

前項でもご説明したように、近年、株主優待はそれを享受して生活を楽しむ著名投資家や各種メディアによる紹介もあり、多くの投資家の関心を集めているようです。

しかし、その結果、株主優待を実施する企業の一部で株価が大きく上昇し、資産や利益の規模と照らし合わせて考えた場合に割高な水準まで到達してしまっている企業も見受けられます。株価が資産や利益の規模と照らし合わせて割高になってしまうことをバブルというならば、「株主優待バブル」とも言えるような現象が生じていることになります。「株主優待」という制度は、投資の初心者の方が株式投資の魅力に触れるひとつの「入り口」になると思われますが、株価下落というリスクと無縁ではないことを改めて注意する必要があると考えられます。

そこで「日本株投資戦略」では、8月に株主優待の権利が確定する銘柄の中から、好業績が見込め、配当も期待でき、株価の割高感も相対的に低いとみられる銘柄を「日本株投資戦略」特選の「8月優待銘柄」としてご紹介することにしました。スクリーニング条件は以下の通りです。

(1)8月に配当・株主優待の権利が確定する銘柄であること(2月または8月決算銘柄)
(2)2月決算銘柄の場合、第1四半期の営業増益率が通期(2018年2月期)の会社予想営業増益率を上回っていること
(3)8月決算銘柄の場合、第3四半期累計の営業増益率が通期(2018年2月期)の会社予想営業増益率を上回っていること
(4)8月に第2四半期末または期末配当が予想(会社予想)されている銘柄であること
(5)予想PERが30倍未満であること

上記のすべての条件を満たす銘柄を、表1の銘柄抽出でも使った「閲覧回数順」に並べたものが表2です。また、抽出された銘柄について、スクリーニング条件として用いた各種投資指標を示したものが表3および表4となります。

スクリーニング対象となるのが、2月または8月決算銘柄であり、第1四半期または第3四半期の決算発表が終わった直後のものが多く、いずれにせよ、短期的に業績予想の下方修正が行われる銘柄は少なくないと思います。さらに、(2)や(3)の条件が付いていますので、会社予想がいずれ上方修正される銘柄も出てくることが期待されます。

「日本株投資戦略」特選の「8月優待銘柄」

表2で掲載した銘柄のうち、2月決算銘柄の各種投資指標

表2で掲載した銘柄のうち、8月決算銘柄の各種投資指標

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

鈴木英之
SBI証券 投資調査部

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